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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
五話「修業と連休のさなかに」
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食事係

「なに?食事係?」


休憩時間を終えて康太たちは再び目的地へと動き出していた。これから約一時間程度、再び車での移動が続く。そんな中で康太たちは先程の話を切り出していた。


「はい、今回の旅行中に料理を作らなきゃいけないでしょう?それの当番を決めようと思いまして」


「あー・・・なるほどな。確かに必要かもしれんな。五連休ずっといるわけだし誰かが作らなければ飢えて死ぬか」


五連休の間生活するのであれば必ず食事というものは必要になる。出前をしてもよいのだろうがさすがに五日間ずっと出前というのは許容しがたい。


それなら食材を買って自分たちで調理したほうがいろいろといい経験になるだろう。


「それはいいが後ろの二人はどれくらい料理ができるんだ?」


「康太君は数品目程度なら問題ないようです。文さんはなかなかの技術をお持ちのようですよ」


「ほう、それは楽しみだ」


「あの・・・あんまりハードル上げないでくれると・・・その・・・ありがたいんですけど」


自分はあくまでそれなりにといったつもりだったのだがなぜか真理の中では文はかなり料理の腕が立つという印象になっているようだった。


実際ある程度の料理は作れる自負があるがそこまで美味いものが作れるかというと微妙なところである。


彼女が作れるのはあくまで家庭料理の範疇だ。プロの料理人が出すそれのような圧倒的なうまさを誇るようなものではないのである。


「師匠や姉さんはどうなんです?二人とも料理できるんですか?」


「それはバカにしていると受け取っていいのか?今時料理ができない奴の方が珍しいだろう」


思い切り偏見に満ちた発言に思えるが、実際今はほとんどの料理がそのレシピなどが公開されておりその通りに作れば大抵がある程度の完成度を持ったものになるものである。


料理とは作業の連続だ。食材を適切な形に切り、適切な調理法を選択し、自分の好みにあった味付けにすればそれだけで料理としては完成したようなものだ。


煮る焼く蒸すの違いはあるかもしれないが基本的に料理とはそのくらいしか違いはない。それこそ料理で頂点を目指そうとするなら知識や技術もそれなり以上の一流に近いものが必要になるかもしれないが、普通の家庭料理のレベルならそこまで高いレベルなど求められていない。


本当にある程度、特に独創的なアレンジや勝手な改変をせずに基本に忠実に調理していれば大抵の人が美味しいと人並みに感じられる程度の料理はできるのだ。もちろん個人的な好みの味付けというのはあるがその点に関しては今は置いておく。


「私も師匠もある程度の料理はできますよ。お店のように・・・とまではいいませんが」


「そもそも料理で失敗するのなんて味付けくらいだろう。一度だけ胡椒の蓋が外れてひどいことになったがそれ以外で料理で失敗したことなどないぞ」


「それは悲惨ですね・・・じゃあ俺以外はみんな料理得意なんですか?」


「得意って程じゃないんだけど・・・まぁ人並みには」


康太以外の三人の女性はそれなり以上に料理をしているようだ。基本的に母に食事を作ってもらうことの多い康太からすれば料理ができる女性というのは非常に好印象だった。


「この場にいるのが四人、なら一人一日ずつ食事当番が回ってくるな。今日と最終日に関しては三食は作らないが」


「そうなると私たち三人でそれぞれ明日、明後日、明々後日を担当するべきでしょうね。それでは今日のごはんは康太君に作ってもらいましょうか」


「え?いきなり俺ですか?ちょっと自信ないんですけど」


「私も手伝ってあげるわよ。あんたの料理ってなんか怖いわ」


ある程度の料理の技術があると言っても康太の場合それは謙遜でも何でもない。本当にある程度のものでしかないのだ。


例えるなら家庭科の授業で問題なく料理を作り終えることができる程度というレベルであってレシピを見ずに勘で作り出せるほどの調理経験があるわけではないのだ。


何よりそこまで康太は料理というものが好きではない。


自分で作った料理は本当にある程度の味になるし、手間暇かける程自分の食事に関心を持てない。


ある程度食べられてある程度栄養素を補給できればいい程度にしか考えられないのだ。


もちろん誰か食べさせる人がいれば当然頑張る気にはなる。今回は三人に自分の料理を振る舞わなければいけないのだ。否が応でもやる気を出さなければならないだろう。


料理とはつまり手間をどれだけかけられるかというところに本質がある。料理というのは工程を省こうと思えばいくらでも省くことができるのだ。


それこそ食事だけなら適当に食材を買い込んでそれを生で齧っていればいいだけの事である。それをいかに美味しくするかというところから手間の数々が存在している。


自分の為だけではなく誰かのためにどれだけ工程をはさみ、料理を作れるかというところで料理のできは変わってくる。


料理の完成度だけではなく一回の食事に必要な栄養素まで考えて出す品目を考えなければならないのだ。


そう考えると母は毎日こういった作業を行っているのだなと少しだけ母の偉大さを感じられた。毎日そんなことをやっていたら康太はきっと途中でめんどくさくなっていただろう。


「ところで文、その別荘ってちゃんと調理器具とかはあるのか?」


「一応一通りはそろってるって言ってたわ。ただ掃除とかはしてないからある程度掃除とかはしなきゃいけないけど」


別荘などと言っても管理している人間から言わせれば単なる空家に過ぎない。定期的に掃除をしなければならないし器具などの点検もしなければならない。


今回別荘に泊まれると言ったがどちらかというと気分はキャンプのそれに近い。こういう雰囲気も嫌いではないために康太はそこまで苦にならないが。


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