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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十六話「届かないその手と力」

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物事やり方それぞれ

「・・・大丈夫、この建物に地下はないわ。書庫らしきものもないし、重要そうなものもない。次いくわよ」


「おうよ。このまま建物全部ぶっ壊していこうぜ」


「発言がやばいよな。ここだけ聞くとただの犯罪者だよ」


「犯罪者上等。こちとらアウトローのど真ん中を歩く魔術師だっての。今更法律云々気にしていられるか。それに廃棄されてるならだれが文句を言うわけでもないだろ」


「ここを拠点にしてた連中は文句を言うかもしれないけどね」


文の冷静な言葉にそりゃそうかもなと言いながら康太は建物の外へと歩みを進める。そこには倒れている魔術師を縛り上げている幸彦の姿があった。


「やぁ、随分と開放的な建物になったと思ってたけど・・・どうかしたのかい?」


「この建物・・・というかこの辺りの建物には索敵妨害用の方陣術が仕込んであるみたいでして、それを壊しただけですよ。我ながらうまく壊せたと思います」


「うん、壊し方は見事だったよ。ベルと連携してしっかりと無駄な崩壊が起きないように切り崩せていた。さすがはクララの弟子だね。壊し方に無駄がない」


それは評価してよいところなのだろうかと文と倉敷は内心首をかしげるが、今気にするべき点はそこではない。


いや、正確には今確認しなければいけないことはそこではない。


「バズさん、ここは外れです。ただ集まって休む場所みたいな感じでした。重要な書類の類は別の場所にあるかと」


「了解。じゃあ虱潰しに敵を探そうか。端から一つずつ建物ごと潰していくのが一番手っ取り早いんだろうけど・・・」


「お願いですからやめてください。周りに被害を出さないように吹き飛ばすのって簡単じゃないんですよ?」


文が先ほど吹き飛ばした建物の一部は、文が安全な山の中に吹き飛ばしていた。木々の隙間を縫うようにして落としていった建物の残骸。


一瞬竜巻などの被害に遭ったのではないかと思えるかもしれないが、調べれば鋭利な刃物によって切り裂かれたということが即座に理解できるだろう。


可能な限り痕跡を残したくない文としては建物すべてを破壊されるのはあまり良い状況とは言えなかった。


「えー・・・ダメかい?結構いい案だと思ったんだけどなぁ・・・」


「ダメです。ビーも残念そうにしないの。建物への調査はビーに頼らなくてもやり方があるんだから」


「へぇ・・・どんな?」


先ほどは単純な索敵では見つけられなかったが、今度はそれを鑑みて文も索敵の方法を思いついているようだった。


体にまとっていた砂鉄を磁力を介して操っていく。そんな中文は山の方にある土の地面に含まれる砂鉄を次々と回収していく。


磁力にも限界があるだろうに、文はその質量を全く意に介さずにその体の周りに飛翔させていく。


そして磁力を纏った砂鉄を建物の一つに向かわせていく。まるで羽虫のように建物に群がる砂鉄を見て康太は眉を顰めるが、数秒してから文は小さくため息をついてから首を横に振る。


「ダメね、あそこも誰もいないわ。ビー、一応あんたも見てみて。誰もいないと思うけど」


「あいよ・・・うん、人はいないな」


人らしい気配はなくそこに誰かがいるということはなさそうだった。


「どうやって調べてるんだ?」


「単純よ。磁力を纏わせた砂鉄を操って物体を疑似的に知覚してるの。トゥトゥが霧を使って索敵してるのと同じような原理かしらね」


「なるほど、わかりやすいな・・・そうか、索敵が妨害されててもそういうのはわかるのか」


「あくまで妨害されてるのは単純な索敵だからね。こういうのは妨害されにくいのよ。得手不得手があるのは人だけじゃないってことね」


索敵妨害が阻んでいるのはあくまで索敵という魔術だけのこと。それ以外の魔術によってある程度疑似的な知覚情報を得るのは関係していないらしい。


「あ、いいこと思いついた。トゥトゥ、ちょっとこの辺り一帯を洪水にさせてくれよ」


「いきなり何言ってんだこいつ。自然災害起こしてくれとか頭おかしいのかよ?」


「いやいや、お前の術なら一気に水を侵入させられるだろ?相手が室内にいれば当然巻き込まれるだろ?しっかり相手を知覚できるだろ?しかも捕まえられるだろ?一石三鳥じゃね?」


「それと同時に相手が有していると思われる情報も一緒にずぶぬれになるでしょうね。意味がないとは言わないけど、あんまりやりたい行動ではないわね」


「まったくだ。この辺り一帯を水で沈めるのに一体どれだけ魔力が必要だと思ってんだよ。疲れるわ」


「あ、疲れるだけでできるのね」


「周りが山に囲まれてるっていうのと、今が雨っていうのもあるな。このまま雨が降り続けてくれれば俺にとってはありがたい環境になる」


水は常に上から下へと流れ落ちる。雲が雨となるように、山に注がれた水が川となるように。


そしてそれは山の中にいる倉敷にとっては都合がよかった。


水が流れてくればその分できることが増える。水が増えればその分魔力の消費も減る。水を味方につけた倉敷にとってこの状況はまさに好都合というにふさわしかった。


「じゃあ一応念のため壊しておこうか」


「そうですね、中に何があるかもわかったものじゃありませんし」


康太と幸彦が同時に魔術を発動し、用済みとなった建物を破壊していく。その建物には書類も敵もいなかったが、この光景を見て文は額に手を当てて嘆いてしまっていた。


かつて子供たちを楽しませた施設が見るも無残な姿になっていくのを見ながら、文は大きくため息をつく。


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