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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十六話「届かないその手と力」

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壊し方人それぞれ

「あれ?なんであんたこっちに来たのよ」


「バズさんが手伝って来いってさ。さっさと終わらせて援護に行きたいんだけど・・・この建物の中はどうだ?」


「いろいろあるけど、計画書とかそういうのはないな・・・どっちかっていうと休憩所みたいな感じだ。飲み物とか食べ物とかが置いてある」


倉敷が奥の部屋から顔を出す。その手には携帯食料や簡単に作れるインスタント食品や日持ちする食糧があった。


おそらくこの場所は食料の保管庫、あるいは食事や休憩などをする場所だったのだろう。だがこういう場所があるということは、ここも拠点の一つには違いない。


「前に聞きだした拠点の場所の中にここはなかったよな?」


「そうね。つまりここはこの前捕まえた連中が知らなかった拠点・・・あるいは知らされなかった重要度の高い拠点ってことになるのかしら?」


「可能性は大だな。他の場所も調べれば何か手掛かりが得られるかも。時間はかけられないか・・・金庫とか保管庫的なものはないんだな?」


「今のところはね・・・地下らしいものもないけど・・・索敵の妨害がかけられてるとさすがに万全とはいいがたいわ」


文が視線をそらせ、この建物自体にかけられていると思われる方陣術に意識を向ける。この建物の内側に対する索敵そのものが妨害されてしまっているため、索敵が上手くいかずに調査そのものが上手くいっていないようである。


康太は壁を見つめるが、どの場所に方陣術があるのかを見つけることはできなかった。


「壁の内側か・・・あるいは中の配線か・・・通気口か・・・どっちにしろすぐ見つかる場所には書き込んでないみたいだな。術式が見つかれば破壊できるんだけど・・・」


「あんまりやってほしくないけどね・・・こうなってくると地道に探すしか・・・」


「いや、まだ手はあるぞ」


そういって康太は槍を構えると力を込めだす。


その素振りに文は康太が何をしようとしているのか察したのか、慌ててその場から離れようとし、同時に魔術の発動準備に入った。


「トゥトゥ!離れて!」


「もう離れてるよ!」


倉敷もすでに康太が何をやろうとしているのを把握したのか、安全な場所に離れようとしているようだった。


次の瞬間、康太は拡大動作の魔術を発動しこの建物を一気に破壊し始める。


切り裂き、打ち砕き、方陣術が仕掛けられている建物そのものを破壊していく。


そしてその行動に呼応して文は爆風の魔術を発動した。切り刻まれたことで崩れてくる建物を一つ一つ丁寧に吹き飛ばしていく。


調べるうえで重要なのは建物そのものではなく、建物にしまってあるものだ。建物はあくまで入れ物でしかない。見たいのはその中身。


阻害しているのが建物そのものであるならば、それを破壊してしまえばいいだけの話である。


短絡的な発想かもしれないが、時間をかけずに調べるには最も適切な方法かもわからない。


「っし、これでどうよ」


「お願いだからもうちょっと事前に相談とかしてくれないかしら?吹き飛ばすのも楽じゃないのよ?」


「でもばっちり合わせてくれたじゃんか。さすがベルさん」


「・・・はぁ・・・そりゃどうも・・・トゥトゥ、無事?」


「生きてるよ。派手にやったなぁ・・・もう原型ないじゃん・・・」


康太が破壊した建物は康太の背の高さよりも少し低い程度の位置から上だけ。つまり低い壁だけを残してそこから上が完全に壊されていた。


屋根がなくなり、間取りだけがくっきりと残された建物。だがそれだけの破壊活動を行った甲斐あって文の索敵はこの建物内であれば正常に行えるようになっていた。


「でもこうやって壊せるなら結構いいよな。俺も方陣術で困ったらこうやって壊そうかな?」


「やめておきなさい。発動状態の方陣術を破壊するのはリスクが高すぎるわ。こいつはそういうのを無視してやってるだけよ」


「リスクって・・・具体的には?」


「そうね・・・術式の暴発、魔力の逆流、場合によっては場所そのものの消滅もあり得るんだっけ?」


「あぁ、俺のやり方で起こるのはそれくらいか。師匠だったらもう少しうまく壊すんだけど、俺の場合暴発の可能性が高いな。今回は上手く行ったほうだろ。暴発も少ししか起きてない」


いつの間に暴発が起きたのか倉敷には認識できなかった。認識できたのは索敵を発動し続けていた文と、直接攻撃した康太だけである。


物理的破壊と術式の暴発破壊、前回地下で行ったのは後者で、今回行ったのは前者。どちらも暴発の危険をはらんでいるという意味では同じだ。


もっとも、物理破壊の場合は遠くからでもできるため、破壊する本人の危険は少なくなる。その分確実ではない。


「間違いなくやらないほうがいいわ。ちゃんと手順を守って解体するのが一番安全よ。今はまだいいけど、今後方陣術があって、時間があるのなら私が解体するから」


「了解・・・時間がなかったら?」


「俺がやる。姉さんや師匠がその場にいたら一緒に手伝ってもらう。そうすれば間違いなく安全に壊せる」


さすがは破壊に関しては一家言持ちということだろう。小百合の弟子達は壊すことに関しては一流だ。

それがいいことなのかはさておいて。


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