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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十六話「届かないその手と力」

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調査班は戸惑う

調査班たちは防壁を展開しながら撤退しようとしていた。だが逃げた先にも敵がいたことによって周囲を完全に囲まれ、ほとんど身動きが取れない状態になってしまっていた。


何とか慣れない攻撃を放って反撃しようとするのだが、周囲を木々に囲まれほとんど射線が通らない。


護衛役の魔術師は何とか少しでも相手の動きを封じようと必死に全方位にめがけて攻撃と防御を繰り返しているが、相手の数が多すぎて時間稼ぎ以上のことはできていなかった。


周囲を土の壁で囲い、塹壕のようにした状態で徹底して防御を、そして断続的に反撃を行っているが相手の勢いが削れた気がしない。


「畜生・・・!数が多い・・・!何とかあんたらだけでも逃がしたいけど・・・!」


「そんな、あなたを置いていけませんよ!それにさすがにこの数では・・・」


索敵してみると周りにいる敵の数は十人を超えている。攻撃も防御も相手の方が数が多いうえに質も上だ。


このままでは押し潰されるのは時間の問題。ほぼ防御に徹しているからこそ持ちこたえてはいるが、このまま攻撃され続ければ障壁がもたないだろう。


上空に逃げることも考えたが遮蔽物のない空中に逃げ出せば一気に狙い撃ちされてしまうことは想像に難くない。


防御能力を前面に押し出そうと、さすがに数の利にはかなわない。この場に救援がやってきてくれることを期待する以外にできることがなかった。


攻撃を頻繁に放射状に行うことで一種の目印にはなっているだろうが、それを見つけて駆けつけてくるまでこの防御態勢がもつかどうかも怪しかった。


逃げようにも逃げられない。いっそのこと一点突破で包囲網からだけでも抜け出そうと思ったが、それも機動力で負けているのでは不可能だ。


調査系の魔術師たちは障壁の魔術といくつかの射撃系の魔術程度なら扱えるが、自身の動きを素早くするといった効果を持つ魔術は使えない。対して相手は戦闘を最初から視野に入れているからか、ある程度高速での移動が可能な魔術師が何人かいるようだった。


どんなに動いても先回りされ、こうして包囲されたのにはそういった理由である。


攻撃力でも機動力でも上をいかれている。この状態で逃げるのはほぼ不可能だろう。


かといってこのまま防戦一方では押し潰されるのは目に見えている。どうにかしなければと思考を回そうとすると防御や攻撃に意識を避けなくなってしまう。


完全な悪循環にはまってしまっている状況で、護衛役の魔術師は常に魔術を発動させ続けていた。


「・・・!上から魔術師が来ます!注意してください!」


索敵に徹していた魔術師が上の方に意識を向けながら叫ぶ。ここにきて相手の増援が来るのかと、魔術師は舌打ちをする。


だが上空からやってきた魔術師は自分たちと敵対している魔術師の間に立つと障壁を展開し反撃を始めていた。


「こっち側は受け持ちます!反対側は任せました!」


魔術による攻撃の中、聞こえてきたのは女の子の声だった。包囲の片側の攻撃をほとんど止め、なおかつ木々を縫うように的確に反撃の魔術を放っている。


索敵を行っていた魔術師はその攻撃すべてが的確に相手に向かい、相手を牽制できているということに気付いていた。


まだ若そうなのに何という精密な攻撃をするのかと、驚きながらも助けが来たことにその場の魔術師は驚いていた。


「ありがたい!だけどそれだけじゃこの包囲網は突破できないぞ!どうする!?」


「問題ありません!ビー!トゥトゥ!さっさと片側を片づけなさい!包囲網を突破してから切り崩す!」


叫び声に呼応するかのように、包囲網の一角で轟音が鳴り響く。木々をなぎ倒す音に加え、まるで滝のような水が叩きつけられる音。さらには包囲していた魔術師の一人だろうか、木々に四肢をぶつけながら一人の人間が飛んできた。


腕や足がおかしな方向に曲がっており、脳震盪を起こしているのか完全に意識を失っているようだった。


一体どんな魔術を使ったらこんな状態になるのか、その場にいた魔術師たちは想像もできなかった。


「ベル!南側が片付いた!そっちから包囲を抜けられるぞ!」


「了解!皆さん、南側に抜けます、包囲網を突破したらそのまま撤退してください。囲んでた連中は私たちが片づけます」


「だ、大丈夫なのか?三人、しかいないんじゃ・・・」


「大丈夫です、もう一人遅れてきてます。このくらいの数は何度かこなしていますから問題ありません」


十人以上の規模の魔術師と相対してまったく動じていない。それどころか片手間で防御と反撃を繰り返している。


索敵の魔術師も南側にいた敵魔術師が倒されているという事実を確認し、それを告げる。


これならば逃げられる。そう確信したが、たった四人で相手をすべて倒せるとは思えなかった。


ここは協力するべきではないかと考え、それを口にしようとした瞬間、周囲の地面が大きく揺れる。

地震というより、まるで地面そのものに衝撃が走ったかのような揺れだった。


「来ましたね。包囲網から脱出するまではご一緒します。そこから先は各々の判断で逃げてください。ここに来るまでの敵魔術師は倒してきましたが、もういないとも限りません。索敵と警戒を密にしてください」


そういって調査型の魔術師や護衛役の魔術師をせかすように南側へと移動させようとする。


このまま任せてもよいのだろうか、その疑念はこの数十秒後に打ち砕かれることになる。


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