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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十六話「届かないその手と力」

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というわけで論法

「というわけで支部長、飛行機何機か用意してください」


「・・・今までいろんな人が僕に無理難題を言ってきたけどさ、これほどの無理難題は久しぶりだよ。さすがはクラリスの弟子だね」


「そんなに褒めないでくださいよ」


「絶対褒めてないからね。勘違いしないでね?」


康太のかなり無茶苦茶な提案に支部長は仮面の下で複雑そうな表情を浮かべながら康太の出してきた提案の真の意図を知ろうとしていた。


「というかさ、相手を倒すために必要だからっていう理由で飛行機を何機かチャーターするってなかなかだよ?なに?爆撃機でも用意すればいいのかい?」


「いえ、普通にたくさん人を運べるような飛行機があればそれでいいですよ?」


「・・・あぁ、直接飛行機を叩きつけるのかい?さすがに都市部にそれはやめてほしいんだけどね」


「俺をどんだけ危ないテロリスト扱いしたいんですか。そうじゃなくて、協会の門が近くにない場所に拠点作られたらそこまでの移動が大変だろうって話ですよ」


「なんだそういうことか。びっくりした、クラリスの前例があるからね・・・君も似たようなことをしだすのかと思ったよ」


「え?師匠って飛行機を落としたことあるんですか?」


「あるよ、クラリスはいろんなものを落としてきたよ。飛行機もそうだしヘリもそうだし、飛行船とかも落としたことがあるね。あとは落としたってわけじゃないけど船を何隻か沈没させてるくらいかな?」


相変わらず自分の師匠はえげつないほどに破壊活動に精を出しているのだなと、康太は小百合の所業を聞いてあきれ果ててしまっていた。


そんな小百合の実績を聞いてアリスは笑っているが、後始末をする側とすれば笑いごとでは済まされない。


現代において空を飛ぶものが落ちるということに関してはかなり厳重な調査がされるものだ。


落下した原因などを一から十まですべて調べ上げられる。そんな状態で魔術の存在を隠匿するのは非常に骨が折れただろう。


昔話をする支部長は乾いた笑い声を出し続けている。本当に苦労したのだなと康太は涙を禁じえなかった。


「まぁ師匠のことはさておき、とにかくお願いしますよ。相手がそういう奥地とか秘境に拠点を作ってたらすぐに攻撃しに行くことができなくなりますから」


「んー・・・納得できるだけに断りにくいね・・・その話は本部には?」


「今日例の情報を渡してきたところなんですよ?それにこの話をする段階ではないと思いました」


「こういうのの用意は早いほうがいいと思うんだけど・・・どうして早いと思ったの?」


「まだ相手の拠点もはっきりしていませんし、何よりそれだけのものを用意するとなればほかが疎かになる可能性もあります。何より内通者の割り出しができてない状態でこちらの準備は知られたくありません・・・いや、もう予測されて対応されてるかもしれませんけど」


未だ相手の内通者を割り出せていないため、この準備のことを知られると相手にも対策をされる可能性は十分にある。


相手の機動力を潰すのは戦いの上で必須といってもいい。康太なら間違いなく足を潰す。そしてそれは相手にとっても同じだろう。


情報を流すよりも早くこちらがどのような行動をとるのかを予測し、その対策を練っている可能性は十分にあり得る。


「確かに、場所が場所ならそれだけでこちらが詰むような状況も十分にあり得るね・・・わかった・・・でもどうしてその話は僕にしたんだい?信用してもらえてるっていうのはいいんだけど」


「支部長ならいろいろと頑張って用意できるかなと思ったんです。師匠のわがままに振り回された実績があればどんな無理難題でもなんとかなるかなって」


「・・・素晴らしい信頼のされ方だね。ありがとう。君の師匠にはよく伝えておいてくれ、もう二度と君と同じ飛行機には乗らないと」


声に色がついていたらきっとどす黒い色になっているであろう支部長の怨嗟の声に康太は笑うことしかできなかった。


「師匠は運転は上手いんですけどね。飛ぶものは操縦できませんでしたか」


「違うんだよ、彼女の場合ちょうどいいからって飛行機を落とすんだよ。あと先とか考えないで思い付きで落とすんだよ。本当に勘弁してほしいよ、あれでいったいどれだけ苦労したことか・・・」


一体いつの頃の話をしているのか、支部長は頭を抱えるようにしてうなだれてしまう。


ちょうどいいからなんてものすごく雑で適当な理由で飛行機を落とされたのではたまったものではない。


支部長の中で小百合と共に飛行機に乗ることは後始末が発生することが確定していることに等しいのかもしれない。


「さっきのことは訂正してくれるかな?君はもう空を飛ぶものには乗らないでくれに変えておいてくれ。絶対に彼女を空飛ぶものに乗せてはダメだ。間違いなく大惨事になる」


「伝えておきますよ・・・とはいえ今回の相手は師匠も一緒に戦ってくれたら楽だったんですけど・・・」


相手の規模を考えれば小百合が一緒にいればかなりの戦力になるのは間違いない。


だが戦力にするには飛行機に乗せなければならない可能性がかなり高くなる。


どちらを取るのか、支部長としては悩みどころなのだろう。


世界を天秤にかけてでも、小百合は飛行機には乗せたくないというのが支部長の偽らざる気持ちなのだ。



「っと・・・話がだいぶ脱線したね・・・飛行機の件に関しては了解したよ。拠点攻略ができるだけの人員を載せられる飛行機・・・可能なら武装もさせたいね」


「そのあたりはお任せします。支部長なら人員配置などは上手くできるでしょうし、必要な武装なども調達できるでしょうから」


「過剰な信頼を寄せてくれているのはうれしいけどね・・・僕も何でも用意できるわけではないんだよ?」


「飛べる飛行機が数機用意できるだけ十分ですよ。奇襲にしても一気に攻略にしても移動手段はあったほうがいいですから」


多少無理をすれば康太も空を飛べなくもない。ウィルの協力があれば比較的楽に飛行することは可能だ。


だがそれを大人数でやるというのは無理がある。どうしても速度が出ず、道具などに頼らなければならないことを考えると飛行機があったほうがいいのだ。


「でもさ、ちょっと疑問なんだけど、アリシア・メリノスはそういうのを持っていないのかい?ジェット機とかそういうの」


「ビーにも言われたが、私はそういう類のものを所有していない。日本では自転車一つ自分のものではないのだぞ?」


「ていうかお前自転車乗れるのか?」


「バカにするな、自転車くらい乗れる。普通のだと足が届かないだけだ」


「・・・子供用のチャリ買うか?」


「あんなものを買うのは私のプライドに反する。却下だ」


足が届かないという時点でプライドも何もあったものではないと思うのだが、アリスにとっては子供用の小さな自転車に乗るのは激しく嫌らしい。


何がそんなに違うのだろうかと康太は疑問を抱いたが、本人にしかわからないものがあるのだろうとここは流すことにした。


「ともあれ私はそういった移動手段は持たん・・・自分の力で空を飛べるのにわざわざ飛行機を持つ必要もないだろう。乗るというのならただ単に旅客機にでも乗ればよい」


「えー・・・戦闘機とか乗りたいとか思わないのか?」


「思わん。まぁ興味があるがな。そのためにわざわざ購入しようなどとは思わんよ。そもそも買えるかどうかも怪しいがな」


戦闘機の類を個人が購入できるのかどうかはさておいて、興味がある程度の関心で高価な代物を買おうとするほどアリスは物欲にまみれていないようだった。


今回に関しては買っておいてもいいんじゃないかと康太は思ったが、何千万、何億とする機体をそう易々と買えるはずもない。


そもそも康太の貯金すべてを吐き出しても全く足りないのだ。アリスの貯金が今どの程度なのか知らないが、それでもポンと出せる金額ではないのは間違いない。


「話を戻そう、飛行機の手配ならある程度伝手があるから何とかなるとは思うよ。壊されるとすごく困るけどね」


「なるべく壊さないように頑張ります」


「まぁそればかりは乗る人に気をつけてもらうほかないんだけどね・・・クラリスが作戦に参加しなければ一番いいんだけど・・・いやそういうわけにもいかないか・・・彼女の場合いつの間にか中心に向かって行くからなぁ・・・」


支部長は困ったように天井を仰ぎながらため息をつく。だが今は小百合の被害のことばかりを考えていても仕方がないとある意味割り切ったのか、視線を康太たちの方に戻すと小さくうなずく。


「よし、そっち関係は僕が何とかしておくよ。他の支部とも連携を取ってうまく回しておく・・・必要ならヘリとかそういうのも手配しておくから」


「さすが支部長頼りになりますね。それじゃあお願いします。師匠がなんかやっちゃったらそれはそれでごめんなさい」


「謝られてもちょっと困るんだけどね。いや、クラリスは謝りもしないからまだましな方なのかな・・・?とにかく、門のある教会から遠くに相手が拠点を構えている可能性があるのは理解したよ。その場所の割り出しもしたいところだね・・・」


「えぇ・・・何か情報が出てくればいいんですけど・・・さすがに相手も尻尾を掴ませてくれませんね・・・今回の攻略戦でうまくいけばいいんですけど」


今回地図に記載されていた情報から、調査と攻略を行うのはすでに確定している。


何人かの人員を集め、すでに攻略に行けるだけの準備は整いつつある。


戦力面では問題はない。問題なのは調査の人員である。


範囲が広いということもあって人でがいくらあっても足りないのだ。一度に召集するとなるとやはり時間はかかってしまう。


「戦力は十分そろえるつもりではいるよ。エアリスがいるってこともあってクラリスは参加したがらないけどね」


「それはもうしょうがないですね。あの二人は犬猿の仲ですから・・・なんであんなに仲が悪いんだか・・・」


「んー・・・こればっかりは昔からだからね・・・まぁ次の攻略戦の準備もでき次第君たちに声をかけるよ。今回は包囲戦を想定してるからね。戦闘要員だけでもかなりの人員が必要になるから」


「突出した戦力よりも、安定した実力を持ってる魔術師のほうがよさそうですね・・・あんまり俺役に立てないかな・・・?」


「戦いなら君の活躍の場は必ずあるよ。気負わず待っていてくれれば舞台はきっちり整えるさ」


さりげない言葉に自信たっぷりなのがうかがえる。さすがは支部長、伊達に面倒ごとをこなしてきていないなと康太は半ば安心していた。


そして同時に気を引き締める。自分が活躍する場はやはり戦闘の中にしかないのだと言い聞かせて。


日曜日なので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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