いくつかの層
世界的な規模で発生した事件の共通点、いくつかの事件を見たことで康太が感じたことは組織によって引き起こされ、その動きが世界的に広まっていったというものだった。
そして現代に近づけば近づくほど協会の力を利用し、過去に行けば行くほど、協会の力を利用せず自らの組織のみの力で行動を起こそうとする傾向があった。
現代に近くなればなるほど魔術協会の勢力は増している。そのため魔術協会の力を利用するという事件の経緯は納得できるものでもあった。
だが利用すると同時にその力こそが最大の障害になるのも事実のようだった。
現に今回の事件も、協会の内通者を利用することで相手は情報をかなり得ているようである。
利用できるものがどのレベルなのかまでは判断しかねるが、少なくともそれらを協会に隠して行ってきたことは間違いない。
組織が大きくなれば当然見えなくなる場所も多くなる。そのあたりは世の常だ。魔術師の集まりとて例外ではない。
「アリスから見て、今回の事件はどういう傾向にあると思う?」
「質問を返すが、ビー自身はどうだの?今回いくつかの事件の資料を見てどう思った?何を感じた?」
今まで起きた同規模の事件の概要を知って、康太は今回の事件について一度考えることにした。
未だ収束しているとは言えないこの事件。未だ核心ともいうべき部分を掴めていない今回のこの動きに、康太としては少し不穏なものを感じていた。
世界征服。この星を手に入れる。そして各地に記された何かの印、各所で起きる不可解な最後を迎えた事件。
それらすべてが繋がっていると仮定して、今までの事件を総合的に判断すると、康太の中でいくつかの考えが浮かんでいく。
「協会の力を最大限利用しながら、なるべく協会を敵に回さないようにしているように思えた。多少乱暴な手段は使ってるけど、それもトカゲのしっぽとかを使ってるんじゃないかって感じた」
「うむ、その通りだの。連中はこれだけ活発的に動いておきながら未だに本部にその尻尾を掴ませておらん。あくまで利用するだけ利用し、あとは自分たちだけで動くつもりだろう」
「協会が最大の敵になるってわかっているから」
「そういうことだ。協会の力は大きい。戦力面でも技術面でもおそらく世界最大の魔術組織であるだろう。その力を利用できるのは大きい。だが協会の理念に反する以上衝突は避けられん。だからこそ連中は組織をいくつかの層に分けているはずだ」
「情報を知ってる幹部層と、トカゲのしっぽ代わりに使うための現場で動く下っ端層だな?俺らが今まで捕まえたのはほとんど下っ端層ってことか」
康太は今まで何度か件の組織と思わしき連中と遭遇し戦闘を繰り返した。その中のほとんどがおそらく康太の言葉でいうところの下っ端層になるだろう。
ある程度拠点の情報を知っていても、核心部分に触れることがなかったのはそれが原因でもある。
情報こそが重要だと知っていて、なおかつ協会の力が強大であることを知っているがゆえの基本方針であると康太もアリスも気づいていた。
「情報が知られれば当然協会としても動かざるを得なくなる。だが何も知らなければただ個人で動いたということに近くなり事件性が薄くなる。前に似たような方法を取った輩がいたが、今回のこれはそれをかなり大規模に行っている」
「・・・それだけ相手も人数が多いってことだよな」
「おそらく数百から千人近い人員が参加しているのではないか?そのほとんどがビーが言うところの下っ端層だろう。とはいえさすがに大々的に動きすぎているから何人かに気付かれ、今こうして本部と協会全体を動かした」
「でも協会の動きをだいぶ遅らせることに成功してるのも事実だろ?この間の地図から考えても、もう最終段階に入ってるんじゃないか?」
相手の目的は協会から最大限情報とその技術などを盗み出し利用し、なおかつ協会の敵にならないような立ち回りで自らの目的とする何かを実行に移すことだ。
そういう意味では半分は成功半分は失敗していると言えなくもない。すでに協会は件の組織を敵と認識してしまっている。
だが失敗はしたものの、協会の動き出しをかなり遅らせること自体には成功している。あとは相手の行動に協会が追い付くことができるかというところだろうか。
「最終段階といえるかは微妙なところだが、少なくともかなり終盤に差し掛かっているのは間違いないだろうな。こういった情報が存在するということはすでに現地調査やその準備に取り掛かっているのは間違いない。もしかしたらもう終わっている可能性もある。私もすでに調査に参加しているからな」
現地に魔術や方陣術をセットする場合、小さなものであればたいていどんなところでも発動は可能だが大規模なものになれば地脈の影響も受けてしまう。そういったことを想定し場所を選ぶ必要があるのだ。
そういった調査をすでに終わらせているからこそあのように地図に印を描くことができている。
かなり面倒な状況に差し掛かっているのは間違いない。
だからこそアリスも支部長の命令に従って調査を始めているのだ。チームとして力を貸すことはしていなくとも、調査において個人的に力を貸すことはできるということであるらしい。
「いくら数で優っているって言っても、実際に戦闘できる人間はたぶん同数、こっちの方が多いくらい・・・それだと勝てるかどうかも怪しいか・・・しかも相手は分散してる」
「分散していたほうがありがたくもある。戦いとは戦闘要員だけではなく、後方支援なども重要になってくる。だからこそ相手をどのように倒すかではなく、相手ならどのように自分たちを攻略するかという見地から考えるべきだの」
「相手なら・・・どうやって・・・」
康太にとって今までなかった考え方に、その頭の中は一気に回転し始めていた。




