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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十六話「届かないその手と力」

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まじめに世界征服

「世界征服か・・・ベルならどうやってやる?」


「私?私ならそうね・・・味方の条件にもよるけど、やっぱり偉い人たちを一人ずつ洗脳していくかしら」


「おぉ、お偉方から狙っていく作戦か」


「世界征服って言えるかは微妙だけど、結局世の中って一部の偉い人が動かしているようなところあるじゃない?大きな流れを作ることができるのはやっぱり上に立つ人だから」


いくら世の中が九十九パーセントの凡人によって成り立っているといっても、世界の大きな流れを作るのは一パーセントにも満たない頂点に立つ人間だ。


逆に言えば、その一パーセントに満たない人種を自らの支配下に置けばたいていのことは何とかなる可能性が高い。


外交問題、法律、金銭や犯罪行為。ありとあらゆる行動や行為が自らの思うように進み、危険な行為でも違法な行為でも容認される可能性だってある。


権力がすべてとは文も言いたくはないようだったが、現実問題権力をうまく操る人間こそが多くを動かせるといってもいいだろう。


「仮に世界の国一つ一つに・・・まぁそうね、トップ十人程度をそれぞれを操ればたいてい何とかなるんじゃないかしら?国内外にそれぞれ味方を作ることができれば、その分国内の立場も盤石にできるでしょうし」


「・・・なんか地味だけどさらっと現実的なことを言うよねライリーベルは・・・お願いだからやらないでよ?お偉いさんの周りなんてただでさえ監視が厳しいんだから」


「わかってますよ。っていうかやるだけのメリットがありませんよ。今だって割と好き勝手やってるのに」


康太ほどではないとはいえ、文も文でのびのびと魔術師としての生活を送っている。何かを規制されるわけでもなく、誰かに非難されるわけでもない。


そもそも一般人の法からすでに大きく逸脱しているというのに、今更一般人のための法を順守している者の許可を得る必要もないのだ。


「じゃあ洗脳以外では?世界征服ってそもそもどうなったらオッケーなんだ?」


「やっぱりあれじゃない?自分に逆らう勢力がいなくなればいいんじゃない?逆らえないだけの状態を続けさせるか、逆らったらやばいと思わせるか、それは手段にもよるでしょうけど」


「ふむふむ・・・まぁ早い話が敗北感を与えればいいみたいな感じか・・・俺にはちょっと無理そうだな」


「あんたみたいに個人相手だとね・・・どうしても限界はあるでしょうよ。でもいっそのこと首脳陣だけを狙い続ける暗殺者的なポジションになったら?実際殺すんじゃなくて脅すだけとかそんな感じ」


「いつでもお前のことを殺せるんだぜ的な?いやいや、どこのアサシンだよ・・・俺そういう潜伏とか苦手なんだけど」


「それもそうね・・・そうなるとあんたでもできそうな世界征服って、もう国を亡ぼすくらいしか思いつかないんだけど」


「一般人皆殺しにして魔術師だけの国でも立ち上げるか?それでも師匠たちがいるから征服できる気がしないんだけど」


文のように権力などの見地からアプローチをかけるのとは異なり、康太の場合現実的なのは自分の実力を用いた攻略法だ。


だがその場合康太よりも実力の高い魔術師たちの抵抗が予想される。そうなると間違いなく負けるのは康太だった。


長所を活かす戦いにしても、康太はうまく世界を征服できる気がしなかった。


そんな途方もないことを、今対峙している魔術師の組織はまじめに考えているのだろうかと少し感心していた。


まじめに考えれば考えるほど、世界征服がいかに難しいのかが理解できる。だがそれは個人レベルでの話であり、組織を作り出して挑むのであれば決して不可能な問題ではないのではないかと思える。


「実際どうなんですか支部長。仮に支部や本部レベルの魔術師軍団が世界征服に乗りだしたら、それって成功するんですか?」


「恐ろしいことを聞くね君は・・・でもそうだな・・・支部の・・・専属の魔術師たちが仮に全員動いたとして・・・んー・・・目的を達成するには・・・どうするのがベターかなぁ・・・?邪魔が入った場合の対策として何人か・・・実際に動く人間をローテーションして・・・いやそれだとなぁ・・・」


康太たちのことをとやかく言っていながら、支部長は支部長で割とまじめに世界征服のことについて考え始めているようだった。


相手の目標がそれほどに突拍子のないものであるとわかった以上、康太たちも真面目に世界征服について考える必要があると考えたのである。


相手の目的を知るには本気で同じようなことを考えなければならない。それが少年時代に忘れ去った子供心にも似た何かだったとしても。


「ぶっちゃけ難しいね・・・期間や具体的な方法がないから、とりあえず一年以内でさっきライリーベルが言ったような状況を想定したけど、やっぱり偉い人になればなるほど警備は厳重だからね」


「やっぱり時間がかかりますよね。一朝一夕では・・・」


「いかないね。周りから切り崩していったら結局全部を洗脳下に置くのと変わらない。それじゃちょっと遠回りすぎる」


「ってことは、洗脳以外の方法を考える必要があるってことだ」


支部の人間ほとんどを総動員して、それでもなお現実的とはいいがたい世界征服を前に康太たちは眉をひそめていた。


そもそも世界征服ってなんだっけという一種のゲシュタルト崩壊を起こしながらもくだらなくも面白いこの一件をまじめに考えていた。


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