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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十六話「届かないその手と力」

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切札の一つ

「じゃあ師匠や奏さんなんかもそういうのあるんですかね?武器や戦い方の好き嫌い」


「あるね。すごくあるね。特に姉さんなんてひどいよ?あの人は斬撃よりも打撃を好んでるからね」


「え?でも奏さんって槍が得意でしたよね?」


数多く使える中で、奏が一番得意としているのは槍だ。その技術は小百合よりも上であり、康太など足元にも届かないほどの実力を有している。


速さも重さも鋭さも比べ物にならない。槍は刃がついていてこその槍だ。打撃が好みであるというのであれば槍よりも棍などを使ったほうが良いように思えるのだが、そういうわけでもないのだろうか。


「うん、姉さんは槍が一番得意だし、その次に刀剣の類が得意なんだよ・・・でも打撃が好きなんだって」


「・・・なんかすごく残念な感じですね」


「そうなんだよ・・・普通なら打撃よりも斬撃が好きになるところを、あの人は打撃が好きでね・・・魔術でも打撃に属するものが多いし」


そういわれればと、康太は奏が使ったことのある魔術を思い出す。衝撃を打撃ととらえていいかは微妙なところだが、相手を打ち据えるという意味で打撃と言えなくもない強い衝撃波を放っていた。


もしかしたら幸彦の言うように本当に打撃が好きなのかもわからない。


だとしたら好きな方法と得意な技術が違うというのはなかなかに面倒なものかもわからない。


「好きな攻撃と嫌いな攻撃・・・でも嫌いな攻撃とかもあると・・・でもそういうのってどうなんですかね?好きでも苦手な攻撃を続けたほうがいいのか・・・」


「好きな攻撃を続けるとやっぱりテンション上がるよ?もちろん苦手でも好きな攻撃っていうのはちょっと厳しいけど、相手を圧倒する意味でも、自分の士気を上げる意味でも、好きな攻撃っていうのは結構大事だと思うなぁ」


自分の士気を上げる。そういう考えは今まで自分にはなかったなと康太は思い返していた。


今までの戦いはあくまで仕方がなく行ったものが多かった。どうしてもやらなければいけないからやったもので、そもそも自分が望んで戦ったことは数える程度しかない。


その中でやる気を出すというより自らの士気を上げるというのはなかなかに難しかった。


とにかく相手を倒すことに必死でそこまで考える余裕がなかったというべきだろうか。


「士気が上がるとやっぱりいいですかね?」


「いいね、これは僕の場合なんだけど、テンションが上がってくると同時に体の調子もよくなってくるから。身体能力だけじゃなくて魔術の発動のノリも違ってくる」


「そんなに」


「あくまで気がするってだけかもしれないけどね。でもやっぱりテンションが上がるといいことは多いよ。康太君はどういう攻撃が好きなんだい?」


どういう攻撃が好きか。康太は今まで魔術、武器、体、すべてを使って戦ってきた。


ありとあらゆる戦いをしてきたが、その中でテンションが上がった経験というのはあまりない。


どういう攻撃が好きなのかと聞かれても困るというのが正直なところではあるが、いくつか心当たりがないわけでもなかった。


槍や剣といった、斬撃系の武器で攻撃を当てた時、幸彦がいうところのスカッとする感覚がないわけではなかった。


そしてウィルの力を借りて高い威力の攻撃を放った時、一種の開放感のようなものがあったのも事実である。


やはり大きくものを壊すことができるような魔術は少年心をくすぐるものだろうかと思いながら小さくうなずく。


「なんかこう・・・威力が高い攻撃はいいですね。当たると気分いいです」


「・・・あー・・・やっぱりさーちゃんの弟子だなぁ・・・うん、そういうところはよく似ているよ」


幸彦は康太の言葉に苦笑してしまっているようだったが、別に康太としてはおかしなことを言ったつもりはない。


そして幸彦もそんな康太を見て懐かしく思っているようだった。


かつての小百合を思い出しているのだろうか、それとも単純に同じようなことを言っている師弟の姿を重ねているのだろうか。あるいはそのどちらもなのかもしれない。


「それならいい魔術を教えよう。かなり大きくぶっ壊せるよ。ちょっと手間がかかるかもしれないけどね」


「事前準備が必要なタイプは結構好きですよ。そういうのよく覚えてますし」


「うん、いいね。けどこれは実戦の途中でそういうのをやらなきゃいけないタイプだ。今まで康太君が覚えていたのは戦いの前に準備ができただろう?今度はそれを戦いの中でやる必要がある」


戦いの中でそれをやるという言葉に康太は首をかしげていた。


「まぁ習うより慣れろという言葉があるしね。そのあたりは教えてから自分で少しずつ学んでいくといいさ」


「ちなみにその魔術は師匠も覚えているんですか?」


「うん、覚えているはずだよ。たださーちゃんはあんまり使いたがらなかったなぁ・・・今まで使ってるところ見たことないかもしれない・・・あー・・・っていうか教えるならさーちゃんが覚えていないものを教えるべきだね・・・それも一緒に教えよう」


小百合にも好みの攻撃があるということもあって、そういうこともあるだろうと幸彦は考えているようだった。


そして小百合が覚えられているということは破壊に属する魔術であることは間違いなさそうだった。


壊すことに関して小百合の右に出る者はいないが、幸彦も小百合と同じように戦うことを得意としている魔術師だ。破壊に精通していても不思議はない。何せ小百合の兄弟弟子なのだから。


















「ほう・・・兄さんに魔術を教わったか・・・その魔術はもう教える必要がないということだな」


「はい、師匠が覚えているものと、あと一つ一緒に教わりました。両方俺好みのいい魔術ですよ」


康太は訓練を終えた後、いつものように小百合の店に戻ってきていた。いつも通りアリスと神加、そして小百合が居間でくつろいでいるのを見て安心していた。


康太の好みの魔術というのがどのようなものなのか小百合は把握していなかったが、幸彦から教わった技術というのは決して無駄にはならないと思っていた。


小百合から見た幸彦というのは、かなり戦闘面に長けた魔術を多く覚えているという印象だ。


逆に言えばそれ以外の魔術を覚えているという印象が薄い。もちろん覚えていないというわけでもないのだろうが、小百合の中に未だ残っている印象は、相手を徹底的に叩きのめす幸彦の姿だった。


「お前もだいぶいろいろと覚えてきたからな・・・そろそろ突出した攻撃手段の一つでも覚えてみるか」


「お、師匠らしくもない。今まで攻撃に不向きな魔術がありましたか?分解を除いて」


「まぁそうなんだがな・・・今回のこれは桁が違う。組み合わせ・・・使い方によってはかなり広範囲を一撃で破壊できる魔術だ。私の切り札の一つになっている魔術だな」


小百合の切り札の一つ。その言葉に康太はつい姿勢を正してしまう。小百合がどのような魔術を覚えているのか、康太は完全には把握できていない。だが小百合が切り札の一つと称する魔術がどれほど危険なものであるのか、そのくらいは承知していた。


「えと・・・その・・・あたり一面更地にできるとか・・・そういうレベルですか?」


「・・・そうだな・・・使い方によってはそういう使い方もできる・・・だが調整が難しくてな・・・私も一度盛大にやらかしてしまったことがある・・・その時は確か・・・何と言ったかな・・・?何かの遺跡?をかなり壊してしまってな」


康太はそれを聞いた瞬間に、過去聞いたことのある小百合の悪行の中にあった『世界遺産を破壊した』という事柄を思い出し『この魔術が原因だったのか』と一気に緊張を強いられることとなった。


調整が難しい。それはおそらく威力の調整ということだろう。そういったものが難しいということはそれだけピーキーな魔術である可能性が高い。


一体どれだけ危険な魔術なのだろうかと康太は冷や汗を禁じえなかった。


「まぁあれだ・・・その魔術を訓練するときはここではやるな。やるならどこかの山奥でやれ」


「・・・そんなに危ないんですか?」


「・・・最悪の結果を見たくはないからな・・・この店が消滅するのはごめんだ・・・いやそれだけで済めばいいんだが・・・大通り・・・駅の方まで被害を出すとなると・・・」


「待って待って待ってください・・・ここから駅までって・・・えっと・・・二キロくらいありますよね?」


「そうだな・・・使い方によればそのくらいの距離は攻撃範囲内だ」


さも当たり前のように言ってのけた小百合に、康太は戦慄してしまっていた。自分は今とんでもない魔術を覚えようとしているのではないかと震えが止まらなかった。


「その魔術って、姉さんも覚えてるんですか?」


「もちろん覚えているぞ。あいつはこの魔術があまり好きではないのか使いたがらないがな」


広範囲に破壊をまき散らすような魔術は確かに真理の好みとは違うだろう。真理は小規模で人体に的確なダメージを与えられるような攻撃を好む。


周囲の被害を無視した攻撃というのはあまり好まなかったはずだ。


「ちなみに属性は・・・?俺の使える属性ですよね?」


「お前の使えない属性の魔術を教えてどうする。そろそろお前も別の属性を覚えろ、いい加減風と火だけでは心もとない」


「そうはいっても・・・なかなか覚えるものがなくて」


一番の候補は雷属性なのだが、雷属性の適性がほとんどないために覚えるにはかなりの時間を要するだろう。


そこまでして覚える価値があるかと言われると正直微妙なところでもある。だが小百合の覚えている魔術をすべて伝授されるには風と火以外にも使える属性を増やさなければいけないのだ。


「ちなみに今回教えてくれる魔術は?」


「火属性の魔術だ。火属性は攻撃魔術が多いからこちらとしてはありがたい限りでな・・・とはいえ、これはその中でも特に危険だ。事前準備が必要な類ではあるが、お前向きの魔術だろう」


事前準備が必要な類。蓄積や蓄熱と同じ類の魔術だろうかと考えた。それならば高威力を出せることにもうなずける。


だがその効果範囲がキロ単位となるとその攻撃能力は計り知れない。小百合が引き起こしてきた攻撃手段の中でも類を見ないほどの破壊性能だ。


「訓練が山奥っていうのはなかなか面倒ですね・・・」


「仕方がないだろう。私も昔そうした。ただお前なら比較的楽に山の奥には行けるだろう?私の頃に比べればまだましというものだ」


小百合は康太と違って空を飛べるわけでも、身体能力強化を使えるわけでもない。おそらく自分の足で登って訓練していたのだろう。


そう考えると小百合は結構努力家なのだったと今更ながら自分の師匠がどのような存在であるのかを思い出していた。


才能ではなく、努力でここまでの力を身に着けた人間。それが小百合なのだと。
















「・・・一応聞くけど・・・どうしてあんた最近帰ってくるたびにボロボロになっているわけ?」


「・・・新しい魔術の訓練をしててな・・・これがえげつない魔術で・・・扱いがすごく難しい・・・っていうかピーキーすぎる」


康太と文の拠点で康太はボロボロの体を引きずってリビングで倒れるように横になっていた。


体中に傷があり、打撲や裂傷など場所を選ばずに傷を作っているさまは魔術師のそれとは思えなかった。


「次からはウィルを連れてエンチャントつけて・・・完全防備の上でやることにする・・・いや、それでもダメージ受けるかもしれないな」


「そんなにすごい魔術なの?良かったじゃない」


「よかったはよかったけどさ・・・ぶっちゃけかなり危ない。師匠が切り札の一つに数える魔術だぞ?」


「・・・それは・・・」


小百合が切り札の一つとしている。その事実だけでその魔術がいったいどれほど危険なものなのか文にも想像できた。


常用の動作拡大などの魔術もかなり攻撃性能の高い魔術ではあるが、おそらくそれをはるかに超える威力を持った魔術であるくらいのことは文でも理解できる。


現時点でも康太の攻撃力は高いほうだ。だが小百合の切り札の一つを手に入れたことでさらにその攻撃力に磨きがかかることとなるだろう。


今まで康太もかなり危険な魔術を覚えてきたが、今回のこれはそれをはるかに上回るほどの威力なのだ。

康太が修業場ではなく、わざわざ山に出かけるほどに。


「ちなみに聞くけどさ・・・あんた地形破壊とかしてないでしょうね?あんまりやりすぎるとあとで面倒よ?」


「わかってるって・・・被害は最小限に抑えた・・・それでもかなり大きめの穴が開いたけど・・・あれを自由自在に操れるようになれば・・・確かにかなり強いとは思う」


「へぇ・・・どのくらい?」


「今までの相手が瞬殺できるようになるかもしれない。うまくやればな」


今までの相手。今まで康太が苦戦した相手もすべて瞬殺できるレベル。そんな攻撃力を有したら一体康太はどうなるのか。文は少し興味があった。


現段階でも強い康太がさらに強くなる。おそらくその実力は本部の中でもトップクラスに位置することになるだろう。


もっとも、小百合や真理、奏や幸彦という存在がいる以上いつまでたっても一番にはなれないだろうが。


「まぁそれだけ被害をまき散らすような魔術なら、実戦投入はだいぶ先になるでしょうね・・・今年中にはいける?」


「・・・十月・・・いや十一月くらいまでには何とか実戦で使えるようにしてみせる。このまま順調にいけばの話だけどな」


今は八月の半ば、あと二カ月程度でものにして見せるという康太の言葉に文は心強さを感じていた。


一つの魔術を身に着けるには、本来であれば一カ月から二カ月程度の時間が必要となる。康太はその修練の密度が高いからか、本人の才能によるものか、あるいはその両方か、たいてい一カ月前後で一つの魔術を実戦投入レベルにまで仕上げてくる。


その康太が二カ月は様子を見るということは、やはりそれだけ危険な魔術だということだろう。


「その魔術って攻撃だけにしか使えないの?」


「いや・・・使い方によっては防御に使えなくもないけど・・・あれは防御といえるのか微妙なところだな・・・あれを防御とは言いたくない・・・どっちかっていうとカウンター・・・に近いかな?」


「攻撃手段の一つで防御か・・・あんたの使う炸裂障壁みたいなもの?」


「あー・・・それに近い・・・いや近くはないな・・・なんていえばいいのか俺にもわからない・・・しかもかなり周りを巻き込む可能性があるから」


「あぁ、攻撃範囲が広いんだっけ?それじゃ確かに防御とは言えないわね・・・っていうかあんたそろそろまともな防御手段覚えたら?未だにまともな障壁一つ覚えてないでしょう?」


文に言われてそういえばと康太は思い出していた。康太が使える防御手段といえばエンチャントの魔術と炸裂障壁だけだ。


そのうちの炸裂障壁は破らせることを目的としているために防御能力はかなり低めに設定されている。

まともな障壁一つ覚えていないというのは確かに問題かもしれないなと康太は眉をひそめていた。


何せ弟弟子である神加でさえちゃんとした障壁魔術を覚え、しかもすでにかなり使いこなしているのだ。

兄弟子としてはしっかりと覚えるものは覚えておいたほうが良いのではないかと今更ながら悩んでしまう。


「しかも索敵の魔術もまともなの覚えてないでしょ?ちゃんとしたの覚えておかないときついんじゃない?」


「あー・・・そういえばそのあたりも覚えなきゃなって思ってたんだ・・・なんか課題がどんどん増えていくなぁ・・・」


それだけ康太が魔術師としてかけている部分が多いということなのだが、逆に言えばそれらを補完していけばまともな魔術師に近づけるということでもある。


半ばもう今更な感じがしなくもないが。


一気に三つの魔術を教わった康太はそれらの練習にいそしんでいた。だがその場所は小百合の修業場ではなく人の入り込まないような山奥だった。


登山道もけものみちすらもないような山奥。決して人が入り込むようなことがないような場所で訓練を続けていた。


これはこれで修業らしいかなと思いながら昼間から夜遅くまで修業し、街の明かりを目印にして戻ってくるという生活を繰り返していた。


まるで何かの苦行を課しているかのような生活に、文は時折様子を見に行くが、恐ろしく危険な訓練ばかりやっている。


というか練習中の魔術の威力が高すぎて地形が変わりかねない勢いだった。


アリスが定期的に来て康太の傷をいやしがてら地形を修繕しているらしい。さすがにこの惨状を放置していくことは彼女にもできなかったのだろう。


地面はえぐれ、木々はなぎ倒され、岩は砕け散っている。康太が修業した周辺はたいていそんな感じになってしまっていた。


最近の康太の修業を見ていなかった文は、康太の普段向かっているという場所に向かい、その様子を確認して顔をしかめていた。


明らかな破壊痕。それがどのような攻撃だったのか、どのような魔術だったのか見ただけでは文には分らなかったが、高い威力を有しているということは容易に理解できた。


「あれ?文、どうした?」


「様子を見に来たのよ。最近ボロボロで帰ってきてばっかりだから気になってね・・・それにしても・・・」


文は破壊され果てている自然豊かな山の一角を見てため息をつく。本来であればこの辺りは生き物の宝庫だったのだろう。


木々には虫や鳥が巣を作り、草木を食む小動物たちが顔をだし、土の中には土の中で生きる生き物たちが謳歌していたはずなのだ。


今や木々はへし折れ、草木は引きちぎられ、土は大きくえぐれ露出してしまっている。

アリスが見ていられなくなったのも納得の惨状である。


「もちょっと威力を押さえるとかできないの?」


「これがなかなか難しいんだって・・・やってみるとわかるけどさ・・・っていうかなんて言うのかな?うまくやろうとすればするほど威力が高くなっていくから、そのあたりの調整がまた難しくて・・・」


適切な技術で扱えばそれこそ小百合のように数キロ単位で被害をまき散らすことのできる破壊魔術だ。康太のようなまだ練習したばかりのつたない技術でも一定空間の地形を変える程度の威力は出せるのだから驚きである。


当然その反面、見境がないというデメリットも出てきてしまっているわけなのだが。


「遅くまで同じことの繰り返し・・・多少はましになってるみたいだけど・・・あんたちゃんと親とかに暗示してるんでしょうね?」


「そのあたりは任せとけ。友達と遊びまくってるってことにしてるから」


「それもどうなのよ・・・せめて部活とかにしたらいいのに」


「部活の場合学校に問い合わせたらすぐにアウトだろ?そのあたりも考えているわけですよ俺は」


今時携帯にかけるよりも先に学校に問い合わせるような親がいるだろうかと文は微妙に考えてしまったが、康太の言い分も間違いではないだけに否定しきれなかった。


「それはそうとして・・・様子を見に来ただけか?ほかに用があるんじゃないのか?」


「・・・さすがに察しがいいわね。支部長からの伝言よ。他の支部での拠点攻略でいくつか気になる文書が見つかったらしいわ。至急各本部との情報のすり合わせを行うって」


「・・・ってことは本部に召集か?ゆっくり修業してる暇もないな」


「そういわないの。一応支部長は私たちに出席してほしいみたいだったけど・・・どうする?行く?」


新しい手掛かり。日本支部で見つかった奇妙な石もそうだが、他の支部でもいくつも手掛かりを入手しているということで一度情報を共有しておいたほうが後々のためだろうというのは理解できる。


あとはこの情報共有がどれほどの意味を持つのか。石のことは置いておいても、他の支部で確保した文書とやらは気になる。


「文書って、計画書とかそういう感じか?」


「詳しくは私も知らないわ。ただ本部がほかの支部を集めたってことはそれなり以上にその情報には価値があるってことでしょ。問題は私たちにどこまで関わってくるかってところだけど」


本部や支部の人間にとって重要だったとしても、康太と文にとって重要な情報であるかはわからない。


情報系の魔術師にとって重要な情報であれば康太や文のような戦闘系の人間にはあまり重要度が高くないものとなる。


今後関わっていく依頼などにも直接関係のあるような内容ならばともかく、そこまで関係性のないような内容である可能性もあるのだ。


支部長が出てほしがっているということは、支部長としてはこの件に康太たちを関わらせる気満々のようではあるが、どうするかは康太たち次第である。


「どう思う?私たちに関係してると思う?」


「微妙なところだけど、支部長が俺らを呼んだってことはそういうことだと思うぞ?あの人の面倒ごとに対するアンテナはかなり感度いいだろうから」


「なるほど・・・確かにそうかもね」


長年面倒ごとの中心人物とかかわってきたのは伊達ではない。


支部長の面倒ごとに対する察知能力が何かを感じ取ったからこそ、康太たちを同席させようとしているのだと康太は解釈していた。


その解釈が正しいのか否かは今の時点ではわからない。


誤字報告を15件分受けたので四回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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