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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十六話「届かないその手と力」

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真理のスケジュール

康太は土御門の二人を味方につけると、さっそく真理にスケジュールの確認を取りに行っていた。


これで真理が召喚に参加してくれるとなれば、精霊召喚の効率はさらに高くなること請け合いである。


とはいえ、あまり乗り気ではないのも事実だった。真理の性格上、康太が手伝ってくれといったらスケジュールを空けてでも手伝おうとするだろう。


むしろ最近はどうしているかという世間話から真理の近況を把握しようとしていた。


『もしもし、康太君ですか?』


「お疲れ様です姉さん。今お電話大丈夫ですか?」


『えぇ、ちょうど少し時間が空いたところですよ。どうかしましたか?』


「最近お忙しいですか?師匠のところにも顔を出していないようだったので少し神加が寂しそうにしてましたよ」


実際真理は最近店に顔を出す回数がだいぶ減っている。大学の研究や就職活動などが忙しいのは理解している。


だからここは神加をだしに使わせてもらい、話を進めることにしていた。


『あはは・・・そうですね、最近少し忙しいです。やはりやることがいくつもあると目が回りそうですよ。まぁ普段書類仕事を結構やっていたためましではありますが』


「普段の師匠の後始末がこんなところで役に立つとは・・・何が起きるか分かったものではありませんね」


『えぇ、本当に・・・八月はまだちょっと忙しいですが、秋ごろになれば少しは余裕が出てくると思います。そうしたら神加さんとも遊んであげないとですね』


さすがに今月は忙しいということを聞いてしまっては召喚を手伝ってほしいなどとは言えない。


真理の近況を把握した康太はとりあえずこのまま世間話を続けることにした。


「姉さんの就職先ってどういうところを考えてるんですか?確か姉さんって理系でしたよね?」


『えぇ、私は今のところ技術系の営業職か、事務職、技術職などを考えています。ただ、昨今女性の進出が増えてきているとはいえ技術職に女性がつくというのはなかなか難しいんですよね・・・』


技術系の職業はどうしても男の世界という印象が強い。真理の言うように最近は女性の社会進出ということもあってあらゆる業種で女性の活躍を目的として採用数も増やしているところも多い。


だがそれでも技術系の職業というのは女性が入りにくい業種である。大勢の男性の中で仕事をするというのは大きなストレスも感じることになるだろう。


未だ社会において女性の進出は滞っているといってもいいのかもわからない。


「技術職ってことは・・・いわゆる工場とかそういうことですか?」


『イメージ的には合っていますよ。私の場合は実際に作業などをする側ではなく、品質を管理する側やシステムを維持、あるいは管理する側に回ることになるでしょうが』


「なるほど・・・思い切り技術系なんですね」


『一応そういう学校ですからね。康太君はどうなんですか?何かなりたい職業などはあるんですか?』


「えっと・・・今のところ何も思いついていなくて・・・文系理系っていうのは何となくあるんですけど」


いつの間にか真理の話から康太の話に切り替えられたことで、康太は少しだけ返答に困ってしまっていた。


今のところ康太は理系側の成績が良いため、理系のクラスを選択するつもりではいるのだが、それでもその先、大学からさらに先にある就職先をどこにするのかということを決めきれずにいる。


魔術師として行動している今、普通の人間としてどのように動くべきなのか、どのように働くべきなのか、迷うところでもあるのだ。


「ひとまずは理系の大学に行って、そこからもう少し考えてみようと思います。そもそも何がしたいのかとか、何になりたいのかとか何にも思いつかないので・・・」


『男の子らしいパイロットになりたいとかそういうことはないんですか?あとはスポーツ選手とか』


「魔術師ですから、スポーツ選手はちょっとまずいでしょう。パイロットは・・・なりたいと思ったことはないですね・・・なんでだろ・・・?」


今まで将来の夢と聞かれてきていわゆる普通の子供や男の子が一度は浮かべたことがあるであろうスポーツ選手やパイロットといった一般的なそれらしい職業が思い浮かばなかった。


それがなぜなのかはわからなかったが、今更そういった普通の職業を目指そうと思わなかったのだ。


パイロットなどであればいろんなところに行くことになるだろう。それこそ北から南まで、国内国外ありとあらゆる場所へ。


そんな中で魔術師として活動できる康太は多くの場所に行き放題、と思われるかもしれないが逆に行動を制限されてしまう可能性が高い。


何よりそこまで遠くに行きたいという欲求もなく、なるべく近所に住んでいたいというのが正直なところだった。


「まぁ最悪奏さんのところでお世話になります・・・そういえば姉さんは奏さんのところにはいかないんですか?あの人、人手を欲しがってましたけど」


『私の場合はそれは本当に最終手段ですよ。なるべく自分の道は自分で決めたいんです。誰かの手助けよりも、自分で自分のことをしたいんです』


自分で自分のことを決める。何でもないことだが、当たり前のことだがそれが一番難しく、一番大事なことなのだということを康太は理解していた。


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