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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十五話「釣りをするのも大博打」

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依頼完遂

幸彦の運転で目的の場所にたどり着くと、そこには待機していたと思われる協会の魔術師が立っていた。

昼間ということもあって仮面を着けずに待っていた彼を見て幸彦は窓から腕だけ出して軽く手を振る。


「お知り合いですか?」


「あぁ、結構長い付き合いだよ。僕がいるってこともあって気を回してくれたんだろう。彼なら信頼できる」


幸彦たちがたどり着いたのは門のある教会から少し離れたところにある公園だった。


近くにマンションもあり、宅配などの車もよく路上駐車する通りとなっている。目立たないようにするには絶好の場所といえるだろう。


「なかなかひどい外観になっているな・・・派手に戦ったのか?」


「まだまだましな方さ。うちの子たちが優秀でね、僕はほとんど出番がなかったよ」


「そりゃ何よりだ。でもさっきの場所の方はだいぶ酷いって話を聞いたぞ?補修班がぼやいてた」


「あはは・・・それは後ろにいる連中に言ってほしいなぁ・・・あんな大きな魔術を発動するほうが悪いよ。こっちはなるべく被害を減らそうとしてたのに」


どの口が言うんだと幸彦の戦いを観察していた文は突っ込みそうになるのを必死に抑えていた。


幸彦の使う魔術は確かに小規模なものも多かったが、大規模なものもあった。地面に亀裂を発生させ広範囲に隆起や陥没を引き起こす魔術が大規模ではないのであればいったい何が大規模だというのか。


「とりあえず後ろに乗っている連中がそうなのか?意識があるのが二人ほどいるようだけど」


「あぁ、その二人はうちの子たちさ。監視と万が一の対応ってことで後ろに乗っているんだよ」


「荷物扱いとか・・・なかなかひどいことをするな・・・まぁいい・・・引き渡しは随時行う。ただ一度には動かせない。このまま警護を頼みたいが、まだ動けるか?」


「消化不良なくらいさ。優先順位をつけるから、順番に連れて行ってくれるかい?」


「わかった、連絡しておく・・・そっちに負傷はないのか?」


「一応ね。疲れはしてるけど」


「夜に動けば当然だ。無理をさせてすまないな」


「君が謝ることじゃないさ。本部に合わせればこうなることはわかっているよ・・・他のチームの結果はもう出ているのかい?」


「日本支部が三チーム目のゴールだ。先の二チームに関しては三人と五人捕まえていると聞いた」


「よし、僕らが捕獲数トップだね。自慢できるぞ」


「・・・にしても捕まえすぎな気がするがな・・・」


協会の魔術師はトラックの後ろに転がされている魔術師たちを索敵してため息をつく。


その人数は十人を超えている。これだけの人数を運ぶのも一苦労だ。目立たないようにするというのならなおさらである。


「ところで、この辺りは協会の人間で固めてるのかな?」


「もちろんだ。移動中に余計な手出しをされないように周囲一キロにわたって索敵班を回している。そのすぐそばに控えとして制圧用の部隊も待機している」


「なかなかの警戒状況だね。少しやりすぎって気もするけどなぁ」


「そういうな。いくら日中でも仕掛けようと思えばいくらでもできるんだ。隠匿のためには手段は選べない」


「戦力的には十分だと思うけどね。僕にブライトビーもいるんだよ?」


「・・・あぁ・・・彼もいるんだったか・・・なるほど、君の横にいるのが・・・?女性だったか?」


「いえ、私はライリーベルです。ビーは後ろに乗っていますよ」


「あぁこれは失礼。そうか、そういえば君たちはいつも一緒に行動しているのだったな・・・なるほど戦力としては十分すぎるか」


幸彦の戦闘能力は言わずもがな、そこにさらに康太に文が加わっているということで戦力的にはかなり高いチームになっていると協会の魔術師は把握していた。


もう一人の存在、倉敷のことが気がかりだが、この三人に囲まれている時点で弱いということはないだろうと考えていた。


「それで、どれくらいかかるのかな?半日はかからないと嬉しいんだけどな」


「そこまではかからない。かかっても一時間程度だ。何なら仮眠をとっていてもいいぞ?」


「一度寝ちゃうと眠たくなっちゃうからね・・・まだこいつを返しに行かなきゃいけないから遠慮しておくよ」


「そうか・・・じゃあコーヒーでも差し入れよう。確か微糖だったか?」


「そうそう、ベル、君は何がいい?このおじさんがなんでもおごってくれるってさ」


「え?そんな、悪いですよ」


「気にしないでいい、君たちはしっかり仕事をこなしたんだ。このくらいのねぎらいはさせてくれ。本来は私たち専属の魔術師がやるべき仕事なのに君たちに押し付けてしまったのだから」


「・・・そうですか・・・それなら私も微糖を。ビー、トゥトゥ、あんたたちは何がいい?」


無線で後ろにいる康太と倉敷に何が欲しいのかを聞くと、文はそれを協会の魔術師に告げていく。


数分後、近くの自販機から缶コーヒーを買ってきてくれた魔術師がトラックの後ろにいる康太たちと、死屍累々と言うにふさわしい魔術師たちを見て顔を引きつらせていたのは仕方のないことだろう。


専属の魔術師が言ったように魔術師の運搬は一時間もかからずに終わっていた。


一定間隔で荷物を運ぶ台車を用意し、段ボールに人を詰めて運ぶというなんとも恐ろしい運搬方法だったが、問題なく協会の門をくぐって協会の支部へと運搬されていく。


最後に協会の魔術師は運転席にいる幸彦に話しかけてきた。


「それじゃあ例の物を預かる。目的地までもっていくが、何なら一緒に何人か来るか?」


「それもいいけど・・・どうする?君たちはここで解散しても構わないよ?」


「俺はバイクを戻さなきゃいけないのでバズさんと一緒に行きます、ベルとトゥトゥはどうする?」


「んー・・・ビーと一緒に行ってもいいけど・・・一応念のためにビデオと一緒に行くわ。トゥトゥは?」


「俺も護衛役でビデオにつく。そっちはもう車を戻すだけかもしれないけどまだ依頼的には続いてるんだろ?」


「まぁそういうことだな・・・ちなみにそのビデオは最後はどうするんです?ていうかそれ本物なんですか?」


「・・・もう言っても構わないか・・・このビデオはダミーだ。中身はただの映像で魔術的な効果は持っていない」


やはり自分たちが持っていたのはダミーだったかと康太たちは半ば安心したようにため息をつく。


一応守っていたのが本物という想定で動いていたとはいえ、仮に盗まれてもダミーということであればこの後の行動も少しは気が楽である。


「一応運搬って形をとりましたけど、いったいどこに運ぶ予定だったんですか?」


「あそこだ。本物偽物のいかんにかかわらず、工房に持っていって分解、解析する手はずになっている」


「工房・・・ですか・・・あそこはどなたかの拠点なんですか?」


「まぁ似たようなものさ。ダミーだけど一応一通りの道具は用意してある。何なら見ていくかい?」


工房という言葉に康太と倉敷は興味をそそられたようだった。


まだ時間も猶予はある。この場に車を止めておけばいいだけの話で少しの間覗いていくのもいいかもしれないと幸彦もうなずいていた。


「じゃあ目的達成のために少し歩こうか。その工房にビデオをもっていけば依頼完了なんだろう?」


「そういうことになる。それじゃあ行こうか」


厳重に鍵のかけられたアタッシュケースを片手に移動を始める魔術師の後に続いて康太たちは工房と呼ばれる建物の中に入っていく。


索敵を常時発動し、周囲に敵がいないかを確認している文と、最後の最後まで気を抜くわけにはいかないと康太も周囲を警戒し続けていた。


工房と呼ばれた建物は二階建てのビルだった。いったい普段は何に使っているのかもわからない外見をしていたが、中に入るとそこにはいくつもの工具と作業場があるのが確認できた。


いくつかの工具は康太も見たことがあるようなオーソドックスなものだが、中には康太も見たことのないような専門的な道具も用意してあった。


「お、来たな。お疲れさん。あんたたちが運搬チームか。派手にやったらしいな」


工房の奥にあるソファに横になっていた男性がゆっくりと体を起こす。おそらく昨日からここで待っていたのだろう、若干無精ひげの残る作業服姿が似合う中年男性は康太たちが来たのを確認して笑みを浮かべていた。


「どうも・・・あなたは?」


「ビデオの解体を命じられたもんだ。偽物だろうと本物だろうとバラバラにしろって支部長から言われててな」


今回が一応ビデオの運搬を目的としているために、どのような形であっても分解して消却するのが目的なのだろう。


前回のように受け渡しの場所に先回りされたのであれば中止にもできたかもしれないが、今回は目的を達成しているのだ。最後まで解体したほうが良いと判断したのだろう。


「邪魔が入るかもしれないってことは聞いてるから、ちゃんと守ってくれよ?んで、こいつを空けてっと・・・」


そういって男性は近くにあった工具で二回ほどアタッシュケースを叩くと、何重にもかけられていた鍵が一斉に開いていく。


魔術師に物理的な鍵は本当に意味がないよなと今更ながら実感しながら康太はその中身を確認していた。


「えっと中身は・・・?んー・・・なんだ、昔のバラエティだな。たぶん支部長か誰かの趣味だろこれ」


「中身わかるんですか?」


「ちょっとしたコツでな・・・索敵とまではいわないけど・・・解析の魔術の一種といえばいいか?こういうテープ関係のものしかわからないけどな・・・いつかCDとかDVDとか、ブルーレイなんかも解析するのが俺の夢でな」


解析の魔術にもいろいろと種類がある。康太の覚えている物理解析や術式解析とはまた別に、それこそ解析したいものによっていろいろと専門的なものがあるのだろう。


もしかしたらパソコンなどのプログラム解析などの魔術もあるのかもわからない。デジタルな魔術というのもなんとも違和感を覚えてしまうが、そういった魔術が開発されていないとも限らないのだ。


「本物かどうかはさておいて・・・解体していいんだな?」


「あぁ、やってくれ」


「了解。それじゃあやりますか」


男性が先ほどと同じように工具で二回ほどビデオテープを叩くと、テープはバラバラになってしまう。

康太はそれが分解の魔術であるということを一瞬で理解した。


「今の分解の魔術ですか?」


「お、よくわかったな。割とマイナーな魔術なのに」


「俺も覚えてますから。他に使った人を身内以外で見たことはないです」


「それも仕方ないわな。物体にしか効かないうえにパーツごとにばらすだけなんだから。あんまり便利なものとは言えない」


分解の魔術は魔術師の中では割とマイナーな扱いを受けているようだった。康太にとっては初めて覚えた魔術であるために思い入れ深い魔術なのだが、他の魔術師にとってはそうでもないらしい。


だが確かに、普通に考えれば部品ごとにバラバラにするだけという魔術なのだ。機械をばらすのには有効かもしれないが魔術師戦にもあまり使えず、かといって隠匿作業にも使うことはできない。


はっきり言って中途半端な魔術なのだ。完全に趣味の魔術といってもいいかもしれない。


「俺みたいな技術屋にはありがたい魔術なんだがな・・・魔術師で技術屋っていうのは案外少ないんだよ」


「そうなんですか・・・結構便利な魔術なんですけどね」


使っている康太からすれば、分解の魔術は地味に便利な魔術だ。常に活躍できる魔術ではないかもしれないが、覚えておいて損はないと思っていた。


現代において複数の部品によって構成された機械は数多く存在する。そういったものを無力化するのにも使えるし、最終手段として破壊するときにも重宝するのだ。


もっとも、魔術師にそのあたりを説いたところで別の魔術で代用できるといわれそうなものである。

地味で効果も限定的。そういった魔術を多く覚えている康太からすれば少し複雑な気分だった。


「まぁいいさ・・・さて・・・がわはいらないな・・・問題はこっちか」


そういって男性は専用の機械にまき散らされたテープを巻き取っていく。そして何やらテープ本体に処理をしているようだった。


「そのまま燃やしたりしちゃダメなんですか?」


「ぶっちゃけそれでもいいんだけどな・・・せっかくテープとしてこれだけ品質がいいんだ、適当に再利用するさ。中身は全部消しておくけどな」


映像記録用のテープであるために中身をすべて消してしまえば魔術的なものとは何のかかわりもなくなる。


そういう意味ではこの処理は適切なものだろう。


相手がどのように取るのかは不明だが。


そしてすべての処理が終わった段階で男性はテープだけを収納し、それ以外の部品はすべて捨てていく。


「はいよ、これで処理完了だ。このテープはもらっても?」


「一応中身だけ確認させてもらいたい。再生はできるか?」


「あぁ、ちょっと待ってろ・・・えっとどこに置いたっけかな・・・あったあった、今セットする」


そういうと映写機のようなものにテープをセットしていき、近くにあった壁に映すべく光を投射し始める。


数秒後に放たれていった光の中には完全な暗闇だけが映しだされていた。完全に中身がなくなっているのか、それとも黒く塗りつぶしたのか、どちらかはわからないがダミーであっても魔術的な何かがないことは明らかだった。


全ての中身が問題ないことを確認すると、全員は小さく息をついてから依頼が完了したことを察して安堵する。


「これで依頼完了か。今回は時間がかかっただけにちょっと疲れたな」


「移動時間が長かったからね。これからこういう依頼が増えるかもしれないなぁ・・・」


「えぇ・・・そうなんですか?」


「さっき協会に運んだ連中がまともな情報を持っていなければ・・・いや、仮に持っていても協会に反抗する勢力はつぶすことになるだろうね。特に実害が出ているのならなおさらだね」


協会としては魔術の隠匿に関して問題行動を起こすような組織は徹底的につぶすようにしている。


今回の敵も、そして判明した勢力も今までの行動からして明らかに危険な目的を持っていることは間違いない。


そういった魔術師たちを駆逐するような依頼が今後出てくることもあるだろう。専属魔術師だけでは手が回らなくなった時、各支部の戦力となるような魔術師が出張ってくるのは当然なのかもわからない。


「そういうもんですか・・・やだなぁ・・・またこいつらに引きずりまわされるのかよ」


「やったなトゥトゥ、平和な日常から危険な戦場へようこそ」


「アットホームで先輩たちも優しく教えてくれるわよ。頑張りましょう」


「ブラックの代名詞的なセリフはやめろ。っていうかお前らそういう依頼が来たら受けるのかよ」


「まぁ支部長から頼まれたら断れないからな。それに今までの連中が出てくるならしっかり始末しておきたいし」


「出たよ危ない発言・・・高校生が言うセリフじゃないぞ始末するって」


「いいんだよ、どっちにしろ支部長から依頼が出るなら俺らは全力で叩き潰す所存でございます」


「・・・あれ?ひょっとしてその中に俺も入ってる?」


倉敷の不安そうな言葉に康太と文はその肩に手を置いて親指を立てる。逃がさないぜと肩から伝わる二人の手の力が倉敷から逃げるという選択肢をなくしていた。


「俺の平穏は・・・俺の平和はいずこへ・・・」


「平穏?そんなもんは俺と出会った時点でお前の人生から消滅したんだよ」


セリフが思い切り悪役のそれだが、康太としては嘘は言っていないし強制はしていないのだ。あくまで自由意思に任せているのだからまだましだと本人たちは思っていた。


「というわけで依頼は完了しました。捕縛した魔術師たちはすでに協会に移送完了しています」


康太と幸彦がバイクとトラックを元あった場所に戻している間に、文と倉敷は支部長のもとに報告にやってきていた。


今回の作戦を行う上で支部長もほぼ徹夜で待っていたのだろう。支部長の部屋には強いコーヒーのにおいが漂っていた。


どうして自分たちの周りにはワーカーホリック気味の人間が多いのだろうなと文は眉をひそめながら今回の話の流れを報告していた。


「ありがとう、これだけの人数を捕まえてくれたのはありがたいよ。うちの情報担当のところに連れて行って今頃情報収集をしていると思う」


「そうですか・・・あの・・・一応確認しておきたいんですけど・・・情報収集っていうのは普通の尋問ですよね?」


「え?あはは、そうか、そうだね、君はそういう心配になるか。大丈夫、君の相方みたいに血なまぐさい聞き方はしないさ。まぁそっちの方が確実っていうのはわかってるんだけどね・・・そういうことをできるだけの胆力はなかなかないさ」


情報収集というとどうしても拷問というイメージの方が強くなってしまっている文としては、支部の人間がそういうことをしているのではないかと気がかりだったのである。


もっともそんなことはなく、もっと平和的な方法で行っているようだったが。


「ちなみに支部ではどんな尋問を?」


「簡単な話さ、自白剤と魔術による軽い催眠状態にしてから相手に知っている情報を話させる。法には触れるけど問題ない」


「それって・・・後遺症とかは」


「ある程度残るけど、日常生活に支障はないしある程度すれば治るものばかりさ。僕らはこういうほうが向いているよ」


さも当たり前のように法に触れる方法を提示するあたりさすがは魔術師というべきだろうか、倉敷は若干戦慄を覚えながらも、康太の行う拷問といったいどちらがましなのだろうかと悩んでいた。


直接痛みや苦しみを与えるか、痛みこそないものの若干後遺症が残る薬物投与。どちらかと言われるとどちらも選びたくないのだが、相手にそれほどの自由は与えられていない。


「それで、バズさんから言われたんですけど、これからこういう依頼は増えていくんですか?それこそ敵を捕縛するみたいな」


「んー・・・こういうことは協会の魔術師だけで解決したいっていうのが本音なんだけど、協会の魔術師だけじゃ手に余るっていうのが現実なんだよね・・・だから申し訳ないんだけどこれから度々こういうことはあると思ってほしい」


やっぱりそうなるかと文は小さくため息をつく。最近康太と文、そして倉敷は支部の中でも常用の戦力となりつつある。


協会の専属魔術師ほどに頻度が高いというわけではないが、戦闘に関わり、なおかつ重要度の高い依頼には必ずと言っていいほどに引っ張られてきている。


中には康太が自分から首を突っ込んだものもあるが、協会からの依頼を受諾する率が増えてきているのは間違いない。


「そうだ、その代わりといっては何だけど、ルィバズを今後君たちと一緒に行動させようと思ってるんだよ」


「バズさんを?」


「今回、話を聞く限りかなり相性がいいみたいだったからね。彼は比較的協会の仕事を受ける率が高いし、何より君たち・・・というかブライトビーの身内だ。一緒に行動しやすいだろう?」


「それは・・・まぁそうですけど」


今後戦闘が増えていく中で幸彦が一緒に来てくれるというのは非常に助かる。何せ彼の戦闘能力はかなり高いのだ。


小百合のそれと比べても引けを取らない。それどころか小百合よりも高い戦闘能力を有している可能性だってある。


そう考えればありがたい申し出である。


「でもあの人が一緒に動けないことだってありますよ?特にバズさんは社会人なんですから」


「そのあたりは事前に通告して合わせてもらうさ。何も突発的に出動してもらうってことがあるわけじゃない。ある程度こっちで情報を集めて、作戦を練ってからちょっと襲撃とかしてもらう程度だよ」


コンビニ感覚で襲撃を指示するあたり支部長もなかなかに毒されているなと文は小さくため息をついていた。


「今後、本部とも連携して例の組織を本格的に壊滅に追い込んでいくことになる。君たちにもその作戦に参加してもらう可能性は高いから、そのことだけ頭に入れておいてくれ」


「・・・本部からの直接指名があるかもってことですか」


「そういうことだね。良くも悪くも君たちの名前は本部にも知られているから・・・向こうも信頼できる人間を用意したいってところさ。特にブライトビーは副本部長に目をかけられているみたいだからね」


身内に敵がいる可能性がある今の状況からすれば、可能な限り信頼できる人間を用意したいというのが本部、支部の中での共通認識となる。


康太が本部の副本部長に多少信頼されているということもあり、康太に依頼が直接来るということも十分考えられる。


「今回捕縛した人数でも、全然足りませんか?」


「相手の規模がわからない以上は何とも言えないね・・・どういう一派なのか、今回のこれでわかるといいんだけど・・・」


相手の規模も目的さえもわかっていない状況では取れる手段は限られる。


今回捕えた魔術師の中に情報を知っている者がいれば御の字なのだが、そう簡単にはいかないだろうと支部長は考えているようだった。


誤字報告を15件分受けたので四回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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