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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十五話「釣りをするのも大博打」

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爆発

障壁を砕いて強引に中に入ろうとするその姿は恐怖以外のなにものでもなかった。


魔術師はとっさに攻撃しようとするが康太はそれよりも早く行動していた。


障壁に絡みついている投網を切り裂いて人が通れるだけの道を作り出すと槍を振るいながら障壁の内側に入り込みその魔術師の体めがけて斬りかかる。


障壁の内側に入られた時点で魔術師にできることはかなり限られてしまっていた。炎を使えば自分にもダメージが入りかねないため、魔術師は近距離用の電撃の魔術を発動する。


電撃が康太に向けて放たれるが、康太は全く止まらなかった。槍を強引に振るい、魔術師の足を斬り付けると噴出の魔術で加速された回し蹴りを魔術師の腹部へと叩きつける。


自らの障壁に叩きつけられる形で蹴り飛ばされた魔術師は、この距離は危険だと判断し自らの体に電撃を纏わせながらなんとか距離を取ろうと障壁を新しく展開しながら走る。


だが遅い、康太の機動力に対して相手の速度はあまりにも遅かった。


無理もない、康太の先ほどの斬撃によって足を負傷しているのだ。満足に走ることもできなくなってしまっているのである。


康太は障壁を迂回する形で回り込み、電撃を纏ったままの魔術師めがけて再現の魔術による槍の投擲とウィルの体を腕に集め噴出の魔術によって加速した拳を叩きつける。


体に電撃を纏わせている状態で、直接肉弾戦を行えばダメージを受けるということはわかっているはずなのに、康太は全く止まらない。


魔術師は混乱していた。なぜこの男は電撃を受けても全く止まらないのかと。


今まで彼が戦ってきた魔術師は電撃を受ければたいてい動きを止めた。魔術の発動すらも解除され、その隙にいくらでも攻撃することができ、一度間を置くこともできたのだ。


だが康太は止まらない。電撃を受けると止まるどころかさらに加速して攻撃してくる。


常軌を逸したその行動に、魔術師は完全に動揺してしまっていた。


康太は電撃に対しては文との訓練ですでに慣れきってしまっているのだ。電撃を受けた状態でも攻撃できるような工夫もしているし、何よりウィルが可能な限り電撃を地面に流してくれているため康太にはほとんどダメージが入っていない。


噴出の魔術によって加速された打撃と、槍による斬撃が魔術師に向けて襲い掛かる。


近接戦において康太の攻撃に反応できるような魔術師は稀有だ。少なくとも康太の戦闘経験の中で近接戦に持ち込んでまともに攻撃に反応できた魔術師は数えられる程度しかいなかった。


魔術師が苦し紛れに炎を康太に向けて放つが、康太はそれを横に回避して魔術師に向けて飛び蹴りを放つ。


全体重を乗せた蹴りに、魔術師は地面を転がるように弾き飛ばされる。


康太は幸彦の方に視線を向ける。向こうは向こうで激しい戦闘が行われているようだった。先ほどから轟音が響いている。手を貸すならばあちらの方が先決だなと康太は再び倉敷の方に視線を向けた。


水を操って相手を拘束しようとしているが、土の攻撃に加え氷の刃が飛んできていることでうまく相手に攻撃する暇がないのだろう。移動しながらほぼ防戦一方になっているように見えた。


あれだけの攻撃に耐えている倉敷はさすがだと言わざるを得ないが、このまま見ているのもまずいなと康太は眉を顰める。


早いうちにこの魔術師を倒してどちらかの援護に回ったほうがよさそうだと康太は槍を構える。


目の前の魔術師は足を負傷しているということもあって何とか康太から離れようと炎を放つが、康太には全くの無意味だった。


機動力の高い康太にはただの炎では当てられない。広範囲の炎を放つしかないのだが、それだけの攻撃を使えば当然自分も巻き込まれる。距離を詰められた時点で取れる手段が激減してしまったのだ。


もっと距離がある状態で高出力の魔術を放っていれば状況も変えられたのかもしれないが、今となっては後の祭りである。


魔術師はこのままでは負けるとわかったからか、何やら覚悟を決めたようだった。体内にある魔力がみなぎっていくのが康太にも見て取れた。


その掌に小さな炎の塊が作られるのがわかると、康太は即座に警戒態勢に移行し、行動を開始した。


次の瞬間、康太めがけて放たれた小さな炎の塊は、周囲に轟音と炎と衝撃をまき散らしていった。


爆撃ともいわれる炎属性の魔術の中でも高出力を誇る魔術。消費魔力も多く、攻撃範囲もそれなりに広いが周囲に及ぼす影響が多いために多用する魔術師はあまりいない。


肉薄するほどの至近距離でこのような魔術を使えばどうなるか、その結果は火を見るよりも明らかだった。


魔術師は自らが放った爆撃の魔術の衝撃波によって吹き飛ばされ、地面を転がっていた。障壁を展開して身を守ろうとしたがそれでも防ぎきれるものではなかったのだろう、その体にはいくつか火傷がある。


致命傷とはいかずとも、多少康太にダメージを与えることはできただろうかと魔術師が体を起こそうとした瞬間、その胸部に激しい衝撃が走る。


「ってぇな・・・びっくりしたじゃねえか。鼓膜破けるかと思ったぞ」


胸部に加えられた衝撃の正体が、康太の着地であると気付くのに時間はかからなかった。


康太は相手の魔術が放たれた瞬間に真上にジャンプし、噴出の魔術を使って一気に魔術の効果範囲から離脱していた。


もっとも衝撃と音だけは防げず、かなり上空まで投げ出された上に少し耳が聞こえにくくなってしまっていた。


着地と同時に魔術師を組み伏せ、その体にダメージを与えると、康太はその拳を振り上げる。


「自滅覚悟とは恐れいった。でもその判断は少し遅かったな」


右腕に集中したウィルの巨大な拳が振り下ろされた瞬間、魔術師は自らの意識を手放していた。


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