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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
五話「修業と連休のさなかに」

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肉体強化の違い

肉体強化における分類は大きく分けで四つ存在する。


肉、骨、血液、五感、これらをそれぞれの属性に分けることでより高度で精密、なおかつ高効率の強化が可能になる。


とはいってもあくまで肉体強化、人間の限界を越えられるというものではない。飽くまで効率よく、なおかつ精度の高い強化を行えるというだけのものだ。


それでも各属性に分かれた強化というのはそれだけで有用だ。特に強化というのは何もその能力を高めるというだけではない。


分類的には強化に含まれるが、治癒を行う力もまた強化と似た力を含んでいるものが多い。


例えば傷を負ったときに血液の流れを操作、そして肉体の細胞分裂を操作することで通常よりもずっと早く治癒することができる。


もちろん人間の回復速度を大きく上回ることはできないが一時的な応急処置としては上等な部類に入るだろう。


真理が使えるのはその中でも肉に対する強化。つまりは筋力などの強化だ。


先程ただ握っただけの拳が力強く感じられたのはそういうわけがあったのだろう。


「ただ肉体強化というのは良くも悪くもリスクが高い。なにせ自分の体に直接魔術を使うわけだからな。お前も何度か失敗したことがあるんじゃないか?」


「・・・はい、肉体強化はちょくちょく練習してますけど、たまに吐きそうになります」


康太はエアリスによって肉体強化の魔術を教えられ、その魔術の練習を欠かさずに行っているが、肉体強化というのは難易度が高い。


単純に自らの体の能力を強化していると表現すれば聞こえはいいが、その実その効果は本来人間にとっては毒にもなりえるのだ。


人間の体というのは絶妙なバランスを保つことで成り立っている。肉体強化という魔術はそのバランスをわざと崩す魔術だ。


無属性の強化の魔術はその均衡を保ちながら全体的に強化をかける。だが属性持ちの強化の魔術はそれらを崩しながら自らに強化をかける魔術だ。当然扱いを間違えれば人間の体は大きな負担を強いられる。


康太は無属性の強化の魔術を行う際に必ず一日に時間制限を設けていた。それ以上行うと体が負荷についてこれないからだ。


もっとも無属性の強化においてそう言った反動が来ているのは康太の未熟さゆえである。


本来であればバランスよく強化することで体の負担をほぼゼロにできるはずだが、康太はまだそのあたりの調整が上手くいかずにアンバランスな強化しかできず体の節々に負担が出ているのだ。


この辺りは何度も練習を重ねることで精度を高め負担のないような肉体強化を行うほかないのである。


「無属性の強化で気分が悪くなってるってことは、それだけムラが生じてるってことですね・・・まだまだ練度が足りないってことでしょうか?」


「そうだろうな、普通無属性の強化というのは平滑化されてそこまで負担は無いはずだ。その分出力が低いのが欠点だが」


無属性の強化は全体的に強化するタイプでその分出力自体は他の属性に比べると少なくなりがちだ。だからこそ比較的安全に強化することができるのである。


もっとも康太の場合未熟であるが故にその安全な強化でさえも体に不調をきたしているわけだが。


「属性持ちの肉体強化を教えるのは無属性の強化が満足にできるようになってからだな。それまでは各属性の基本の魔術を覚えることだ。何事も基本が第一だからな」


「師匠がそれ言いますか?基本の魔術とかほとんど無視してるのに」


真理の言葉に余計なことを言うなと小百合はため息を吐きながら額に手を当てていた。


元々無茶苦茶な魔術師であるとは思っていたが、どうやら小百合の師匠の方針もあったのだろうか、彼女は属性魔術においては無茶苦茶な修得方法をしてきているようだった。


その結果なのか、それとも小百合が望んだからなのか彼女の魔術はその全てが破壊に通じている。


「とにかくだ、お前はまだ無属性の魔術を中心にしろ。それらがまともに扱えない今他の属性を手に入れたところで役には立たん。いいな?」


「了解です。それにそう言うのが手に入るってだけで上出来ですからね」


康太にとっては属性魔術を手に入れることができるというのはある意味僥倖だと言えるだろう。


元より魔術において小百合の教えてくれる無属性の魔術だけが頼りだったのだ。これからも主力は無属性、そのサポートとして他の属性を使うことはあるかもしれないがそれらもあくまで補助の役回りになりそうだ。


何より自分の戦い方は魔術師のそれとは言い難い。小百合が自分に破壊の魔術を教えているのだから必然的に康太は小百合の魔術をそのまま引き継ぐことになるだろう。


向き不向きはさておいて、それしか康太にはできないのだから。


「今度のゴールデンウィークで一つ風の属性の魔術を教えてやれ。基本のきの字くらいは触れておいて損はないだろう」


「え?今度の旅行って羽休めじゃないんですか?」


「バカを言うな、せっかく羽を伸ばせるんだ。お前の実力を伸ばす方にも力を注がなくてどうする」


今回の旅行は商談含め弟子たちの羽休めも含まれていた。小百合の事だからある程度修業は行うとは思っていたが新たな属性を覚えるための旅行になるとは思っていなかったのである。


適性を調べたのは少し早まったかなと思いながら康太は項垂れてしまう。


もちろん楽しみは楽しみだ。自分が覚えているのは良くも悪くも魔術らしくないものばかり。ようやく漫画や小説などで出てくるような類の魔術を扱えるかもしれないと思うと康太は僅かに心が躍っていた。


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