表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
五話「修業と連休のさなかに」
108/1515

属性の振り分け

「なるほどな・・・風と火か・・・」


康太と真理はエアリスの修業場から帰る途中で小百合の店にも寄っていた。どんな過程があろうと師匠である小百合に直接報告することが自分たちの義務であると思い夜遅くにもかかわらずこうして足を運んだのである。


康太の適性のある属性を聞いたことで小百合は口元に手を当てながら何やら悩み始めていた。


康太がどのような属性に対する適性を持っているかによって今後の教育方針も変えていくつもりだったようで彼女は随分と悩んでいる。


「風に対しては比較的良い適性を、火に関してはそれなり程度のものがあります。正直に言えば無属性と風を優先した指導を施した方がいいかと思います」


「なるほどな・・・風に関してはお前達が教えてやれ。その方が効率がいい」


風の魔術は兄弟子である真理や文も教えることができるという点から分割するようだ。火の属性に関しても同じく真理が教えられるだろうが、どのような指導体系を取るのだろうかと康太は眉をひそめていた。


「ところで、師匠はどんな属性の魔術を扱えるんですか?今まで無属性の魔術しか使ったところ見たことないですけど・・・」


「私か・・・私はひとまず無属性が得意なのはお前と同じ。あとはほとんどと言っていいほど適性は無くてな。各属性の魔術を数個ずつ覚えている程度だ」


適性がない。それはつまりどの属性の魔術も無属性のように流暢には扱えないという事でもある。


属性に対する適性というのはつまり覚えやすさであり威力の強弱であり精度の高低に直結する。小百合は無属性以外の全ての属性に対しての適性が低いのだという。


「そう言う意味では、お前は私よりは優れた魔術師になれるという事だ。ますますお前を本気で鍛えなければいけないな」


「嬉しいやら悲しいやらわかりませんね・・・じゃあ師匠が覚えてる火の魔術を俺に教えてくれるんですか?」


せっかく火の魔術を覚えているのであればそれを伝授してもらえるとばかり思っていたのだが、康太の言葉に対して小百合はあまり乗り気ではないようだった。それどころか近くにいる真理でさえも複雑そうな顔をしている。


「そうしたいのはやまやまだがな・・・私が覚えている火の魔術はお前にはまだ難易度が高すぎる。せっかく適性があるんだ、まずは初歩から学ぶといい」


「はぁ・・・じゃあ火の魔術も姉さんに教わったほうが・・・」


「中盤以降ではそれもいいかもしれないが、初期に関してはおすすめはしないな。こいつの火の魔術は私のと同じくらい危険なものだ。火の魔術の基礎を学ぶならエアリスのところで学ぶといい」


あいつに頼むのは癪だがなと言いながらもどうやら小百合はエアリスのことを高く買っているようだった。


本来なら自分が教えるべきことを他人に頼むのだ。恐らく彼女なりに何か考えがあるのだろうが小百合らしくない一面である。


「ちなみに師匠と姉さんは火の魔術で言うとどんな魔術を覚えてるんですか?」


「私の魔術はすべて破壊に通じていると言ったはずだ。属性が変わってもそこは変わらない」


「あー・・・まぁ師匠のはそうでしょうね」


小百合の魔術はすべてが破壊一色に染まっている。無属性のものであろうと風属性のものであろうとそのあたりは全く変わらないのだろう。


「私の魔術は比較的おとなしいものが多いですよ、火の魔術であれば肉体強化なども含まれますね」


「・・・?火の魔術なのに肉体強化なんですか?」


火の魔術というとどうしても炎を発生させるとかそう言うイメージしか湧いてこない。だがその中で肉体強化が入ってくるというのはどういうことなのだろうか。


よもや体に炎を纏わせるという意味だろうかと思っていたのだが、そう言えば肉体強化の事柄についてまともに説明していなかったなということを思い出したのか、小百合と真理は顔を見合わせた後で説明を開始してくれる。


「いいですか?肉体強化というのは無属性のものもあれば属性持ちのものもあります。属性というのがあらゆる魔術を効率化させた結果であるというのはすでに知っていますね?」


「はい、風を起こすにしろ火を起こすにしろ、効率的に発動するために属性の要素を取り入れたのが属性魔術ですよね?」


魔術というのは基本的に大抵の事は無属性でもできる。火を起こすことも風を起こすことも、方法さえ問わなければ無属性の魔術で事足りる。


だがそれらを行うのは無属性では到底効率が悪い。そこで自然の力も借りたりその力を応用したりすることで属性の要素を取り入れ効率よくしたのが属性魔術だ。


「そう、つまり肉体強化も強化したい部類や場所によって属性分けすることで、より精度が高く効率の良い強化をすることができるというわけです」


もちろん無属性の強化でも問題ないのですけれどねと付け足しながら真理は自分の手のひらを握って見せた。


一見すれば何も変わらないただの拳だ。だがその拳に妙な違和感を康太は覚えていた。


女性らしいしなやかで小振りな拳のはずなのに、その握りこぶしが妙に力強く感じられたのだ。


「肉体強化において有名なのは火属性、これは体を強化する際の分類分けに起因します」


「肉は火、骨は土、血液は水といったようにそれぞれ強化や操作する場合に属性を振り分けることで効率よく強化や操作が行えるというわけだ。こいつの場合は火属性は肉体の強化や操作を行っているな」


つまり強化する部位によって属性を分けることでより効率よく強化を行っているという事らしいのだが、そのあたりは所詮肉体強化だ。どんなに強化したところで限界があるためにそこまで有効というわけでもないらしい。


もっともある程度は便利だからそれなりの数の魔術師が使うらしいが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ