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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十四話「旅行で斬り捨てるもの」

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海の楽しみ方

「ぷはぁ!やっぱ深くまで潜るのはきついな」


水の中に深く潜っていた康太は水面に勢いよく顔を出すと自分の肺活量が以前よりもだいぶ上がっていることに少しだけ驚いていた。


基本的に陸上部ということもあり、心肺機能は比較的高いほうだろうが、魔術師として活動し始めてから動いてばかりのこともあったためかなり長く息を止められるようになっていた。


身体能力強化の魔術を使えば、おそらくさらに心肺機能は強化されることだろう。とはいえやはり限度はある。


「随分深くまで潜ってたな。良く息が続くよな」


「ふふふ、努力の結果よ。どっちかっていうと耳抜きのほうが面倒だった」


水圧によって耳に違和感を覚えるのだが、水の中に深く潜るような経験が少ないために耳抜きするのに手間がかかるのである。


今まで水の中で戦った経験はないため、そのような技術は身についていない。というか水の中で戦うようなことがあれば間違いなく康太は役立たずになるだろう。


物理系攻撃と現象系攻撃のほとんどが水を弱点としているのだから。


そんなことを考えて戦いのことを考える必要がないことを思い出して康太はゆっくりと水の中に沈んでいく。


浮力に逆らいながら深く、深く、太陽の光が水越しに康太の体を照らしながらきらめいているのがわかる。


康太はその光景を見ながら、自分のもとへと潜ってくる文の姿を見つけていた。


沈んでいった康太を見つけて慌ててやってきたのか、それともただ単に康太の隣にいようとしているのか。


そのどちらかは彼女の表情を見ればすぐに理解できた。焦った様子はなく、落ち着いた表情で康太の隣まで潜ってきている。


魔術を使って水流を操作しているのか、康太が潜るよりもずっと楽に潜ることができているようだった。


水属性の魔術を使えるとこういう時に楽だなと思いながら康太は文の方を見ながら小さく息を吐く。


泡になって上の方に上っていく康太の息を見て、文は薄く笑って康太の手を取った。


潜ってないでさっさと上に上がって遊びましょう。


文はそういっているかのようだった。きっとそのように思っているのだろう。


文に誘われて水面から顔を出すと、待ってましたと言わんばかりに康太のもとへとビーチボールが投げ込まれる。


「ほれ!潜ってばっかじゃつまんないだろ!ビーチバレーやろうぜ!」


「ちょっと待ってろよ!潜ったばっかで、まだ息が整ってないんだよ!」


康太は深呼吸しながら頭にぶつけられたビーチボールを回収して思い切り投げる。


水の中に入っているために非常に動きにくい。そんなことをやっていると康太は視界の隅に倉敷の姿を発見していた。


「あ、倉敷。お前も来てたのか」


「あぁ、お前らか。沖縄って言ったら海だろ」


「やっぱ中に入れてるのが水関係だとこういうとこにくると調子よくなったりするのか?俺のは雷だから違いがわからないんだよ」


「そんなに変化はないって。ぶっちゃけ俺のやつはどっちかっていうと淡水系だからマジで関係ないと思うぞ?」


精霊に淡水系、海水系などの違いがあるのだろうかと康太は眉を顰めるが、本職の人間がいうのだから間違いないのだろう。


「ていうか鐘子、お前潜るためだけに水の流れ変えるなよな?」


「あ、離れててもわかったんだ。水に関してはやっぱりさすがね」


「あんだけ派手に動かしてりゃあな。っていうかあんまり話してると不審がられるぞ、さっさと戻っとけ」


康太たちと倉敷のつながりは実際のところほとんどないに等しい。康太と文は偽の親戚関係を結んでいるからいいとしても、倉敷に関してはクラスも違えば部活も違う、はっきり言って全く接点がないのだ。

そんな人間と長く話していれば当然不思議がられるだろう。


「んじゃまたな。なんかあったら連絡する」


「何もないことを祈るよ」


精霊術師として倉敷は非常に頼りになる。何かあったときは連絡する。康太から頼られているというのは倉敷本人からすれば喜ぶべきことなのか微妙なところではある。


まったく頼りにされないよりは頼られたほうが嬉しくはあるのだが、康太が頼るということはつまりそれだけ厄介なことであることも多いため複雑な心境であるらしい。


「おーい!早く戻って来いよ!」


「わるい!今戻る!」


「戻ったほうがよさそうね、早く戻りましょ」


さすがにこのまま海に浮かんでいても仕方がないと康太たちは足早に、というか急ぎめに浜まで戻ることにした。


海が綺麗ということもあって砂浜もきれいだ。気温も高いために非常に熱を持っているが、それもまた沖縄の醍醐味と思うべきだろう。


「っていうかそのボールどっから持ってきた?」


「家から。こういうのがないとテンション上がらないだろ?」


青山は本格的に海を楽しむつもり満々であるらしい。


用意周到なところは見習わなければいけないなと、康太は感心していた。


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