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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十四話「旅行で斬り捨てるもの」

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恋愛の根源

「康太、ちょっといいかしら?」


「お?どうした文」


飛行機の移動で生徒たちが落ち着きを取り戻し、徐々に暇つぶしの時間に移ろうという頃、康太の座っている席に文がやってきていた。


「もし海に行くタイミングがあったら時間を合わせようと思ったのよ。前にプール行ったメンバーで。どう?」


「あぁ、つなぎを任されたわけか。俺はいいぞ。二人は?」


「俺らもいいぞ。彼女持ちがいるけどな」


「それは気にしないでいいわ。むしろこっちとしてはそれが目的っぽいところもあるし」


島村の彼女はかつてプールに一緒に行ったメンバーの一人だ。おそらくは一緒にいる口実として、康太たちのメンバーを利用するつもりらしい。


「まぁそのあたりは自由行動の時になると思うぞ。詳しく決まったら連絡する」


「わかったわ。それと・・・あんた大丈夫なの?すごく魔力少なくしてるけど」


文は声を小さくして康太に耳打ちする。おそらく康太が意識的に魔力を少なくしていることが気がかりだったのだろう。


こんな時まで索敵を怠らないとは魔術師の鏡だなと康太は感心しながらも首を横に振る。


「今回俺は魔術云々は忘れることにしたんだ。たまには一般人に戻って羽を伸ばしたっていいじゃんか」


「・・・まぁあんたがいいなら構わないけどね。それじゃ三人とも、よろしくね」


小声での会話を終了させて文は早々にその場を去っていく。おそらくは自分たちのグループに戻ったのだろう。


飛行機の中で話すことでもなかったように思えたが、逆にこういう時だからこそ話しやすかったのかもわからない。


「なんだ内緒話して、なんかあったのか?」


「いや、あいつのところの班の人間に手を出すなよって釘刺された。俺みたいな無害な人間を前になんであんなに警戒するかね」


「あはは、身内から見たら危険そうに見えちゃうんじゃない?少なくとも僕の彼女に手を出すのはやめてよ?」


「そこまで鬼畜じゃねえって。っていうかそもそも手を出すことはしないだろ、一応修学旅行だぞ」


いくら旅行とはいえ学校行事だ。生徒同士での不純異性交遊を教師陣が見逃してくれるとは思えない。

もっとも隠れてやろうと思えばいくらでもできるのだが、そのあたりは今は置いておくことにする。


「畜生、彼女持ちは余裕だよな・・・二人っきりにしてやるのやめようかな」


「なんだい、彼女持ちがうらやましいなら彼女を作ればいいじゃないか。青山なら比較的簡単にできると思うけど?」


「あのな、そういうのはできるやつだからこそ言える言葉なんだよ。俺らみたいなモテないグループにそんな言葉をかけてみろ、次はその口を縫い合わせるぞ」


青山にとって彼女ができないというのはなかなかに難題であるのか、不満そうな、不機嫌そうな表情を浮かべながら島村をにらむ。


嫉妬と怨嗟がこもったいい視線を向けるじゃないかと康太は感心してしまうが、口が裂けても『文が俺の彼女です』とは言えない空気だった。


もともと親戚設定にしているために言うつもりはないのだが、目の前で彼女がいなくて荒んでいる友人が愚痴を言っているのに突き放すようなことは康太にはできなかった。


「青山なんて顔は悪くないんだからちょっと気をつければできる気がするけどね・・・下心見え見えなところとか直せばすぐにできると思うよ?」


「馬鹿言うな、下心なくして女と付き合えると思ってるのか?下心があって初めて男女の仲は生まれるんだろうが」


「ごもっともだし、反論の余地はないんだけどなんだかすごく複雑な気分だよ。恋とか愛とか全くないの?」


「ないな。あるのはただ性欲のみ。互いに求めてるからこそこういう関係は成り立つんだろ?互いに求めてなきゃただ金目的かストラップ感覚でつけていたいだけの馬鹿だ」


性欲に身を任せて付き合うのが良いのか、どのような形でも付き合うのが良いのか。正直どちらともいえないのだが、青山の言うことは地味に真理であるがゆえに二人はどう返したものか迷ってしまっていた。


良くも悪くも直線的な奴だなと思いながらも、康太はとりあえず大きな声を出さないように青山の口をふさぐ。


「わかった、わかったから一度トーンを下げような?飛行機の中で堂々と性欲云々話すなよ」


「んぐ・・・すまん・・・でも実際そうだろ?島村も性欲ありきだよな?」


「なんだか全力で同意したくないんだけど・・・でもまぁ・・・そういう気持ちがないと言えばうそになるよね。やっぱり・・・まぁそういうことはしたいよね」


高校生の恋愛というのは良くも悪くもお遊び感覚が抜けないところがあるだろう。康太のように魔術師としての感覚から将来を見越した付き合いをするというのはかなり特殊な部類である。


お試しで付き合ってみる、互いの相性を確認するために付き合ってみる。そういうことを高校生であれば普通にしていても不思議はない。


良くも悪くもまだ未熟、これから大人になっていくうえでの通過儀礼のようなものであるととらえている者も多くいるのだ。


そういう意味でも康太は少々異色だろう。すでに康太の思考や行動は大人のそれに限りなく近づいている。


それが魔術師としての経験に基づくものなのかはわからないが。


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