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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十三話「追って追って、その先に」

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防御の達人

「クラリス、君は防御は教えていないのかい?」


「私が教えているのは身の守り方だけだ。防御を教えているつもりはない」


身の守りと防御はいったい何が違うのだろうかと支部長は首をかしげているが、実際に訓練を行っている者たちからすればその言葉の意味は何となく理解できていた。


小百合が教えているのは戦い続けるため、気を失わないように身を守ること。


今回必要なのは相手の攻撃を防御すること。この二つは似ているようでまったく異なるものなのである。


「誰かに守ってもらうだけじゃなくて、自分でも守る術を身に着けたほうがいいよね・・・時間もないから付け焼刃かもしれないけど」


「支部の中で防御が上手い人って言ったら・・・?」


その場の全員の脳裏に何人かの魔術師の姿が思い浮かぶ。その中には今回の作戦に参加するアマネの姿もあった。


「アマネさんの防御能力ってどれくらいなんですか?前に師匠と戦って逃げ切ったってことは聞いてますけど」


「彼はそうだね・・・僕も実際戦ったところを見たことがあるわけじゃないんだけどかなり守りは固いよ?クラリス、君の意見は?」


「・・・」


「・・・彼が嫌いなのは知ってるけど、評価くらいはしてほしいんだけどな」


「・・・あいつの防壁は壊すのに少し苦労する・・・一度・・・私の攻撃を完璧に止められた」


小百合の言葉に支部長が目を見開いた。小百合の攻撃がどれほどの威力を持っているのか、支部長はその身をもって知っているのだ。


かつて支部長も小百合と戦ったことがある。支部長は何とか五体満足で逃げ切ることに成功している数少ない生存者の一人ではあるが、五体満足だっただけでいくつも負傷したし、その中には重傷といえるレベルの傷もあった。


小百合の攻撃はそれだけ避けにくく、防ぎにくい。その攻撃を一度とはいえ完璧に防いで見せたというその実力。支部長はアマネの評価をかなり上方修正していた。


「一度とはいえ、君の攻撃を防ぐっていうのは並大抵のことじゃないね・・・なるほど、防御に関しては一家言持ちということか」


「あいつの防御なら銃弾程度は軽く防ぐだろうな。場合によっては戦車の一撃も防ぎかねん」


「・・・さすがに冗談だろう?」


「それなりの殺意をもって攻撃したんだが・・・完璧とは言えずとも防がれた。あの威力を防がれるのであれば戦車の一撃でも同じだろう」


戦車が放つ砲弾、いや基本的に現代における弾丸や砲弾というものの原理は同じようなものだ。


火薬などの力を使って金属の塊を打ち出す。威力を出すのに必要なのは速度と質量。この二つさえ満たされれば戦車がなくともそれなりの威力を出すことは可能だ。


康太も使える蓄積の魔術を使えば似たようなことはいくらでもできる。実際康太は炸裂鉄球や槍に仕込んだ大蜂針などに蓄積の魔術を施すことで射出し攻撃している。


もともと蓄積の魔術は小百合から教わったものだ。その使用、そして利用法は康太よりも優れているだろう。


その一撃によって戦車の一撃を再現したとしても不思議はなかった。


そして、それだけの威力をもってしても、完璧ではないにせよ防がれた。その事実が、小百合のアマネに対する苦手意識をさらに強めているようだった。


「防御に関しては装甲車以上・・・城壁みたいだね・・・いやはや・・・うちの支部のメンバーは頼もしい限りだよ・・・」


「とはいえ、あいつは広範囲に防御を展開するのが苦手らしい。複数人を守りながらではいずれ綻びが出るぞ」


「具体的にはどれくらいの範囲かな?」


「十数メートル程度の防御で若干綻びができた。おそらく十メートル前後が万全に守りを固められる範囲なのだろう」


十メートル前後。それでも十分すぎるほどに広い範囲をカバーできることになる。


通常防御用の障壁は自分の身の回りに展開することが多い。攻撃と自分の体の間に板状に展開したり、自分の体の周りに球状に展開したりとある程度距離と面積によって強度や精度などに変化が生じる。


たいていは自分の体から一メートル、遠くとも三メートル程度だが、アマネはその三倍以上の距離まで障壁を展開してもその強度は維持できるらしい。


小百合の攻撃を防ぎ、なおかつ逃げ切ったその実績は伊達ではないということである。小百合が苦手意識を持つのも納得の実力だ。


「彼に防御を習えばこの二人でも多少は身につくかな?」


「さぁな・・・あいつに弟子はいるのか?いないのであればものを教えるのも難しいと思うが」


「確か一人いたはずだよ。一度連れてきてたのを覚えてる。ちょっと確認ついでに呼び出そうか、まだ協会内にいるかもしれないし」


土御門二人の防御ということもあり支部長はかなり本気で二人の防御強化を考えているようだった。


小百合に預けるよりもアマネに預けたほうがよかったのではないかと思ってしまうが、そのあたりはもはやいまさらというべきだろう。


アマネの防御能力、そして土御門の予知が加わればかなり強力な武器になることは容易に想像できた。


この場にアマネがまたやってくるということもあって小百合は不機嫌そうだったが、土御門の二人は小百合の攻撃を防ぎきるほどの人物から魔術を教われるかもしれないという事実にかなり期待しているようだった。


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