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幽霊の頼み

季里幸紅流と、幽霊、橘愛奈。偶然出会ったと思われたこの二人。しかし、すでに運命の歯車は回り始め、止めることなど、出来ない。今、バラバラの運命が複雑に絡み合ってゆく


「たく、今日も遅くなっちまった」


夜9時。大学仲間と色々喋っていたらいつの間にか帰りの遅くなった紅流は急いで帰路についていた。街灯と月明かり、今この道を照しているのはこの2つの明かりだ。先の見えない道が何やら不気味に思えてくる。


向こうにアパートが見えてきた。築何十年か分からないようなボロいアパートだ。あれが俺んち。アパートに着き二階にある自分の部屋に行こうとしたとき、


「あれ? 」


ふと目を移した自分の部屋。窓が開いている。そしてそこから、月明かりに照された一人の女性が......


「だ、だ、誰だ? 」

俺はあんな綺麗な人知らないが、一瞬見とれてしまった。色々と考えを巡らすが、とりあえず、紅流は急いで自分の部屋にダッシュ! 古い階段がギシギシと嫌な音を立てる。部屋の鍵を開けて、すごいいきおいでドアを開けた。


「誰も、居ない......」


そこには誰も居なかった。疲れているのだ。よくよく考えれば分かることだ。そう解釈し寝るために布団を敷く。そこで気づいたことがあった。窓が、開いている。朝俺はこの部屋の戸締まりはキッチリ確認した。まさか、本当に?バカな......もう、寝よう。怖いからじゃないぜ?眠いからねる、これだけのことだ。布団に潜り込む俺。頭まで掛け布団の中に入りおやすみなさい。


「今何時だ?」

俺は目を醒ましてしまった。最悪だ。再び意識を手放そうとするが......

「すぅすぅ」

あはは。なんだろうか。この寝息は。隣から聞こえてくる。この部屋の隣ではない。紛れもない『俺』の隣だ。布団の中だ。中の様子は暗すぎてなにも見えない。もちろん俺は同棲などしていない。俺は恐怖で動かない体のせいで未だに布団の中だ。そこで、俺は自分の心に鞭を打ち、震える声で、しかしとてつもない近所迷惑な大きな声で

「だ、だ、誰だ!お前! 」

あーあ。明日大家に怒られるな。と、その時、

「ん、うるさいな」

その通りですよ......

「じゃなーーい! 誰だ!お前は! 」

布団を這いずりだし、謎の声の主を置き去りにして、畳の上へと無事帰還した。布団はもぞもぞと蠢いている。何が出て来るのだろうか。思わず唾を呑み込む。その瞬間!掛け布団が天井まで舞い上がった!

俺の目は突如舞い上がった布団に奪われていた。が、すぐに我に返り布団があった場所へ目を移す。そこには、

「愚問だな」

と呟いた一人の女がいた。しかし、その容姿は実に凜としていると言うか、筋が通っていると言うか。髪は黒髪ストレート。腰まで有ろうかという長さだ。顔立ちは先にも述べた通り鼻筋が通っていて、目は大きく、唇は魅力的だ。

しかし、今はこんなことを考える時間ではない。

「だ、誰だ!」

「誰だ、か。そうだな。私は、幽霊だ」

だ、そうだ。幽霊だってさ。笑える。

「幽霊なんていねぇよ!正直に答えろ! 」

「なに!お前、幽霊など居ないと思っているのか?」

「勿論だ。だって見たことない。いるなら見せて欲しいわ!」

馬鹿らし。そう思った。

「ほう、なら見せてやろう」

自称幽霊はそう得意げに答えた。

「どうやって見せてくれるんだ?」

「まあ、見ておれ」

そう言うと自称幽霊は目を閉じた。数秒後、どこからか、物が落ちる音が聞こえてきた。その音はどんどん増えていく。まさか!

「ポルターガイスト! 」

そうだ。これは幽霊現象としては有名過ぎるポルターガイスト。その間にも音は大きくなっていく。このままでは、俺の命まで落とされてしまう。

「わかった、分かったから。止めてくれ! 」

その途端、この部屋は本来の静けさを取り戻した。

「本当に、幽霊」

まさか、この世界に、幽霊なんて非科学的なものが......

「これでわかっただろ?私が幽霊ってことが」

「ああ。よくわかったよ」

幽霊とは怖いものだと思ってた。だけど実際はこんなもの、なのか。

「それで?なんで、俺んちにいるんだ? 」

「実はだな......」

幽霊が言うにはこうだ。

「私は2年前、このアパートで殺された橘愛奈(たちばなあいな)だ。そして、私を殺した犯人は未だに捕まっていない。そのため私は成仏できないでいる。と言うわけだ」

突拍子もない話だがさっきのことがある。信じない訳にはいかない。

「で?なんで俺んちなんだ?他の部屋はいくらでもあるだろ?」

「他の部屋はすべて空き家だったぞ?」

あぁ。そうだ。忘れてた。このアパートには俺以外誰も住んでないってことを。

「それに、私はこの部屋で死んだんだ」

......マジかよ。だからここ家賃安いのか。

「それでだ。実は、頼みたいことがある」

真面目な顔で、幽霊は言った。

「なんだ?」

「犯人探しを手伝ってくれないか?」

「え?」

「私は犯人を捜し当てないと成仏出来ない。だから、頼む。手伝ってくれ」

はぁ~と深いため息をつく。

犯人捜し、か。そんな事実際の所やりたくない。だが......こいつの言うことが本当だったら?人が人を殺す。そんなことは絶対に許されない。そして、俺は許さない。だから、

「分かった。やってやるよ。犯人捜し」

「本当か?本当にか?」

「あぁ。本当だ」

「ありがとう」

なんだよ。凜としてて、カッコいいと思ったらかわいいとこもあるじゃねぇか。

「だがな、犯人捜しもただで手伝ってやるのは少しばかり不公平だ。だから、犯人捜しを手伝う代わりに」

「代わりに?」

「俺が死んだら天国までつれてってくれ」

「あぁ。勿論だ。任せておけ!」

こうして俺と幽霊、橘愛奈の不思議で奇想天外な犯人捜しが始まった。その先にあるものは一体......



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