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銀河最弱物語  作者: 柿衛門
陛下とポチ
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1

 銀河帝国皇帝陛下に拾われたハナは帝星ナウイオリンへ連れて行かれることになり、それに伴いセルゲンは一足先に帝星へと帰って行った。

 ハナを皇帝陛下の側室にするための諸手続きがあるためだ。

 側室となればハナには館が与えられるため、館やそれに付随する諸々――内装や家具、館の維持やハナの世話のための人員の選定。因みにエレウ・エルはそのままハナの主治医に就任させられた。

 そしてハナのお披露目パーティーももちろん開催しなければならない。

 通常、貴族などから寄贈される側室の場合このお披露目パーティーは行われないのだが、陛下が直々に目を付けた者の場合は行われる。

 

 こうしてセルゲンが忙しく準備を進める中、陛下とその気に入りとハナはまったり宇宙旅行を楽しんでいた。ハナだけは楽しんでいるように見えないが。


「陛下、セルゲン伯より通信が入っております」


「繋いでくれ……どうした、セルゲン?」


『陛下、ハナ様の居館についてですが』


「うん?」


『現在、空いており陛下の私室からもっとも近いところが移動艇で二十五分の紅梅館のみなのですが……』


「ハナの居館? 余の部屋で良いだろう?」


 ――どれだけ可愛がるおつもりだ……


 可愛がる分には問題はないのだが、別の問題が生じてしまう。普段表情を表に出さないセルゲンが顔を引き攣らせながら、しばらく迷った挙句に進言した。


『その、ご側室様一人を特別扱いなさいますのは……ハナ様は非常に弱い方のようですから、すぐに暗殺される可能性が……』


「うん? 側室? 誰の話だ?」


『……ハナ様の件です。ご側室に召し上げるのですよね? 存分に可愛がると仰せでしたので』


「え!? 側室にするのか?」


 皇帝陛下、ハナのことをどうするつもりだったのか、セルゲンに言われて何故かものすごく驚いている。

 彼は振り返りお気に入りの側室二人とハナを見比べた。


 確かにハナのことはとても気に入った。心が惹かれるのだが、側室にしたいのかと言われれば何かが違う。確かに「存分に可愛がりたい」のだが何かが違う。

 あのときと同じ不可解な、だが決して不快ではない思いに捕らわれながらハナを見つめる縦長の瞳孔。

 突如、何かを思い出したようにモニターに向き直った。


「あのだな、セルゲン」


『はっ』


「ハナは余のペットにするのだ。断じて側室ではない」


 その一言で全ての方向性が決定された。


『御意』


 セルゲンは急いで、何かのデータを引っ張り出してきた。


『地球のペットに関する報告書を送信いたします。飼い主としての心構えなども記載されている文章ですのでご一読下さい』


「分かった」


 ほどなくして大量のデータが送信されてきた。

 地球の主なペットは犬、猫、鳥や小動物や鑑賞用の魚だったらしい。中には爬虫類や大型肉食動物を飼う者もいたようだが、全てに共通しているのは可愛いペットの名付から始まる。


「そうか……ハナにも付けてやらねばな」


 モニターには地球の全ての言語で主だったペットの名前がズラッと並んでいる。



*


 一晩中考え抜いた皇帝陛下の御尊顔は、眼の下には隈取ができて地獄から這い出た悪鬼のような形相になっている。人間とは違う身体構造の陛下だが、人間のように悩んだ結果だ。


「ポ、ポ、ポポポポポポチ」


 そしてその集大成が今、かなり緊張した皇帝陛下の口からお言葉となり発せられたのだが――


「ほぇ?」


 当の本人は首を傾げて「ポポポポポポチ」って何? という顔で陛下を見上げただけだった。




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