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銀河最弱物語  作者: 柿衛門
銀河最弱物語
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銀河最弱物語


 十一年ほど前、魔力も持たず体力も運動能力も銀河で一番低いと言われた少女が皇帝を救った。

 それは、銀河の未来を救ったとも言える。

 だが、それは語られることなく、知っているものの心にだけ刻まれた。


 少女自身が公にされることを拒んだからだ。



***


「ノハラ主任! 変なものが発掘されました!」


「え、なに!?」


 ベージュの作業服を着た小柄な黒髪の女性が、同じ作業服を着た男に呼ばれて走っていった。

 二人が走っていった先には、同じような作業服の男女が何かを囲んで額を寄せ合っている。


「あ、主任。こちらです」


 二人に気付いた女性が場所を空けて、発掘したものを手で示した。黒髪の女性はそれを一瞥すると膝を着いて愕然とした。


「こ、これは……!」


「ハナちゃん、コレなに?」


「ええ、と。これは……その……」


 黒髪の女性――ハナの目が泳いでいる。


「古代語だよね?「め、めい、どき……」?」


「……「メイド喫茶」」


「へぇ。「冥土喫茶」? 地球人て変な物ばかり作ってたんだねぇ。あの世で喫茶店か……」


「違うよ、セテさん! メイド喫茶……こう、メイドさんが「お帰りなさいませご主人様」って……」


 ハナが身振り手振りで説明していると、バサリ、と何かが落ちる音が響いた。


「ハ、ハナ……も、もう一度、もう一度やってくれぬか?」


「へ、陛下!? なんでここに!?」


「も、もう一度……いや、今日の花束を持ってきたのだ!」


「でも、こんな発掘現場に花束持って来られても……」


「そなたとの約束であるからな! うむ、皆の者休憩時間だ!」


 あれから十一年、相変わらずな皇帝は勝手に休憩時間を設けた。

 が、言われる前に作業員たちはどこかへ消えていた。


 ハナはあの後、帝国の高校へ入学し、その後考古学の道へと進んだ。

 自分の生きた時代を、地球を偲んでのことだったが、勉強を始めたら思いのほか楽しい。

 一生懸命勉強をして、大学院まで行き気が付いたら地球文明研究所への道のりが拓けていた。

 なぜかセテも一緒に研究所へやってきたのだが。


 今は仕事がとても楽しい。

 

 地球の家族を思い出して泣くことも以前はあったが、今は泣くことなく思い出せる。


「ハナ……そろそろ返事を……」


「陛下は何億年も生きてるんでしょ? 一年、二年くらいあっと言う間じゃない!」


「いや、それとこれとは、その……な?」


「うーん……そうですねぇ……」


 ハナはにっこり笑ってはぐらかす技術も身に付けた。

 十一年間毎日欠かさず花束を持って来る皇帝を見るのが、最近楽しいハナだ。

 ハナが努力して今の地位に就いたように、皇帝も努力している。

 傍で見ている者たちが苦笑するほど、真っ直ぐに唯一人を見つめて。


 銀河でただ一人魔力を持たず、か弱いが、何より心の強いハナを見つめて。




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