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銀河最弱物語  作者: 柿衛門
アナタと再び
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2


銀河帝国皇帝陛下を乗せた小型地球観察艦である全長6、794kmのメルカーノ艦が地球衛星軌道上を周遊していた。



*


「総統閣下!」


司令官席で億劫そうにしていた男が顔を上げた。

目にはつまらなそうな色を湛えている。


実際、この男、銀河帝国皇帝、レイシュヴィッツ・ファウフェッテン=キエリは、「つまらない」と思っていた。

この艦の連中はいちいちどうでも良い報告を持ってくる。


何せ皇帝陛下の搭乗は初めてで艦長以下クルーは緊張し通しで、つまらない事でも逐一報告している。


地上にゴ……Gがいたとか。

大体、Gなんてどんな辺境の星にもいる。

珍しくもないのに、見付けると大騒ぎだ。

いやGだから大騒ぎになるのか。


そういえば、地球の伝統的なG退治にスリッパは欠かせなかった……


あれを持って戦う主婦の姿は帝国兵にも匹敵する。



と、皇帝自身どうでも良い事を思いつつ艦長に顔を向けた。


「何事だ?」


「地球上に生体反応が見られます。スキャンの結果人間と判明したのですが」


億劫そうにしていた皇帝は目を見開いた。



「人間、だと? 間違いないのか?」


「はっ。間違いございません」


「直ちに捕獲せよ!」





***


ああ、私、死んだ。


でも、こんなフカフカで気持ち良いならそれも悪くな……


「気が付きましたか?」


「はヒャっ!?」


噛んだがそれはどうでも良い。

やたら背の高い、真っ白い人に見下ろされている。


肌は勿論、目も髪も真白で服も真白。

そしてやたら綺麗な人だ。


ここは天国なのか、それとも夢でも見ているのか。


ハナは綺麗な白い人を失礼にもまじまじと見て驚いた。


口を開けているハナを見つめて、その人は首を傾げている。


「どうなさいました?」


どうしたもこうしたも、白い人の魔力の凄まじさは半端ない。

白い人は魔王をラクラク凌ぐ魔力を持っている。

驚きの余り、自分が相手の魔力を見極める能力を維持している事に気付きもしなかった。


「え? あの? ア、アナタは……?」


「私は当艦の医療責任者ですが」


「そ、それって、凄くエラい人なんですか!?」


「いえ。特には。まぁ一般人ですね」


ハナは更に口をパクパクさせて間抜け面を惜しげもなく晒した。


「そんな、だって――」


ぐぅぅぅー、とハナ自身の言葉を遮るお腹の虫。


「ああ、お腹が空いているのですね」


盛大なお腹の音を聞いて、納得する美人に、恥かしそうに頷くハナ。


「では、食堂に案内します」


白い人の申し出に、ハナの顔がパァッと輝いた。


「おおおぉぉぉぉ。ご、ご飯、くれるんですかぁ?」


「ええ。もちろんです」


白い人の魔力より食事が優先だ。



*


「すいませーん、お冷おかわり下さい!」


「お、『おひや』、とは何でしょう?」


「水! お水です!」


「は、はい!」


勢い良くコップを差し出すと、クリスタルの水差しから水を注ぐ厨房係。


ハナはモシャモシャと食事をかきこみ、ゴクゴクと水を飲む。

その様子を遠巻きに見る食堂の職員。



そして――



「人間……まだ幼いようだな」


青白い肌に、血みどろ色の髪と眼球。

ものスゴイ美形なのだが、そう見えない色彩の身長2mを越す皇帝陛下。


彼は司令部の巨大モニター越しにデカデカと少女を映し出し見つめていた。


口一杯に詰め込んで、ほっぺたを膨らませて一生懸命食べる少女。

何だかほほえましい姿に、銀河一畏怖される皇帝は我知らずに微笑んだ。


不吉な色合いの凶悪な美貌を誇る陛下が微笑むと、まるで地獄の釜の蓋が開いたかの如し。


彼は徐に立ち上がると、マントを翻し食堂へと向った。

その後を従者セルゲン・ライマール伯爵が付き従う。



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