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銀河最弱物語  作者: 柿衛門
陛下とポチ
13/48

5.5

 余は大変困っておる。

 銀河帝国皇帝として君臨して早数千年。このように困るとは思いもよらなかった。


「エレウ。どうしても必要なのか?」


 メルカーノから連れてきたポチの主治医に何度確認してもその都度同じ返答。


「当然でございます。陛下のペットでいらっしゃいますから陛下が責任を持ってお風呂へ入れるべきです」


 そう、飼い主の責任として当然であるからして、その下心などは一切ないのだが……。

 あのだな、余がポチを風呂に入れると言うのは色々と問題があるのではないかと思うのだ。



*


 ペットと共に風呂に入る――なんとも魅惑的な響きではないか。あのポヤポヤの頭を洗ってやったり一緒に湯船に浸かるのだ。

 地球時代に限らず現在もだが、ペットというのは風呂を嫌がるきらいがある。ポチも例外ではなく、風呂へ連れて行こうとしたら必死で抵抗しおった。


「風呂は怖いところではないぞ、ポチ。さぁ、余と一緒に湯船に浸かるのだ」


「いや! そーいう問題じゃなくって!」


「余がついておる。頭も洗ってやろうな」


「いーやーだーっ!」


 余程風呂が怖いのだな。確かに小さくて子ザルのようにか弱いポチが風呂で溺れたら大変である。必死で抵抗するさまは微笑ましいが、軽々と抱き上げて脱衣所へ向かった。


 賢明なる余の臣民は分かったであろう。


 問題はポチの黄色の服を脱がせたときだった。

 ポチは人間の少女だったのだ。浮かれてそのことを失念しておった余は慌てて目を閉じたのだが、余の邪眼は瞑ったところで宇宙の全てを見通してしまうのだ。


「すまん、ポチ! 余は見えておらんぞ!」


 更に慌てて居室へと戻り控えていたセルゲンとエレウに相談をしたのだ。



*


「余には無理である」


 ――あれだけ愛人侍らせておいて、何を今更……


 余の地獄耳にはセルゲンの心の声が確りと聞こえてきた。


「なら、そちがポチを風呂に入れるのだ」


「私が陛下の浴室へ入っても宜しいのでしょうか?」


「許可する」


「宜しいのでしょうか? 私がハナさんの頭を洗ったり、体を洗ったり。ハナさんが溺れないように抱きかかえて一緒に湯船に浸かりますが、そうしますと当然、私も脱ぎ――」


「ならん! 余のポチになんと如何わしい真似を……いくら、そちとて許さん!」


 余のポチを裸にして裸の男が抱きかかえるなど言語道断。極刑に値する。


「では、陛下が」


「いや、それは問題があるのではないかと」


「「いつもそう。ちゃんと面倒見るから飼っても良いでしょう、って言って。結局、面倒見るのお母さんなんだから……」」


 突然エレウがそのようなことを呟いた。


「何だそれは?」


「私も地球のペットに関する文献に目を通したのですが、度々そのような記述が出てまいりまして……」


 確かに飼い主たるもの責任を持って面倒を見なければならない。だが……。


「エレウ。今日だけそちが風呂に入れてやってくれんか? 明日からは余がきちんとやるから」


「……私が陛下の浴室へ入っても宜しいのでしょうか?」


「許可する」


「宜しいのでしょうか? 私がハナさんの頭を洗ったり、体を洗ったり。ハナさんが溺れないように抱きかかえて一緒に湯船に浸かりますが、そうしますと当然、私も脱ぎ――」


「ならん! 余のポチになんと如何わしい真似を……いくら、そちとて許さん!」


 余のポチを裸にして裸の男が抱きかかえるなど言語道断。極刑に値する。

 む、以前もこのようなやり取りをした記憶が。


 どちらにしても堂々巡りであるな。

 余は非常に困っておる。


「お風呂ありがとうございましたぁ! あー、さっぱりしたぁ」


 困っておったら湯上りでホヤホヤでポヤポヤのポチが戻ってきおった。


「ポチや」


「はい?」


「そなた、風呂が嫌いなのではないのか? 一人でちゃんと入れたのか?」


「え? お風呂大好き日本人だし、十七歳なので一人でお風呂に入れますが」


 やはり余は失念しておった。

 ポチは余のペットだが人間なので一人で風呂に入るくらい造作もないことを。




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