図書室
今思ったのですが、ラヴィエルの年齢設定を忘れていて…
フェリアは16歳で、ラヴィエルはもうすぐ18歳の予定です。
それからフェリアは、ほとんど毎日のように図書室に通うようになった。
朝食を終え、部屋で少し過ごしてから。
昼前か、午後の早い時間にメイドとともに向かう。
初めてあったメイドと同じ子で、部屋でも少しずつ話し始めていて、もっと仲良くないたいなあってフェリアは期待している。
毎日図書室に行く理由が特にあるわけではない。
けれど、気づくと足がそちらへ向いていた。
図書室は静かだった。
誰かが常にいるわけでもなく、かといって一人でいて孤独という感じもしない。
本の背表紙を眺め、気になったものを一冊取り出す。
読めない文字があれば辞書で調べ、できるだけ理解しようとする。
この国の歴史。
血統と力の関係。
過去に現れた覚醒者たちの記録。
薬草や病気に関する本…
分類問わず様々な本を読んだ。知らなかったものを知ることはとても楽しいから。
だけど、特等星の項を、何度も読み返すことはしなかった。
けれど、他の記述を読んでいても、ふと頭をよぎることはあった。
(……似てる、なんて思うのは……)
考えかけて、やめる。
ここは考えを深めるべきじゃない。
ただ、知るだけでいい。
そうやって、自分に言い聞かせていた。
その日も、午後になってから図書室へ向かった。
廊下は相変わらず静かで、窓から差し込む光が床に長く伸びている。
扉の前に立ち、いつものようにノックはせず、そっと手をかけた。
開けた瞬間、フェリアは思わず足を止めた。
中に、人がいた。
窓際の小さなテーブル。
そこに、ラヴィエルが座っていた。
書物を一冊閉じたところだったらしく、顔を上げる。
「あ……」
視線が合って、彼は一瞬だけ目を瞬いた。
そして、すぐに穏やかに笑った。
「こんにちは、フェリア」
「こ、こんにちは……」
予想していなかった人物に、声が少し上ずる。
ラヴィエルは立ち上がらず、手にしていた本を脇へ置いた。
「驚かせてしまいましたか」
「い、いえ……その……」
図書室に人がいること自体は、別におかしくない。
ただ、ラヴィエルがいるとは到底予想できない。
「いつも、ここを使っていると聞きました」
そう言われて、フェリアは小さくうなずいた。
「……はい。あの、邪魔でしたら……」
「いいえ」
即座に否定される。
「むしろ、ちょうど良かったです」
ラヴィエルは、テーブルの向かいを見た。
「お茶にしようと思っていたところです。ご一緒しませんか」
一瞬、迷った。
断る理由はない。
けれど、理由がなくても、少し緊張する。
「……はい」
そう答えると、ラヴィエルは安心したように息を吐いた。
ほどなくして、メイドが呼ばれ、紅茶が用意された。
香りは控えめで、甘さも強くない。
フェリアは、カップを両手で持つ。
少し間があった。
でも、不思議と落ち着かない沈黙ではなかった。
「……最近、よく図書室にいらっしゃいますね」
ラヴィエルが、穏やかに切り出す。
「はい……」
それ以上、言葉が続かず、フェリアは視線をカップに落とした。
「……退屈、でしたか」
「い、いえ!」
思わず声が出てしまい、慌てて続ける。
「その、これまで知らなかった知識を知ることが楽しくて」
「そうですか」
短い返事だったが、否定はなかった。
ラヴィエルは、少しだけ視線を逸らし、窓の外を見る。
「無理をさせていないか、気になっていました」
その言葉に、フェリアは慌てて首を振る。
「無理はしてないです」
「それならよかったです」
それ以上、深くは踏み込まれなかった。
ラヴィエルは、ただ紅茶を一口飲む。
「……もし」
少し間を置いて、彼が言った。
「分からないことがあれば、聞いてください。答えられる範囲で、ですが」
フェリアは驚いて顔を上げた。
「……いいんですか」
「はい」
即答だった。
「遠慮なく聞いてください」
フェリアは、胸の奥が少しだけ軽くなるのを感じた。
「……ありがとうございます」
「どういたしまして」
そう言って、ラヴィエルはまた微笑んだ。
それから二人は、夕食の時間まで話していた。
図書室の中に、午後の光が満ちていた。
静かで、穏やかな時間だった。
フェリアは、紅茶の温かさを確かめるようにカップを握り直した。
今日の会話は、不思議なくらい心地よくて、気づけば笑っている自分がいた。
こんなふうに時間が過ぎるのを惜しいと思ったのは、久しぶりだった。
「……あのさ」
ラヴィエルが、少しだけ緊張したように聞いた。
「もし、迷惑ではないならこれからも、時々こうして一緒にお茶をしてもいいかな」
フェリアは一瞬驚いて、けれどすぐに胸の奥がやわらかくなるのを感じた。
彼女はカップに視線を落としたまま、小さくうなずく。
その仕草に、ラヴィエルは嬉しそうに微笑んだ。
夕焼けが反射したのか、その顔がほんの少しだけ、赤く見えた。
その表情にフェリアは思わずドキッとした。
そして、ほんのり赤い頬を隠すように俯いた。
夕日は静かに二人を照らしていて、二人を包みこんだ。
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