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貧民街の転生者  作者: Stellune


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6/12

姉妹と路地裏

やっと別キャラクターを出せました。

シーンの画像は後ほど追加していこうと思います。

AIで生成しているのでなかなかイメージ通りのものが出来ないんですよね…

夜明け前、森の冷たい空気で目が覚めた。


木の上に組んだ簡易拠点は、思ったよりもしっかりしていて、体はほとんど痛くなっていない。

昨日までとは違う。「生き延びている」という実感が、静かに胸に積もっていた。


朝の森は不気味というより、張りつめた静けさに満ちている。

鳥の声が一つ響けば、別の方向から何かが応える。


視線を向けるたび、見えない“何か”に見られているような気がして、無意識に背筋が伸びた。


「……街、少し見てみるか」


情報は命綱だ。

今後のことを考えると街の状況を知ることは必須になる。


街を見てまわるために狼の毛皮で体を隠せるような外套をクラフトした後、

拠点を降り、城壁に空いたあの穴へと向かった。


穴を抜け、街側に足を踏み入れた瞬間だった。


「……?」


視界の端で、何かが動いた。

崩れた石壁の影。そこに、二つの小さな人影がうずくまっている。


じりじり近づいてみると、小さな子供が折り重なるように横たわっていた。

年の頃は、十歳前後、もう一人はその半分ほどだろうか。

顔立ちが似ていることから恐らく姉妹であると想定できる。


どちらも痩せ細り、服は擦り切れ、

特に妹のほうは腹を押さえたまま、ぴくりとも動かない。


 ――腹、減ってるな。


自分の胃が、昨日と同じ音を思い出す。

あの、どうしようもない感覚。


俺は迷わなかった。

腰の袋から、昼食用に取っておいた燻製肉を取り出す。


「……食べるか…?」


姉の方がびくりと顔を上げる。警戒と期待が入り混じった目。

妹は何も言わない。ただ、肉から目を離せずにいる。


姉は一瞬ためらったあと、小さくうなずいた。


「……あ、ありがとう……ございます」


言葉はたどたどしく、それでも必死だった。

二人で分け合うように肉を食べる姿を見ていると、少しの達成感を得られた。


その瞬間――


《スキル<癒し>を獲得しました》


「……え?」


視界に、いつもの半透明の文字。

鑑定してみると、簡単な傷や痛みを和らげる、不思議な力を使えるスキルらしい。

魔法、という言葉が一番近いだろう。


いつものような実績による獲得ではなく、善行によるスキルの獲得。

すでに消えかかっていた神の言葉をふと思い出す。



――善行を積んだらそれに見合った報酬もあげるから、

 物語の主人公達みたいにどんどん問題を解決していってね。――




「……試してみるか」


二人の腕や脚には、擦り傷や切り傷がいくつもあった。

怖がらせないようにそろそろと、姉の腕に手を伸ばす。


「ちょっと、じっとしててくれ。」


スキルの使用に意識を集中すると、手のひらがほんのり温かくなる。

柔らかく緑色の光が灯り、空気まで柔らかくなるような感覚。


数秒後、少女の赤く腫れていた傷が、みるみるうちに薄れていた。


「……え?」


姉が自分の腕を見て、目を丸くする。

妹も無言のまま、じっと僕を見上げていた。


「大丈夫。痛くないだろ」


妹のほうも癒してやると、わずかに表情が緩んだ……気がした。


今の季節は分からないが、早朝は少し冷える。

そのままにしておくわけにはいかないだろう。

朝、狼の毛皮で作った外套を思い出し、それをかけてやる。


「寒いだろ。これ、使っときな。」


「で、でも……」


「いいから」


穴の周囲に散らばっていた壊れた木箱や樽を集め、簡単な台を作る。

横になれる程度の、即席の寝床だ。


二人を寝かせると、ようやく安心したように、姉は小さく頭を下げた。


「……ほんとうに、ありがとう」


二人が眠ったことを確認した後、

貧民街を少し見て回ることにした。


それで分かったのは、俺が貧民街と呼んでいる場所はかなり広いということ。

なるべく人の少ない場所を選んで進んでみたが、一向に終わる気配を感じず、

体感で2時間ほど歩いた後、帰り道を歩いていた。


現状の装備でこれ以上、貧民街の探索は危険だと感じたからだ。

俺が森への行き来に使用している穴と初めて目覚めた場所は、

貧民街でもかなり人気の少ない場所だった。


そこから1時間も歩くとばらばらと地面に横たわっている人が増え、

ボロボロの食器やかろうじて着れそうな衣服を売っている市場のような場所、

明らかにやばそうな薬をやっている人間の集団が目に入ってくる。


今の俺はボロイ麻服を着た、ただのガキだ。

武器の一つも持たずに入るのは自殺行為だろう。

もともと貧民街を抜けて市街地を見て回る予定だったため、明らかな武器は置いてきてしまっていた。


とりあえず、貧民街の捜索を打ち切り、

探索の途中で見つけた市街地へ出れそうな路地裏へ向かう。


路地裏から市街地の大通りを覗いてみる。

それ以上、俺は街の中に入らなかった。

外套を失った今、目立つのは得策じゃない。


 人の流れ、商人の声、武装した兵士の巡回――


貧民街とは違いこの通りは、生きている。

そして同時に、弱い者が簡単にこぼれ落ちる場所でもある。


「……まだ、やることは多いな」


そう呟きながら、俺は静かに次の一手を考え始めていた。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。

評価やブックマークをいただけると、「よし、続きを書こう!」と作者のやる気が跳ね上がります。

応援していただけたら幸いです。

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