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貧民街の転生者  作者: Stellune


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5/10

森の拠点作成

当面の食糧問題が解決した後。

俺は簡易的な拠点をこの森に作ることにした。


というのも現状を鑑みるに、貧民の、恐らく孤児として生まれ落ちたことを考えると、

社会的位置としては底辺に位置する。

それは世界に文明の発展を促すという目標を達成するには、あまりにも悪い状況だ。


普通に考えて俺が、こうこうすればもっと便利になるよ! と言ってみたところで、

相手にされないならまだしも扇動罪やら詐欺罪やらでとっ捕まるのが関の山だ。

この世界に少年法を期待するのは難しいだろうし。


そうなってくるとひとまずの目標として俺がやるべきことは、

社会的地位の向上および影響力の確保だ。


まずは生まれ堕ちた街で出来ることを増やしていかなければ、

世界に影響を及ぼすは不可能だろう。



最初にも考えたが、今の俺は小汚いただの孤児。

この状況を突破するためにまず思いついたのは、組織の作成。


自分をトップとする組織を作成することで、

手っ取り早く周囲への影響力を得ようと考えた。

いくら貧民とはいえ数が増え、力を持てば存在を無視するのは難しいはずだ。


ラノベだと、いつの間にか村が町になり、国になることで世界への影響力を高めていく過程が描かれていることが多いので、そこから着想を得た。


今考えている最初の構成員は俺と同じ存在。

つまり、貧民街の孤児や大人たちだ。


社会的弱者である彼らに食を与え、信頼を得て、まとめ上げる。

それが今俺にできる文明発展への第一歩として考えている。



森に拠点づくりをする目的は、

組織運営のため、最初の活動場所としてここを開拓していきたいのだ。


俺のクラフト能力は曲がりなりにも神から与えられた力で、

存在を知られると面倒なことになるのは想像に難くない。

鑑定とは違って手から光が発生するため、街中で使用すれば目立つため秘匿が難しいと思う。


いくら貧民街を中心に動くとは言え、

街中で組織だった活動をすると遅かれ早かれ注目を浴びる。


まだ街の探索も出来ていないし、この町の文明レベルや住人の人柄、上層部の把握なども出来ていない。

その状況で目立つのはあまりにもリスクが高すぎる。


森の中でも街に近いところではあまり派手なことはできないが、

そこでの活動が注目を浴びるようであればそれなりの規模の組織になっていると想定できる。


捕らぬ狸のなんとやら。

ソロで活動している現時点で考え過ぎるのもあれだが、ラノベみたいに目立ってすべてが上手く転がるなんて、あまりにも楽観がすぎるだろう。


「俺 なんかやっちゃいました?」なんて言う前に殺される可能性だってある。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ひとまずの方向性を決めたので、

次はひとまずの活動が出来るように拠点づくりを行おうと思う。


とはいえ、今の状況で出来そうなのは雑草を刈ったり、素材をあつめておく場所を決めておくくらいしかできることはなさそうだ。


「石と木、蔦で…… <鎌>をクラフト…!」


燻製台があるところを中心にして、円形になるように鎌で藪を刈って広場を作る。

上から見て左上のあたりに一本だけ木があるので、そこを寝床にする。

地面の上で寝るのはどう考えても自殺行為だ。


「そう考えると、森の中で燻製をしたのも大分危なかったな…」


作っているときは空腹で思い当たらなかったが、

匂いの出る燻製を森の中でやったのは大分危険行為だった。

反省。


とはいえ、食料は常に必要になるためそこらへんも追々考えていかないといけないな。



とりあえず、木の上に寝床を作ろう。

木と蔦で縄梯子をクラフトして、ひときわ大きい樹木に掛ける。

縄を引っかける部分は少し穴をあけて、蔦で作成したロープをぐるりと巻いておく。

これはあとあと拡張したり、枝を渡る際の命綱のように使おうと思ってる。



挿絵(By みてみん)


枝を伝ってさらに上ると、枝が密集している部分を少し整えロープでつなぐことで簡易的な寝床を作る。

また、ぐるっとさらにロープをまいて、木や石、燻製肉が入った籠(蔦と木、ロープでクラフト)を吊るしておく。


ロープが蔦を材料にクラフトできるのはかなり大きかった。

ゲームの知識から発想して試したが、やはりクラフトはイメージ次第でかなりの力を発揮する。


寝床からはしごまでの道を軽く整えたら、

ひとまずはこれでいいだろう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


簡易的なツリーハウスが出来上がるころにはすっかり日も暮れていた。

森の中は薄暗く、これから壁の穴に向かうのは危ない。


燻製肉を齧り、新たに出来上がった寝床で夜を迎える。

簡易的とはいえ、拠点と呼べるものが出来上がった。

幹にもたれかかれば、簡単には落ちない程度の安定感はある。


「……よし。今日の俺、かなり頑張ったな」


木の上に腰を下ろし、深く息を吐く。

視界の下では、夜の森がじっと息を潜めている。


どこからともなく聞こえる、鳥の鳴き声。

遠くで枝が折れる音。

風でも獣でもない、何かが動く気配。


「……怖いな」


正直に言葉にする。

街の路地裏とは違う種類の恐怖だ。

ここでは、闇の向こうに“自然”がいる。


闇に紛れた目が、こちらを見ている気がしてならない。


 ――それでも。


足元を見下ろせば、燻製肉を作成した燻製台。

横を見ればクラフトで作成した原始的な道具たち。



「……全部、俺がやったんだよな」


クラフトスキルは便利な力だ。

それでもイメージが固まらないとまともなものはできない。

前世でどこかむなしく感じていた娯楽の知識が、今の俺の命を繋いでいる。


狼との死闘は命の危険と共に、

狂おしいほどの生の実感を与えてくれた。


 俺はここに生きている。


不気味な鳴き声が、またひとつ響く。

思わず身をすくめるが、木の幹に背を預け直す。


「……大丈夫。少なくとも、昨日よりはマシだ」


昨日は、何もなかった。

今日は、拠点がある。

保存食がある。

明日を考える余裕がある。


 ――それだけで十分だ。


小さく息を吐き、目を閉じる。

森の音は消えないが、もう完全な敵ではない。


「……異世界二日目、何とか生き延びたぞ。」


 そう独り言を呟いて、

 俺は静かに意識を手放した。


 不気味な夜に包まれながらも、

 確かな充実感とともに。


こうして、俺の異世界での二日目は終わった。




ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。

評価やブックマークをいただけると、「よし、続きを書こう!」と作者のやる気が跳ね上がります。

応援していただけたら幸いです。

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