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貧民街の転生者  作者: Stellune


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3/10

城壁の穴の向こう側

転生後、初めての朝。


 昨日は結局路地裏を少し歩いたところで、ごみを漁った。

 幸いなことに、野菜の切れ端と腐りかけの果物みたいなものを手に入れ、食べた。

 少し抵抗があるかと思ったが、餓死一歩手前の体にはごちそうだったみたいだ。


 スキルの確認に意外と時間がかかっていたのか、

 すぐに日暮れが来たため家と家の隙間で縮こまって寝た。


 ゴミを漁って手に入れた少しマシな木片を使ってクラフトした、

「粗末な皿」と「木のスプーン」を眺めながら、俺はひとりごちる。


「……いやぁ、形はめちゃくちゃだけど、こうやって食器があると文明人っぽいな。

やっぱ器があると満足感が違う。」


 皿の上にはパンのような硬い欠片。

 街の廃屋から見つけた保存食らしい。

 朝食としては最悪だが、空腹よりマシだ。


「さて、今日はどうするか……。街の中だけだと素材が心許ない。木材も石も限界があるし……

 それにゴミあさりでの食糧集めも限界がある。」


 独り言は止まらない。思考の整理と自分を奮い立たせるための習慣みたいなものだ。

 そして目は自然と、城壁の隅へと向かう。


そこには――崩れた石積みの穴。


挿絵(By みてみん)


 奥にはどこかへとつながる階段。

 だが今はほとんど使われていないのか、

 崩れた木箱やタルが乱雑に置いてある。


 目立たないが隅の方に、

 子供一人が通れそうなくらいの切れ目がある。

 老朽化が原因か、はたまた事故で空いたのかは分からない。


「……やっぱり、あそこから行くしかないか…。」


 穴のすぐ向こうに広がるのは森だ。

 見た目はごく普通の森だが、あの暗さ、奥から聞こえる木々の音、青臭い匂い。

 ……どれも不気味だ。


「今の装備で行くのは自殺行為……だが、

 行かないと素材集めも食料集めもできない……」


 俺は深呼吸し、粗末な槍(包丁と木の棒でクラフトした“なんちゃって武器”)を握りなおす。


「よし……いざ、冒険開始……ってやつだな」


---


穴をなんとか抜けて、森へ足を踏み入れる。


「……うわ、空気が全然違うな…」


 街の中は埃っぽかったが、森は湿った匂いが鼻をくすぐる。

 地面は落ち葉でふかふかしていて、踏み込むたびにサクサクと音がする。


「鳥の声……風の音…… 自然すぎて、逆に怖いな」


 俺は慎重に辺りを見回す。

 まずは素材集めだ。


「鑑定っと……この草は《雑草》。まあ、そんなもんか…」

「こっちの石は……《硬い石》。おっ、これは使えそう」

「枝は……《丈夫な枝》。よしよし」


 ひとつ素材を拾うたびに声を出す。

 誰もいないのに声を出すと、不思議と思考が落ち着く。

 これは前世からの癖だ。


「よし、まずは石と枝ゲット……。想定通りにいけば……」


 その場に腰を下ろし、素材を並べる。


「石と枝を……クラフト!」


 光が弾ける。手に現れたのは――


「……おお、《石斧(簡易)》! やっとそれっぽいのができた!」


 柄は短く、石もそのままで組み合わさった、まさに原始的な石斧。

 それでも細い木ぐらいなら切れそうな雰囲気はある。


「うん、俺…サバイバルしてる……!」


 興奮冷めやらぬまま、枝と木から染み出ていた樹液を組み合わせる。


「たいまつ、たいまつ……出ろ……! ……よし、《たいまつ(低品質)》!」


 手に現れたのは、火を点ければすぐ燃え尽きそうな頼りないたいまつだった。


「まあいい、無いよりマシ!」


---


 そのとき。

 がさり、と茂みが揺れた。


「……え?」


 心臓が一気に早鐘を打つ。


「いや、まさか……いきなりモンスターとか……?」


 じりじりと下がりながら、音の方へ目を向ける。

 次の瞬間――小さな影がぴょこんと飛び出した。


「……リス? いや……ちょっとデカいな。鑑定!」


《フォレストラット 危険度:低 肉は食用可》


「……食えるんだ……」


 フォレストラットはこちらをじっと見つめ、

 やがてぴょんぴょんと俺の足元に跳ねてきた。


「お、おい、やるのか…? 

 一応こっちも武装してるんだぞ…!」


 小さな体が俺の足にまとわりつき、

 くんくんと匂いを嗅いでいる。


 次の瞬間、服を器用に駆け上がり、肩へと登ってくる。


「うわっ……肩に乗るな、バランス悪い……!

 ……でも、まあ、いいか。」


 朝に食べたパンのおかげか少しだけ腹に余裕のあった俺は、

 思わず笑ってしまう。




 緊張が少し和らいだその時――。


 森の奥から、低いうなり声が響いた。


「……っ!?」


 フォレストラットの耳がぴくりと動き、肩から飛び降りる。

 そのままものすごいスピードで反対方向へ駆けて行った。


「これは…… まずいか……?」


 冷や汗もそのままに、

 俺は石槍を強く握りしめた。

 森の影の奥で、何か大きなものが蠢くのが見える。


「……ちっ、 来るなら来い……

 俺のスキルが通用するか、試してやる!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 森の奥から、低いうなり声。

 木々の隙間からのぞく赤い目。


挿絵(By みてみん)


「……あー、はい。

 お約束の展開がきましたー…はは。」


 冗談を言いつつも、背中を冷や汗が伝う。

 “それ”はゆっくりと姿を現した。


 白い毛並み、鋭い牙、体高は俺の腰ほど。

 体長はまごうことなき――狼。

 いや、《魔狼》とでも呼ぶべき存在だ。


「鑑定!」


《フォレストウルフ 危険度:中 群れを作らず単独で狩りを行う。

 爪と牙は鋭利。肉と皮は利用可能》


「利用可能って軽く言うけど……その前に俺が食われるんだよなぁ!?」


 魔狼は牙をむき出し、低く唸りながら間合いを詰めてくる。


「腹減ってる同士、仲良くしようぜ……!」


 答えは当然ない。

 代わりに、魔狼が地を蹴った。


---


 ――速い!


 考える暇もなく、石槍を構える。

 ガッ! という衝撃音とともに、爪と槍がぶつかり合う。


「っぐ……! う、腕がもげる……!」


 体格差が絶望的だ。押し負けそうになる。

 必死に腕を振り払い、転がることでなんとか距離を取った。


「やばいやばい…! これ絶対今挑んじゃいけない相手だろ……!」


 魔狼は怯むことなく、再び地を蹴る。

 牙が迫る――!


「クラフト! クラフトでなんとかしろ俺ぇぇ!!」


 足元の枝と石を拾い、即席で組み合わせる。

 光が弾けて――


「キャンっ」


 自然には発生しない光を目の前で浴びた狼は、

 軽い悲鳴を上げて俺の真横を通り過ぎる。

 ぎりぎり間に合った。


「今…!!」


 落としてしまった槍を拾い上げ、

 目がくらんでふらふらと歩いている狼めがけて――!


 渾身の突き――。

 槍の先端が狼の脇腹にめり込む。


「ギャアァン!」

 

 

 ガリッ――!

 槍先がきしみ、木が折れる音がした。


「耐久値ひっくいな、おい…」


 槍はほぼ一撃で粉砕。

 だが、刺さった槍先が致命傷となった。


 狼はよたよたと数歩歩くと、

 前足、後ろ足を折り曲げて。

――ゆっくり倒れ伏した。


「はあっ…はあっ…!」


 時間すれば数分の出来事だが、

 命をやり取りした体は、心臓が暴れてやまない。



---


 ……静寂。


「……勝った……?」


 呼吸が荒く、心臓は破裂しそうに未だに打ち続けている。

 折れた槍先を見て、震えが止まらなかった。


 そのとき、耳に声が響いた。


《実績達成:初めての魔物討伐》

《スキル《狩り》を獲得しました》


「……スキル。 これで解放されたのか……?」


 フォレストラットが木陰から出てきて、ぴょんと俺の肩に飛び乗る。


「お前……真っ先に逃げやがって…… はあ、 ……まあいいけど。」


 ぐったりと座り込み、空を仰ぐ。

 生き延びた安堵と、これからの不安。


「……はは、これが俺の“冒険の始まり”ってやつか……」


今度こそ完結させたいため、テンポよく進めていきたいですね。

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