手垢のついた転生
お世話になっております。
懲りずに新シリーズを始めました。
むくり。
水底から這いがるような突然の覚醒と、猛烈な飢餓感。
硬い石畳の冷たさが背中に食い込み、意識がゆっくりと浮かび上がった。
目を開けると、視界いっぱいに広がるのは灰色の壁。
高く積まれた石造りの建物が、空を切り取っている。
空気は湿って重く、鉄錆と腐敗した野菜のような臭いが鼻を刺した。
遠くで誰かの足音と、聞き慣れない言語のざわめきがかすかに混じっている。
自分の体を動かそうとした瞬間、布の擦れる感覚が普段と違うことに気づいた。
見下ろせば、見覚えのない質素な麻布の衣。
――そして、半分ほどに縮んだ体。
胸がざわめき、心臓が強く脈打つ。
路地の奥で、ひときわ大きな声が響いた。
意味は分からないのに、なぜか全身が強張り、息を潜めてしまう。
狭く、薄暗く、逃げ場のない路地裏。
そこが、自分の「新しい人生」の幕開けだと気づいた。
「…ちくしょう… そういう展開かよ…!」
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ベタベタな展開で転生をしました。
振り返るのも面倒なので、簡単に自分の状況だけを再確認する。
まず、よくある神様のミスだとか俺の行動に胸を打たれて~とか、そんなことは一切ない。
昨今の異世界転生ブームに感銘を受けたこの世界の神が、テストモデルとして見出したのが俺の魂らしい。
曰く、善よりの平凡な魂。
それなりの倫理観と本能にあらがえない惰性。
能力値は平凡よりは優秀で、悪知恵が働く。
褒めてんのか貶しているのかわからないが、そのような評価を受けたらしい。
心の中で激しく罵ってしまった俺は悪くないと思う。
…神への畏怖と反抗心のバランスも良かったらしい。
とりあえず異世界転生した主人公が世界へ与える影響がとても興味深かったらしく、
ぜひうちの世界にも取り入れたい!
そんな風に考えたボケナス神様が、地球の神と交渉して俺の魂を買い取ったらしい。
俺自身、異世界転生小説を嗜んでいる身なので、正直ワクワクしていたのは否定できない。
神様からすごいスキルをもらって、「あとは好きに生きなさい」見たいな言葉があると思ってた。
はい。
きっちりやることを提示されました。
禿ナス神様によると。
この世界の文明を発展させて欲しいとのこと。
これだけを聞けばそこまで難しいとは感じなかった。
魔法という別の文化があるにしても、文明レベルは中世ヨーロッパレベル。
ラノベ知識から似たようなことをすれば何とかなりそうだ。
そう考えた俺は本当に考えが浅かった。
ノリで魂を買ってくるような間抜けな神が作った世界だ。
魔物という動植物のエラーが発生した存在がいること。
人間と亜人という種族が複数の文化を築き、ほとんど敵対していること。
世界の管理者として生み出した守護獣が仕事を放棄していること。
…これ以外にも問題はあったが、正直魔物以外の話を聞いた時点でまともに聞く気はなくなった。
しかも、文明を発展させるのは全世界レベルの話らしい。
敵対しているのがデフォルトなのに。
つまり俺は何十種類の種族間の敵対状態を解消して、
文明を発展させるために仲を取り持って、
全世界的な架け橋になることを義務付けられているということだ。
しかも失敗したら、死後の魂でも天界で働いてもらうといわれた。
はっはっはっは。
…うん。
異世界転生の最終目標が「神殺し」に決まった瞬間だった。
少しでも想像が楽になるようにシーンの挿絵を入れてみたいと思います。




