6・ケリー=ウッドロゥ
・・・・・・・・・・・・・・・
ケリー=ウッドロゥは10年をかけて、この世界の謎を探っていた。
こちらに来てからというもの、時々…
『 自分の意志とは関係なしに行動をしていたり 』、
『 言葉を喋ったりしている 』。
机に肘をつきながら、両手で顔を覆い息を吐くウッドことケイダイ。
城の中にある兵士専用の区域。
その一室。
一兵卒の部屋よりも少しきれいで、一人では充分過ぎる家具が並ぶ。
棚の本はぎゅうぎゅうに詰まっていて、クローゼットの中などを覗くと、へそくりでは無く本が出て来る。
床や机の上の本も所在なさげに積み上げられている有り様だ。
必死に集めた本も、最近は特に忙しくて読むことが出来ずにいた。
そんな空間の中、ケイダイは今日の出来事を思い出していた。
ツカサとの会話を。
顔が赤くなる。
( もう本当…嫌だ! )
勝手に動く口。
この現象が耐えられない。
( ツカサとカレンは単純だから気にならないんだろ! )
はやく解放されたいという一心で、帰る方法を探っていたケイダイは、城の図書室、資料室に貴重な情報がある事を知り、兵士として入隊した。
しかし、一般兵士では閲覧出来ないと言われショックを受ける。
その後、隊長以上の地位になれば閲覧出来るということを知った彼は、たゆまぬ努力をし、見事隊長になった。
隊長になると早速、調べ始める。
資料室で調べてみると、意外にも異世界からの人間は多くいることが分かった。
今まで配属が違ったので知らなかった。
隊長になって配属されたのは、異界人の取り締まりも含まれた部署だったので、その後、実感することになる。
・
・
・
資料室などで調べものを始めたはいいが、書物の量がとても多く、中々進まない。
こちらでの言語は日本語で通じてはいるが、それは会話の場合だけだった。
文字の読み書きとなると、全く解らなかったが、ウッドはこちらに来た12歳の頃から今日まで研鑽を積み、難しい読み書きも出来る程になっていた。
( せめて、こちらに来る時に見た本に似たものでもあればいいんだが……。 )
ケイダイはあの本があやしいと思っていた。
この世界はとても危険だ。
痛みはあるし、何度も死にかけたので、夢だとも思えない……。
そもそも、元の世界に戻るなんてことが出来るのだろうか……。
何よりも、変なセリフはもう言いたくないし、勝手に動く体も懲り懲りだ。
本や異世界について調べている自分。
これまでも全てシナリオ通りだったらと思うと、やるせなくなるが…
『 出来ることを最後までやる 』と決めた。
自室であれこれ思案していると、
ゴォーーン…
ゴォーーン…
「 !!! 」
トラブルを知らせる鐘が大きく響いた。
この鐘が鳴ったら、動ける兵士はすぐに駆けつけねばならない。
持ち場を離れられない兵士も勿論いる。
常にこのような有様な為、調べようにも進まないのだ。
一般兵士には一般兵士の忙しさがあり、
隊長には隊長の忙しさがある。
そして、貧民にも貧民の忙しさがある。
だが、ケイダイの忙しさは、ほぼ24時間気が抜けないのだ。
なぜなら体が勝手に動くうえに、いつ動くかも分からない。尚且つ隊長という役職柄、やはり気が抜けなかった。
( 鐘の音が2回鳴ったな。 )
北の方角に異常が発生したようだ。
何回鳴ったかで方角が分かるようになっている。
ケイダイは直ぐウッドに切り替わり、動き出した。