1・変わった本屋さん
カナタはいつもとは違う逆の道を歩いていた。
学校の近所とはいえ、歩いたことのない道を歩くのは少しドキドキした。
あまり寄り道をするタイプでは無かったが、気になる話をクラスメートから聞いたのだ。
本当だったらその子と一緒に行くはずだった場所に、一人で向かう。
「 なんか変わった本屋がさ、新しいの出来てて行ってみたいんだけど一人じゃ入りづらくって。僕よりもカナタ君の方が興味ありそうな感じだったけど。帰り一緒に行かない? 」
と言っていた友達は塾があるのを忘れていて、あと少しで目的地という所でこども携帯に着信が入り、お母さんに怒られながら帰っていった。
とりあえず一人で書店の前まで行ってみる。
住宅街の中にひっそりと佇む書店。
周りを木々が囲っている。
こんな所で商売が成り立つのか。
長くても数年で閉店するのが、関の山だろう。
「 ………………。」
………なんだろう…なんか…変な感じがする。
少し離れたところまで下がると、書店をじっくりと観察した。
( 本屋さんは好きだけど、たまに入りづらい雰囲気の本屋さんがあるんだよなぁ。)
友達が言っていた通り、変わった本屋だった。
例えるならば、ファンタジー物の映画とかでありそうな建物に日本語の看板と、大特価と書かれたのぼり旗がはためいている。
……違和感が凄かった。
胡散臭いと言った方がいいだろうか。
本屋には入らずに、元来た道を引き返して行った。
帰路につきながらポツリと独り言を言う。
「 なんかお店の名前も変だよなぁ。
…不思議図書館って……。
なんであんな名前にしたんだろ? 」
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