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その日の朝は寝坊した

全三話の予定です。


 朝起きて一番にすることはオナニーだったはずなのに、その日の朝は寝坊したせいでできなかった。


 言い訳になってしまうかもしれないが、それが全ての始まりだった。



 駅に行くとホームに見たことのない水色の髪のセーラー服の女子がいた。


 女子がいる空間だけ空気がキラキラと輝いていた。


 明らかに僕らとは違う、上級市民の雰囲気(オーラ)をまとっていた。


 夏のセーラー服の袖から伸びたしなやかな腕、薄いスカートの生地がまとわりつく白いふとももと健康的なふくらはぎ。長い髪の間からかいまみえる細いうなじ。


 キャシークララ(ムスコ)がここから出せとうるさく騒いだ。


 こんなところで君を外に出すわけにはいかないんだ。我慢してくれたまえよ。


 いやだ、いやだと駄々っ子のように暴れるキャシークララに手を焼いた。


 ホームに電車が入ってきて、水色の女子の後を追うように、満員電車に乗った。



 発車してしばらくたったときだった。突如、満員電車の中に魔法陣が現れた。


 電車の中は騒然となった。


「な、なんだ、突然足元に光が?」

「こ、これは魔法陣!?」

「異世界転生だ!」

「うおおおおお! チートだ、チート!」

「辺境でスローライフが待ってるぞ!」

「レボリューション・コーリング! 今こそ日本の叡智を異世界に!」

「異世界で通信ネットワークを構築してぼろ儲けだ!」

「まっててね、もふもふ~」


 いろんな人がいて、それぞれの中に異世界がある。

 

 眩い光が爆ぜて視界が利かなくなった。同時にすさまじい勢いでカラダごとどこかへ放り投げられた。





 目を覚ますと砂浜にいた。


 見渡す限り水平線が広がり、足元まで波が押し寄せて来ていた。


 砂に手をついて身を起こすと、何一つ身にまとっていないことに気がついた。


 やれやれ。


 魔法陣には衣服を転移する術式は組み込まれていないらしい。



 隣を見ると、水色の髪の女子が素っ裸で眠っていた。


 ホームで見かけたセーラー服の女子だとすぐにわかった。


 チラッと見た限り、頭髪以外はどこもツルツルだった。


 頭髪以外は脱毛して転移する術式だったのだろう。



 起きたてで女子の裸体は実に目の毒だ。


 小さなキャシークララが立ち上がり、百億の子供たちがここから出せと叫んでいた。



 眠っているのをいいことに犯っちゃおうかともちょっぴり考えたが。


「童貞」の下級市民にはしょせん無理な話だ。




 水際まで行って一発キメることにした。


 キャシークララをなでてあげればあっという間に百億の子供たちが飛び出した。


 とりあえず、海に向かって送り出した。


 精子諸君、母なる海に還りたまえ。たっしゃでな。


 Oh! Believe! 精子よ海へ還れ。


 そして海に射す光の如く、精子よ原始に戻れ。


 鼻歌を歌いながら別れを惜しんだ。






 唐突に、背後から声をかけられた。


「ナニしてるの?」


「ひゃっ!」


 射精と車は急に止まれない。



 全てを出し切った後、何事もなかったような顔をして振り返った。


「オナニーをしていただけです。女子には分からんでしょうけど、男の生理現象だからどうすることもできないんです」


「転移早々オナニーをする男子を見たのは初めて」


「前例が無いなら僕が第一号ですね」


「そうね」


 水色の髪の女子は堂々としていた。惜しむことなく裸体を晒していた。


 こっちのほうが恥ずかしくなるくらいだ。



「こういうのは馴れてるから」


 水色は自分の裸体を見下ろして言った。


「ハダカで転移は三度目」


「僕は二度目です」


 オナニーはしょせんオナニーなわけで、オナニーをしたくらいで性欲が無くなれば苦労はしない。


 オナニーを何度したところで、裸の女子を見たらおっ勃たってしまうのが、無尽蔵の性欲を誇る高校生だ。


 元気いっぱいのキャシークララは、先っぽを水色に向けていた。


 水色はキャシークララを見て首を傾げた。




「それを私に向けてどうしたいの?」


「僕の意思ではどうにもなりません」


「なら、する?」


「するって何をです?」


「セックス」


「!”#$%&’()=~|」


 言葉にならなかった。


「子供が出来た場合、責任を取ってくれたらそれでいい」


 生まれて初めて女子からセックスに誘われたが、その条件はとうてい受容できるものではなかった。


「む、無理っす」


 高校生に子供のこととか考えられるわけがない。自分もまだ子供なのだから。


孤島で全裸でふたりっきり。ラブコメ展開待ったなし?

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