エピローグ ~ 河川敷にて ~
~ エピローグ ~ 12月2日 土曜日
トレ後の尚と待ち合わせて、一緒に京王線に乗って、聖蹟桜ヶ丘の駅で降りる。
今日の尚は、ジャージじゃないんだな。いっぺん家に帰って着替えたんだ。
お誕生日に着てたニーハイとグレーのワンピース。髪はストレートで顔のサイドだけ緩めのレイヤー。あとトップスと合わせたグレーのカチューシャ。
ああ、多摩川を超えると、ちょっと気温が下がるな。
「お前、それ寒いだろ」
「そんなことないよ。ニーハイ、割とあったかいし」
「そうだけど、もう12月だぜ。俺のジャケット貸すよ。俺暑がりだから大丈夫」
「へー、優しいのね」って尚が僕のジャケットを羽織る。
ああ、やっぱり尚でもブカブカなんだな。
「ところで、なんで今日は聖蹟なの?」
「いやまあ。たまにはな。ここもアイアンジムあるし、マシンも違うから、ちょくちょく来てもいいかなって」と、急に聞かれて僕は言い淀んでしまう。
「‥‥‥なんかあるでしょ」
「いや、まあ、その‥‥‥」
「言いなさいよ、今」
「その、府中だと、親とかトレ仲間の目があるし、あと‥‥‥」
「何?」
「‥‥‥ほら、駅周りに、個室でいちゃいちゃできるとこがないだろ?」
「な、そんなこと考えてたの?」
「いや、そりゃ、無理にとは言わないけどさ。またいくらも機会あるだろうし」
「エッチ、スケベ、ケダモノ」
「すんません。じゃ、今日はいいです。反省します‥‥‥」
「なーんてね。ふふん。昇は私の身体大好きなんだもんね。それじゃ後でデザートにどうぞ、召・し・あ・が・れっ」って言いながら、尚は僕の腰に両手を回して、ギューって抱きついて来た。真っ白な頬を薄紅色に染めている。
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「ねえ昇、お昼、お弁当買って、多摩川で食べようよ。今日天気いいし」
「ああ、それいいな。そうしよう」
多摩川の護岸ブロックに座って、京王百貨店で買った「しゃぼてん」のヒレカツ弁当を広げる。風が通ってちょっと寒いけど、気になるほどじゃない。河川敷でテニスをする人たちや、釣りをしている人たちで、割と賑やかだ。
南の雲間から日差しが差し込み、尚の白い頬を照らし、陽光の中で産毛がキラキラと光る。風が栗色の髪を撫でていく。おお、今日は女神様じゃなくて、天使だね。ああ眩しいな。幸せだ。
「ねえ、やっぱり来年からフィジークに行くの?」 尚がお箸を割りながら聞いてくる。
「そうしようかなって思ってる。はい、お茶。あったかいぞ」
「ありがと。でもフィジークじゃ、さすがにまだ細いんじゃない。きっとまたラスボスにやられるわよ」
「ああ、そうなるんだろうな」
「そんだけ素質あるのに、あんた連戦連敗じゃないの」
「うん、まあ、でも自分よりちょっと上のレベルの方が、やってて面白いだろ?」
「ふふ、私、『負けっぷりのいい男』ってのも、割と好きになったわよ」
「よせよ。やだよ(笑)」
そう言って、僕は、足元に落ちてた石を、「よっ」って川面に投げた。
ズボンって音がして、驚いた水鳥がバタバタ飛び立った。
「あ、驚かせちゃった。悪いことしたな」
「飛んでった。どこまで行くのかしら?」
水鳥は、曇の合間に覗いた青空に向かって、どこまでも真っすぐ昇っていった。
僕は、尚を愛している。
僕は、尚と生きていこう。
僕は、尚と一緒に齢を取ろう。
そんなことを考えながら、僕は尚の手を取り、二人で空を見上げていた。
青春のおともにボディビルどうですか? (了)
あとがき ~ すべての読者の皆様に感謝いたします ~
読者の皆様。本作を最後まで読了頂き、ありがとうございました。
本作は、これで第一部、ナイスボディ編が完結となります。昇は結局2戦2敗で終わってしまいましたが、まだまだ発展途上ですから、これからどんどん強くなることでしょう。私の中では「明日のジョー」みたいに、いつも強い相手に挑んでかっこよく負けちゃう、というキャラをイメージしています。
それにしても、本作はpvで苦戦しました。前橋編で撥ねると期待していましたが、最後まで変わらずでした。テニス編の20分の1くらいでしたね。テニス編と異なり、スマホ勢がパソコン勢の4分の1程度で、かつブラウザバックばっかりでしたので、残念ながら、なろうの主な読者層と本作のテーマが完全に乖離していたようです。ジムや筋トレは、ある程度年齢のいった大人の趣味なのかも知れませんね。それでも、推定6~7人の方が更新ごとにすぐ読んでくれていたようですので、ごく一部のコアな読者様にはちゃんと刺さったようです。ありがとうございました。
それでは、また機会があったらお会いしましょう。それまでみなさんお元気で!
2024年9月27日
‥‥‥などと思っておりましたら、完結後も、なんだか細々と読んで頂けております。一部マニアの方が時折「お? なんだ? ボディビルの話なんてあったのか」と顔を出して通読して下さっているようです。わたくしも今更底辺脱出などと大それた望みは持っておりませんが、連載中から評価点が14のまま、ビクともしないので、当然ランキング入りも全くできず、多くの読者の皆さんの目に触れることができません。もし最後までお読み頂いた方で、なろうのアカウントを持っている方は、宜しければ評価を頂けると本当にうれしいです。
小田島 匠




