第九話
スマホを家に置いてきてしまったため俺はいったん家に帰ることにした。流石にあてずっぽうもなく校内を歩いて見つかるなんて都合のいいことはあり得ないわけだし、そもそもクミはあのまま家に帰ってしまったかもしれないのだ。俺は中庭を通り野球部のグラウンドを傍目で見ながら家路へと急いでいた………
その瞬間!
「危なーい!!!」
「ッッ!?」
ヒュンッ!っと咄嗟にかがんでいなければあっただろう俺の頭の位置に白い球状の物が通り過ぎる音がした。ガシャーンと向こう側の網にぶつかり、コロコロと転がってきた物を拾ってみるとそれは硬球であった。背中に冷たい水滴が走る。
「すみませーん!大丈夫ですかー!?」
と言って走ってくる球児はやがて俺の顔が見え始めた距離にくると
「あれ⁉もしかしてカンジが言ってた竜馬君か!?」
と言い出した。この健康そうな小麦肌に野球部と言えば定番の坊主頭の歯が白くて目が生き生きとしている好青年はもしや………
「清原君?」
「当たり!良かったわ、ちゃんと認識してくれてて。カンジが俺の事喋ったんか?」
「………うん」
俺は清原君に返事をすることをしばし遅れた。なぜかといえば今もなお打っているバッターの打球の飛ぶことといったら連続ホームランの勢いであったからでもあるし、その打席に立っている人はバッターと言う立ち位置にもかかわらず胸に大きい大きい隠し球をしておりそれらが打つたびに揺れること揺れる事!
………俺の目の奪われ方の割合は後者の方が強かった。そんな色んな意味での好打者を俺が傾注している様子に気づいたのか
「あー、あの子か!凄いよなぁ………俺らと同じ一年生なんだぜ。それに女の子であのパワー、守備もうまいとなると正直惨めな気持ちになるね………まぁ負けやしないが。名前は確か北条カナだったかな。」
「ふーん」
俺は打球だけでなく揺れるメロン、その両方を追ってみていたので清原君の選手紹介はほとんど聞いていちゃいなかった、次のセリフが出るまでは。
「あいつ双子の妹がいてさー。あー、あの次打つバッター。あの子も相当打つし守備も半端ない。
というか姉の方も守備よくてな、それで双子のゲッツーの連係プレーがあまりに鮮やかなんで監督が
令和のアライバコンビだ!なんて言っててな。まぁ俺も世代じゃないんでよく知らないんだが
昔の中日の名手たちだったらしくて………まぁつまりそのくらい凄いんだよ、あの双子。」
「………なぁ、この学校に双子の姉妹ってどれくらいいる?」
「うーん………先輩たちの上の学年の事情はよく知らないが一年生では北条くらいだと思うぞ、双子の姉妹なんてのは」
おいおい、まさか野球部と兼部してるなんて思いもよらなかったぜ。そりゃ文芸部なんていけないよな………野球部は忙しいし。でも前田先輩にちゃんと伝えたのか?あいつら。前田先輩を見るに連絡も取ってない風だったし、部活終わった後に捕まえて注意しとくか。部活中に部外者がずかずかと踏み込むのも悪いしな。そういうわけで俺は家に帰ろうとしたが
「あっ、監督どっか行った!おい、竜馬。ちょっとベンチで俺のバッティング見ていけよ。」
と誘われた。うむ、これは北条姉妹に近づけるチャンスか。俺は快く承知し清原君の後ろについていってグラウンドへ入っていった。
毎日更新なんて小説書くために生まれたロボットですよね………化け物だ………無理が過ぎるってばよ………