9 これが最強女剣士の実力だあああああ!
【セフィ】
トライブ・ランスロット
★4ファイター BP 9800/9800 OH
【大宗百樹】▽
シルバーアーマー
★3ファイター BP 7380/8000
パワードアーマー
★3ファイター BP 8500/8500 OH
1対2。
この状況を、俺のトライブが打ち砕くと信じるからな……!
シルバーアーマーがトライブに向かって、剣を左に回しながら迫る。
トライブは、アルフェイオスを正面に真っ直ぐ構えたまま、やや前かがみになり、相手の出方を伺う。
シルバーアーマーの剣が動き出した瞬間、トライブの目がわずかながら細くなった。
「はあっ!」
勢いよく回されたシルバーアーマーの剣目掛けて、トライブがアルフェイオスを力強く叩きつける。
ハートのロングブレードをグイグイ押していた剣の勢いを、アルフェイオスの芯で当てたトライブがあっさりと止めた。
激しい金属音が、先程とは比べ物にならない。
「すげえ……っ!」
思わず声を上げちゃったじゃねぇか……!
ハートを圧倒した相手だと知りながら、全く動じないトライブ。
「そんな程度?」と言ってるかのように、表情がものすごく涼しそうだ……。
その証拠に、トライブのBP、たった3しか減ってないじゃん!
そう思っているうちに、トライブがシルバーアーマーの剣をあっさりと横に退ける。
シルバーアーマーが体勢を立て直そうとするも、再び剣を正面に向けた瞬間、トライブがすかさずその真上からアルフェイオスを叩きつける。
上から。続いて下から。
そして、正面で立てて懸命にガードしようとしたシルバーアーマーの剣を、トライブがアルフェイオスを右から勢いよくぶつける。
「これだけで、ダメージ1210、1120、1780! しかも、トライブ全然力を溜めてない……!」
剣と剣がぶつかるたびに、シルバーアーマーの頭上に現れるマイナスの数字。
ハートと戦う前は8000あったBPが、早くも2000近くにまで落ちていた。
シルバーアーマーが後ろにジャンプして、剣をトライブに向けるものの、トライブに向かってなかなか走り出せない。
その中で、トライブの足が先に動いた。
勝負をまず一人終わらせる一撃。トライブのあの目は、そうだ。
「はあああっ!」
ほぼ動かなくなったシルバーアーマーの剣を目掛けて、トライブが上にかざしたアルフェイオスを振り下ろし、凄まじい音を響かせて、シルバーアーマーの手から引き離した。
アルフェイオスの生み出した風の真下で、地面に一本の剣が鈍い音を立てて落ちていった。
シルバーアーマー、BP0。戦闘不能。
召喚する時には見られなかった赤い光が、力尽きたシルバーアーマーを包み込み、そのまま光の中に消し去った。
これで、まず一人。
相手の動きを完全に止めたトライブのBPは、まだ9600以上残っている。
「初バトルのくせに、なかなかやるな……」
赤い光からようやく目を反らした百樹が、俺を睨みつける。
「たとえ初バトルだとしても、俺には最強の女剣士がついている!」
「自ら、最強と言い放つか。なら、最大BPから始まるパワードアーマーの力を受けてみるがよい!」
百樹のターンは、終わっていない。
そして、これがオーダーヘッドどうしの対決、負ければ、オーダーヘッドを失うこととなる。
だが、その言葉を前にして、トライブがあっさりと言い放った。
「どれだけの実力が知らないけど、楽しみね」
トライブ、俺の創作で最近戦わせてないからなのか、バトルめっちゃ楽しんでるし!
俺は俺で、実装されたトライブの実力を見るまで、マジでヒヤヒヤしてたんだからな。
「行け! パワードアーマー!」
百樹が後押しした瞬間、パワードアーマーがトライブに向けて走り出した。
そのスピードは、先程のシルバーアーマーとは比べ物にならないほど速い。
さすが、「パワード」という言葉がつくだけある。
それを見て、今度はトライブもアルフェイオスの先を膝の高さまで落としながら、迫るパワードアーマーに向かって走り出す。
そして、勢いよく振り下ろされるパワードアーマーの剣を目掛けて、振り上げた。
「はあっ!」
一見、重力に素直に従っているパワードアーマーのほうが有利な状況。
だが、剣を振り上げたトライブが、パワードアーマーの力をあっさりと止めた。
「すげぇ……。トライブ、びくともしない……」
わずか1秒だけ、両者の肩の高さで剣が拮抗したように見えたが、それはトライブの計算にすぎない。
そのまま、パワードアーマーの剣を上に押しやった。
そして、無意識にも見えるような動きでパワードアーマーが剣を戻した瞬間、すかさずトライブがアルフェイオスを相手の剣に何度も叩きつける。
ダメージ830、1120、1300、1780……。
瞬く間に、パワードアーマーのBPが崩れ落ちていく。
それどころか、バトルの時間が長くなるほど、トライブのアタックが強くなる一方だ。
私は、手加減しないから。
そう言い放った女王、格下相手にフルボッコ。
「完全に、トライブのペースだ……!」
俺も、百樹も、トライブの動きに釘付けになる。
その中で、トライブはこれまでで一番高くアルフェイオスを振り上げ、力強く叫んだ。
「はああああああっ!」
1分近くにわたって完全に動きを封じられたパワードアーマーが、振り下ろされたアルフェイオスを食い止めようと、ようやく剣を振り上げた。
だが、トライブは相手の振り上げた剣そのものに、躊躇なくアルフェイオスを叩きつける。
激しい金属音が響いた瞬間、パワードアーマーが鎧ごと震え上がった。
パワードアーマー:ダメージ4380
「4380……っ!」
キャラ設定した俺でも驚くよ!
百樹の顔なんて、完全に引き攣ってるし!
きっと、最後だけ本気を見せたんだ……。トライブらしいよ、マジで。
パワードアーマー、BP0。
最後は、剣と一緒に前に倒れていき、そのまま動かなくなった。
そこに、この世界から引き離される赤い光が包み込んでいく。
実質マイナス4桁いってるかも知れないほどに立て続けにダメージを食らい、頑丈そうな肉体すらボロボロになっていたパワードアーマーが、戦場から消えた。
かたや、トライブのBPは、★3ファイター二人相手に9800から9342とわずかに消耗しただけだ。
何より、相手からダメージというダメージを食らっていない。完勝だ。
「これが俺の、『剣の女王』だあああああああ!」
そう叫ぶ俺に、全く疲れの色を見せないトライブが、軽くうなずいた。
それから数秒経って、トライブも青い光の中へと吸い込まれていった。
「すげぇな……。いいもん持ってるじゃないか、セフィ……」
「まぁね。15年以上かけて強くし過ぎたキャラだから、こんなランクが下の相手に負けるなんて全く思わないよ」
「結構、自信持ってるようだな。俺はこれ以上お前に勝負を挑めなくなるが、この先にも暗黒騎士を守る多くのエネミーがいる。それだけは忘れるな」
「勿論だとも。暗黒騎士にさえ完勝すると、俺は思ってるから」
俺がそう言い放つと同時に、百樹の肉体が薄くなり、画面から消えていった。
エネミーは、突然現れ、突然消えていく。そういう存在だったのかも知れない。
トライブがどこまで強敵を倒せるかを、一度くらい見たい。
たった一度のバトルでさえ、俺はそう思うんだ。