5 初オーダー決定!
【キャラハウス 登録リスト】
★4ファイター トライブ・ランスロット BP9800
★4ウィザード ジル・ガーデンス BP7800
★3ファイター ソフィア・エリクール BP8600
★3ウィザード バーニング・レジーナ BP7000
★1マジックファイター ハート・ウィンゾール BP3500
ミッション
ブラックルーフ鉱山にいる暗黒騎士を倒せ!
ミッションヘッド:暗黒騎士(★4ファイター)
ファイターとウィザードは戦えない。
そんなルールがある時点で、俺のオーダーは決まった。
「トライブ一人だけで十分じゃね?」
あとの4人が、俺に向かってポカンと口を開けている。
いや、トライブさえも「分かったわ」と言う前に、少しだけ「あれっ」という表情を浮かべていたようにも見えた。
これは、他の4人に説明しないといけない。
単純に、俺の創作のメインだからとか、俺がトライブの剣の実力を信じてるからとかで納得してもらえる問題ではなさそうだ。
俺は、一度うなずいた。
「相手は、★4ファイター。だとすれば、同じ★4ファイターで行くしかない。トップレベルの実力を持っているトライブなら、難なくクリアできるはずだよ」
あ、みんなの前でトライブを信頼してる、というニュアンスの言葉を言っちゃったか……。
これは、何か言われてもおかしくないかも知れない……。
みんな、強いキャラとして書いてきたはずなのに……。
だが、俺がその後初めて耳にしたのは、目の前に見えている5人ではなく、アリスの声だった。
「セフィさん。『オリキャラオーダーオンライン』の通常ミッションで、一人しかオーダーを結成しないなんて、たぶん聞いたことないです」
「一人パーティーのRPGだってあるじゃん」
俺の知る限り、そんなないけどな。99%以上が複数パーティーのRPGだ。
けれど、『Sword Masters』の初めのほうは、トライブ一人で守護獣と戦ってたんだぞ。
「一人でも、ルール上は大丈夫ですけど……、ミッションの敵が暗黒騎士だけなんて、誰も言ってないです」
「えっ……。暗黒騎士を、倒すんだよな……」
「それは、ミッションヘッドです。途中で、セフィさんのオーダーにバトルを仕掛けてくる敵とか、オーダーとか普通にいますから」
あ、フィールド上の敵か。
どこのRPGにでも、フィールド上に敵がいて、ザコレベルだけどレベルアップのために戦ったりするよな。
そういうのを含めて、ミッションって言うのか……。何となく分かってきたような気がする。
トライブ一人じゃ、耐えられないかも知れない。オーダー、組みなおしだ……。
「アリス。さっき言ってたルールを簡単に言うと、4人まで、オーダーヘッドは★3以上の最高ランク、オーダーランクはミッションランク以下、ファイターとウィザードはバトルできない、だったよな」
「そうです。オーダーを結成する時、そのルールを守っていなかったら、私のところにゲームマスターから連絡が来ますし、セフィさんもミッションに行けないことになってます」
「まぁ、つまりダメということだな……」
改めて、5人の表情を見る。全員、ミッションに出たそうだ。
ただ、この中でどう考えてもアウトなクラスがいるんだよな。最終バトルで戦えない存在が。
「というわけで、改めてオーダーを発表します……。トライブとソフィア……、とハート!」
「えっ……、私でいいんですか! やった!」
真っ先に手を叩いたのが、★1マジックファイターのハートだった。
最後、言葉を溜めて名前を言ったのが、かえって意外と受け取ったのか。
「セフィさん、大好き……。★4ミッションで使ってくれるんだもん」
「まぁね……。やっぱり、二人より三人のほうがオーダーの戦力が上がるし!」
本音を言ってしまうと、トライブとソフィアだけじゃ、絶対二人で仲良くやってそうな気がするんだよな。
そこに、何かしら刺激を持たせたいと、少しだけ思ったんだ。
そして、ファイターとウィザード云々のルールがある時点で、必然的にジルとバーニング・レジーナが残されることになったけど、これ、念のためアリスに聞かないとな。
「なぁ、アリス。俺がキャラハウスから離れたら、あの二人、マジでバトルを始めないかな」
二人が同じ属性のライバルと分かってから1時間、キャラハウスに残す二人のことが、気になって仕方ない。
俺やトライブがいたのでバトルにならなかっただけだとしたら、みんないなくなって二人が残されたキャラハウスが、火の海になるかも知れない。
それはないと信じたいが、ルール上どうなっているかを確かめたかった。
「それはないと思いますよ。だって、セフィさんのもとで戦う存在だって分かってますから、魔術でBPを消耗したくないはずです。それに、キャラハウス内ではBPを減らすのは一切ダメになってます」
「じゃあ、大丈夫だね。起きても口争いか……」
一応、ジルとバーニング・レジーナの顔を見た。今すぐにでも喧嘩が再発するようには思えなかった。
ただ、いずれは二人の実力がぶつかり合うことも考えなきゃいけないけど。
「というわけで、ミッションに行ってくるよ。アリス、ブラックルーフ鉱山ってどこだ?」
「分からないです」
「えっ……。ミッションを出しといて、分からないってなんだよ」
いきなり、手掛かりなしかよ……。
普通に、街の人に聞かないといけない展開か……?
「セフィさん……。ここは、あくまでもキャラハウスで、ミッションはブラックルーフ鉱山の登場する創作世界で行われます」
「他の創作の世界に行くんだ……」
俺がうなずいている間に、アリスは複合機のような機械の音に気付いて、1枚の紙を取りに行った。
「で、これがこの世界の地図?」
「はい、アクセスポイントから先の地図です。見て分かるように、このキャラハウスは載ってません。いくら地図を読むのが好きなセフィさんでも、お手上げですかね~」
書いてないんじゃ、お手上げだよ。
「というわけで、ここからオーダーを連れて、セフィさんがテレポーションです!」
「つまり、ミッションに挑むための……、転送……」
「はいっ、そういうことです。そして、掛け声があります」
ファンタジーの世界なんだから、せめて「詠唱」と言おうよ、アリス。
「セフィさん、言って下さい。オリキャラオーダー、チャレンジミッション! って」
「オリキャラオーダー、チャレンジミッション!」
うわっ……、前から光が……!
俺の視界に広がっていたはずのキャラハウスは姿を消した。アリスも入れて6人のオリキャラたちも、その光に飲まれて、完全に見えなくなった。
これ、本当にオーダーが転送されてるんだよな……。
俺だけが転送されているわけじゃないよな……。
正解は、この後すぐ……ってか。