19 俺とオリキャラたちの打ち切りEND
「あのー、セフィさん。聞きたいことってなんですか?」
「ランクアップの話だよ。さっき、ソフィアのところだけ、ちょっと変なこと付け加えたじゃん」
「あー……、言ってましたねー……。棒読みです」
棒読み……(棒)。
というか、案の定アリスは原稿持ってるじゃん。
勉強、特に数学が出来ないという設定のキャラが何を言い出すんだと思ったら、読んでただけかよ。
「棒読みでも、ある程度のルールは理解してるはずだよな。このゲームの」
「はい。じゃないと、プレイヤーサポーターをクビになっちゃいますから……」
「なら、アリス。ランクアップの条件を聞かせてくれ」
アリスは、半ば「どうしよう」と首をかしげながらも、一度うなずいて、右手の手のひらを上に向けた。
「まぁ、こんな感じですね」
アリスの手の先に、いくつもの文字が浮かび上がった。
アリスの奴、完全に説明放棄だ。
まず、★1から★2へのランクアップ。
倒した敵の★合計が3以上でランクアップする。
つまり、★1のハートは、★3を1体倒せば次のランクに行けるということになる。
続いて、★2から★3へのランクアップ。
これは、倒した敵の★合計が6以上でランクアップする。
さらに、★3から★4へのランクアップだが、ここからクリアの条件がややこしくなる。
倒した敵の★合計が12以上で、かつその中に★4のキャラが2体以上含まれなければならない。
ソフィアの場合、★4キャラを1体倒したので、合計は4、しかも2体倒さないといけない★4キャラを1体倒していることになる。
最後に、★4から★5へのランクアップ。
トライブが倒したエネミーやミッションヘッドのランク合計は14となるが、ここまでランクアップすると★合計は関係なくなる。
そして、ランクアップの条件は、★5のキャラと6戦する中で4回以上勝利し、最後は★5キャラとのスペシャルマッチを1対1で行って、そこで勝利する。これが条件だ。
つまり、ミッションランクが★4のミッションにいくら挑んでも、ミッションヘッドはおろか、そこに集まってくるオリキャラたちも★4までしかいない。オーダーランクはミッションランク以下である必要があるからだ。
トライブがランクアップするには、この先★5のミッションに進むしかないということだ。
「なんか、★5だけランクアップがかなりムズくなってないか?」
「セフィさん、いい質問ですね~」
だから、○上彰はやめろって。
「ほら、どんなゲームにもバランスってあるじゃないですか。特に、最近のオタクたちは、全キャラ最高レベルまで上げるとか平気でやってくるので、そう簡単に★5にさせてあげないですし、★5のキャラ数も絞ってます」
「なるほど……。ソシャゲ歴ゼロの俺は知らなかったけど、ゲームってそんな調整をやってるんだ」
「そうです。それでも、昔からいるプレイヤーが強くなりすぎて、ポイントやアイテムで釣らないと新規ユーザーを取り込めないのが、ソシャゲの現状です」
なんで、俺のオリキャラにこんなこと言われないといけねぇんだよ……。
しかも、あまり勉強が得意でなさそうなアリスに。
いや、少しだけ深夜アニメ廃人とか書いた記憶があるから、そこからソシャゲオタになってるのかも。
「で、セフィさん。先に言っておきます」
「先に……って、もうランクアップの説明は書いてある内容で終わりだろ……?」
「ランクアップの説明は終わりですよ。でも、ランクダウンもあるんです」
「ランクダウン……。つまり、レベルが下がるということも、このゲームにはあるんだ」
上がったり下がったり、って言ってた以上はあるんだよな、ランクダウン……。
「はい。一番分かりやすいランクダウンが、さっき出てきた、★5昇格を懸けたスペシャルマッチ。あそこで、もし★5のキャラが負けた場合、入れ替わりで★4にランクダウンです」
「えええええええええ! つまり、★5の総数は、プラマイゼロってことじゃん」
「そういうことです。だから、簡単には★5になれないわけです」
「分かった」
俺は、ここで無意識のうちにトライブを見た。
何故かトライブも、ランクアップの条件をじっと見つめていた。
★5を5体倒せばいいのね、という、闘志に満ちた声が小さく聞こえる。
「それと、下のランクに2戦連続で負けたら、その時点でランクダウンです。
そして、ランクダウンしたら……、その先にもっと厳しいルールがあるんですけどねぇ……」
「何それ、聞かせてよ!」
俺は、この時まで次のオーダーの構想を頭に思い浮かべていた。
ランクアップやランクダウンの話までちゃんと教えてくれているんだから、当然俺が次のミッションに立ち向かう時に使える知識なんだろうと。
だが、アリスは冷たかった。
「もう教えませんよ」
「えっ……」
「それは、セフィさんが自分で考えて下さい」
ええええええ?
自分で考えろって、このゲームのルールは、ゲームマスターが決めてるんじゃないのかと?
「そういう設定ですよ。
でも、セフィさんがこのゲームにログインするとき、私、何を受けてもらいます、と言いました?」
「罰ゲーム……?」
「罰ゲームです。でも、自分のオリキャラと一緒にいることって、罰ゲームじゃないでしょ?」
「まぁ……、トライブたちを間近で見られて、罰ゲームのわけはないよな」
「でしょ……?」
嫌な予感がする。
俺、このゲームから追い出されるんじゃないかと。
「というわけで、セフィさん。今後、私たちのことは書かないでください」
「え……?」
ええええええ!
困るよ困るよ困るよ!
トライブとか、強い魔術師とか、これからもたくさん書きたいのに!
何しろ、15年以上かけてキャラ完成してるんだから!
「なら、現実をお話しましょう。
10月31日夕方6時半現在、
ブックマーク0(しかも一昨日ブクマを剝がされた)、
評価人数1人(★★☆☆☆)、
4pt。
セフィさんが、自作自演で俺TUEEEをやった結果です。
タイトルに『無双』とか『VR』とかを入れましたよね。
『エタる』というどん底をタイトルに入れて、
そこからの成り上がりの展開にしようとしましたよね?
タイトル的に、読んでもらえないわけがないんですよ。
それに、ツイッターでも毎日更新報告しましたよね。
それで、これですか。
最強のオリキャラを出しても、強そうに戦わせても
セフィさんの小説は読まれないということです!」
アリス。
その「現実」だけは、Web小説で絶対に言っちゃダメだ。
その言葉だけで、読者が離れていくだけだろ。
せっかくのオリキャラたちの世界が壊れるぞ。
てか、オリキャラから縁を切られるってことかよ……。
それが、長年エタらせた罰ゲームかよおおおおおおおおおおお!
一度も戦わせていない炎の魔術師二人はどうなるんだよ。
トライブやハートのランクアップとかどうなるんだよ。
こんなどん底エンディングなんて、酷すぎる!!!!!!!
遠くの方で、オリキャラたちがキャラハウスに向かって消えていく。
俺の悲痛な声は、もう届かない。
「というわけで、こんな成績を叩き出したセフィさんはキャラハウスに戻れません。
私たちを二度と扱うことのできない現実に戻ってください」
「嫌だ……。もっと『オリキャラオーダーオンライン』の世界にいたい……」
「ダメです。
あ、そうだそうだ。
今日は『お菓子ください!』の日ですね。
ここまで説明してきたお駄賃でお菓子をください。
あと、ログアウトしたら選挙には行って下さいね。
さよなら~!」
気が付くと、俺は現実世界、パソコンの前に座っていた。
「なんか、不思議な体験だったな……。しかも、強制的にエタらせるなんて」
そう言って、俺は立ち上がった。
「でも、これは作られたゲームの世界。他人からいろいろ言われても、俺は書き続ける」
自ら作ったオリキャラを召喚して、その戦う姿を間近で見ることが出来て楽しかった。
そのゲームそのものに不満はない。
だから、俺は、俺自身TUEEEじゃなくても、俺のオリキャラをオーダーにして戦わせる小説を書きたい。
俺とオリキャラの冒険は、始まったばかりだ。
……って、これは本当にエタる文末じゃん。よくないよくない。
「完結済」にしましたが、事実上エタった作品です。
エタった理由は、アリスがしゃべってくれた通りです。
作者自身が主人公だからこその、前代未聞のエンディングを決行しました。
ただ、オリキャラたちのバトルは書きたいので、これを「全ての始まり」にする感じで、これからもこのシリーズを続けていけたらと思います。