12 無数のトゲを持つ剣が「剣の女王」に襲い掛かる!
【セフィ】▽
ソフィア・エリクール
★3ファイター BP 273/8600
トライブ・ランスロット
★4ファイター BP 9800/9800 OH
【エリーゼ】
スターダスタ
★4ファイター BP 9999/9999 OH
どこから女王を参戦させるか、俺は具体的に指示してこなかったが、ルナティカを倒したソフィアの残りBPを見る限り、もう一人の★4ファイター、スターダスタに勝負を仕掛けるのは厳しそうだ。
「ソフィア。★4を一人倒したんだから、ここで交代だ」
ソフィアが振り向いて、鋭い目で俺を睨みつける。
「セフィ。私は、まだ戦えるから……。もう一人★4を倒せれば……、ランクアップに近づけるはず……」
おいおい……。
プレイヤー、俺だぞ……。しかも、俺のオリキャラだぞ……。
なのに、さっきからソフィアは自分の意思を持っている……?
オリキャラだから仕方ないのかも知れないし、そもそも無理をさせることの多かったキャラだから、これまた仕方ないのかも知れないけど……。
ひょっとして、俺、信頼されてない……。
だが、それを見ていたトライブがソフィアに声を掛ける。
「ソフィアは、休んで傷を癒した方がいい。肩をやられたんじゃ、スターダスタの攻撃に耐えられないかも知れない」
「トライブ……」
ソフィアの目線が、俺からスターダスタの持つ黒い剣に向いたタイミングで、俺もその剣を見た。
ブレードが真っ直ぐな、よくイラストで描かれるような剣ではなく、両側の刃に細かいトゲが付いているようだ。
「あの剣で直接斬られたら、ひとたまりもないね……。トライブの言う通り」
トライブがうなずき、軽く俺と目を合わせる。
てか、ソフィアはそれほどまでにトライブと仲がいいものな……。
お互いの性格、分かってるし……。
「トライブ、スターダスタを叩き潰せ!」
「分かったわ」
言うが早いか、トライブがスターダスタに向けて真っ直ぐアルフェイオスを伸ばした。
「オーダーヘッドどうしの対決かぁ。どっちが強い剣士か、証明してやろうじゃねぇかぁ。この破壊力抜群のスピンブレードの前に、お前は体ごと突き刺さる!」
「私を、甘く見ないでちょうだい」
トライブ、まだ剣を合わせてもないのに、早速強気のセリフを浴びせたぜ……!
おそらく、絶対勝てるという自信がトライブの中にあるはずだ。
「よし、来い!」
スターダスタの声に誘い出されるように、トライブがアルフェイオスをやや引き気味にして走り出す。
それから少し遅れて、スターダスタがスピンブレードを立てながら、トライブに向けて駆けだす。
そして、お互いの剣が互いに届くところまで近づいたとき、先に攻撃を仕掛けたのはトライブのほうだった、
「はあっ!」
「おっと!」
トライブが、アルフェイオスをスピンブレードのトゲのない剣身に叩きつけようと、下から振り上げた。
だが、トライブの肩が動いたのを見て、スターダスタがスピンブレードの柄を軽く回し、トゲのある面を向けてアルフェイオスに襲い掛かった。
「スターダスタ、止めやがった……!」
細かい金切り音の後、俺は息を飲み込んだ。
アルフェイオスの刃がスピンブレードのトゲが一直線になり、スピンブレードの本体に衝撃を与えられない。
それ以上に、そこからアルフェイオスをスピンブレードの本体に斬り込ませようとしても、トゲが邪魔で入っていかない。
スターダスタのダメージ、325。
★3相手に完勝した時と比べれば、かなり低い数字だ。
「面白い武器を扱うじゃない。普通に当てたら、力が分散してしまう剣ね」
「面白いだとぉ? なら、もっと面白いものを体で感じろぉ」
そう言うなり、スターダスタが今度はスピンブレードを横にして、一度手前に引いたアルフェイオスに襲い掛かる。
トライブも、アルフェイオスをより強く握りしめ、襲い掛かってくるトゲと垂直になるように剣を回した。
「くっ……!」
トライブが、襲い掛かってきたスピンブレードを止めようとするも、そのガードをトゲが一瞬で打ち砕き、アルフェイオスをトライブの手前に押していく。
それから、トゲの力だけで、アルフェイオスをトライブの左に傾けていった。
トライブ・ランスロット:ダメージ825
うわっ、最悪……!
トライブが、初めて相手の一撃に押された……。てか、かなり破壊力あるぞ、あのトゲ!
でも……、俺はトライブがそう簡単に圧倒されるなんて思ってねぇからな……。
同じダメージを、二度も受けない。それがトライブの強さの一つだから。
「なかなかの力……。トゲを相手に勝負をする限り、時間がかかりそうね」
一度後ろにジャンプしたトライブが、今度はアルフェイオスの剣先をスターダスタの正面に向け、相手の足が動くのを待った。
すると、スターダスタが軽く笑って、トライブに向かって走り出す。
その2歩目を力強く踏んだ瞬間、スターダスタが剣の先を突然空に向け、叫んだ。
「永遠の終わりを告げよ――際限なき星屑の舞!」
「あっ……!」
しまった……!
エリーゼのオリキャラが、ファイターなのに必殺技を持っているってこと、どうしてソフィアとルナティカのバトルから気付かなかったんだよ!
相手の強い一撃を許しちゃうじゃん……。
でも、トライブがそこまで計算して、剣を構えて待っているかも知れない。いや、そうであってくれ。
「死ねえええええええええ!」
「そうはさせない!」
まるで流星でも落ちてくるような軌跡を描いたスピンブレードに向かって、トライブがアルフェイオスを斜めに振り上げた。
重力をつけたはずのスピンブレードが、アルフェイオスの一振りで、あっさりとトライブの右に曲げられる。
叫んだ技が命中しなかったスターダスタが、トライブに振り返り、すぐさま体勢を元に戻そうとした。
だが、一度隙を見せた相手を、トライブが見逃すはずはなかった。
「はあっ!」
スターダスタが無意識のうちに斜め上に傾けたスピンブレードに向けて、トライブがアルフェイオスを振り下ろす。
相手の剣の一番高い場所から、刃に沿うような角度だ。
「何をする……!」
軽く目をつぶったスターダスタが、トライブに向かって苦し紛れに叫ぶ。
トライブが、早くも次の一撃を与えようと、やや声を大にして叫んだ。
「剣身そのものには力がかかりにくいはずよ!」
たしかにそうだ。
両側にトゲある時点で、力を入れようにもトゲに力がたまってしまうからな。
俺が納得して見ているうちに、トライブが二度、三度とスピンブレードの剣身にアルフェイオスを叩きつける。
1130、1250、1480、1590……。
1000を超えるダメージが、次の攻撃を封じられたスターダスタに繰り返し襲い掛かった。
先程のバトルで見せたような、少しも手加減しない攻撃が、スターダスタを次々と追い込んでいく。
それはまさに、女王の本気。
「はああああああっ!」
バトルの決着を確信したかのような、トライブの高い声がスターダスタとエリーゼの耳に響くと、アルフェイオスがスピンブレードに向かって一気に振り下ろされ、そのまま地面に落ちていった。
スターダスタ、BP0。戦闘不能。
「やったああああああ!」
トライブがトゲにてこずっていたのが、はるかに昔のことのように、気付いたら俺は叫んでいた。
その前で、エリーゼが膝をつく。
「なかなかのファイターを、持っているじゃない……。感心するわ……」
次第に薄くなっていくエリーゼは、その言葉だけを残してオリキャラごとその姿を消した。
その様子を、トライブが俺の横で一緒になって見ていた。
青い光が襲い掛かっているときでさえ、トライブは自らの戦いに手ごたえを感じているかのようだ。
てか、あんなハンデのある武器で攻められても、トライブのBPは8239も残ってるんだよな……。