少女の灯火
二人の後をついていくと鼻に腐乱臭が漂って来た。
宿屋を出て10キロ程歩くと野犬の吠える声と一面灰色の世界が私の世界を変えた。
「うッ」
吐き気をおさえられずえずいた。
夢だと思っていた。目覚めた時の全てを。
小説の中に入り込んだんじゃない。
ここで、生きてるんだ。
家が燃えてしまったのか、半分焦げて真っ黒に染まっている家の下で少女が死んでいるであろう赤ん坊を抱いていた。
涙を流さずその瞳はどこか虚ろで硝子細工の精巧に作られた人形のように澄んでいる。
その場を通りすぎようとした時私は思わず声をかけた。
「大丈夫?」
その言葉に前を歩いていた二人がピタリと止まり振り返ると息を飲むように固い表情で私をみた。
「お前、声なんかかけんじゃねぇよその子はもう長くない。助からない」
「よくみてみろ。脚が潰れてるし、もう、虫の息だ」
何でそんなこと言うのよ。分からないじゃないそんなこと。
思わず目をつり上げて二人をキッと睨むと微かな音が耳を掠めた。
「あ、ァァリが」
枯れ果てたように霞む声。
でも、しっかりと私を見つめる瞳に少しだけ光が戻ったように少し微笑んだように見えた表情から目が話せなかった。
そして静かに深い眠りについた。
一歩また、一歩ずつ身体を奮い立たせてその子のそばまで寄って手を口元に持っていくともう、呼吸の風は聞こえなかった。
震える身体に比例して涙が溢れて止まなかった。




