戦慄のスラム街
鼻がつんざくような異臭を感じ取った瞬間、私の意識が一気に浮上した。
余りの臭さに顔をしかめる。お母さん、なんか焦がした?
もう、と抗議の声をあげようと、目をゆっくりと開けるとあまりの惨状に全身が悲鳴をあげた。
「ひッッ」
息が声になり、漏れる。
自分の部屋で寝ていたはずなのに気付けば私は暗い路地のような場所にいる。
ボロボロの服を着たまま死人のような顔で歩いている。
ガリガリに痩せ細ったまま、息絶えた人が転がっている。
それは、まるで終焉のような光景だった。
なぜ私はここにいるの
周りを見れば見るほど、私は混乱した。
とりあえずここを離れないと、そう思い立ち上がった瞬間だった。
「伏せろッッーー」
そんな声と共に無数の矢が降ってきた。さっきまで歩いていた人たちがバタバタと倒れて動かなくなっていく。
四方八方に広がる刃に私の体は動かなかった。ガタガタと小刻みに震える身体を落ち着かせようとするも、どうしようもなくぎゅっと目を閉じた。
「大丈夫だ」
掠れた声と共に、いつの間にか矢が空中を切る音は消えていて、私は誰かに抱き締められていた。
そっと目を開けるとガッチリとした男の人が、心配そうに私を見ていて、何故かそれに酷く安心して、意識が一気に降下していった。