プロローグ
黎明の剣と言うのは非常に有名な話である。
今から遡ること150年程前、各国はその勢力をを広げようと、戦争を繰り返していた。
血が国を覆い尽くし、人間は人間に殺され、敗戦した国は植民地となり、民は飢えに苦しみ死んだ。
奴隷にされ、人の尊厳すら奪われ壊れ自殺したものもいた。忘れ去られ、弔われることすら無いまま朽ち果てたものもいた。
戦場にはそんなものたちの慟哭が、悲壮が満ち溢れていたのだ。
皆、この地獄から逃げ出すために亡命をするものも大勢いたが大半は国境で殺される。国を裏切ると言うことは、敵となったも同然であるから。
それを知っていながらも、止められないのだ。いつか、この深く底の見えない夜が明ける事を、平和を切望して止まないのだ。
そう、そんな時だった。
最後の戦争(帝国対ニーディア王国)が始まった。
帝国は戦争で敗戦したことなど無く、対してニーディア王国は歴史の浅い諸国。帝国になど勝てるはずもない。
戦地に向かう兵士たちは、死刑場へ行くも同然だった。
当然のごとく兵は減っていき、屍が転がっていく。
皆、無力さや、やりきれなさに、諦めようとしていた時
「クソッ」
一人の少年が剣を取った。剣を抱え曇る頭上に叫ぶ
「諦めるなッ生きることすら叶わなかった友や同胞を侮辱するなッ最後まで抗ってみせろッここで諦めると言うことは家族に死ねといっている事と同じだッ」
皆はッとした。その言葉に涙しながら剣を握り締める。
一つの鮮明なる決意とともに駆け出した。
そして、少年は獣のように、鋭い瞳と己の剣で誰よりも早く敵を切り、闇を切り裂いていく。
それに続くように兵士たちは、弾丸のごとく敵を凪払っていく。
曇の濁りが溶けていき、光が差した頃立っているのはニーディア国軍だけだった。
血を全身に浴びながらも狼狽えることもなく少年は、荒野を見下ろす。その横顔は、恐ろしく冷徹で美しく、だけど、どこか寂しげだった。
だが、少年否、英雄の名を知るものは誰一人としていない。
だから、誰もが彼をこうよんだ「黎明の剣」と
ようやく深い夜が明け、平和が訪れることを皆歓喜した。
以来「黎明の剣」は、平和の象徴であり、ニーディア王国の希望であり、国を守る盾なのだ。