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ラベンダーの香りがした。 後編

「だからどうしたのよ?」

わたくしが二度目に尋ねると、咲菜は冷静さを取り戻し言う。

「私達の追う連続殺人の犯人が、ツイッターで犯行予告を出したの。」

ふむ、犯行予告……。犯行予告?どこかの怪盗じゃあるまいし。

「はい?」

わたくしは咲菜の口から出てきた言葉の意外さについ、聞き返す。

すると、咲菜は再び言う。

「私達の追っている事件の犯人と名乗る人がツイッターで犯行予告を出したの。」

わたくしは焦り、その詳細情報を聞く。

「何時、何区、何丁目?」

わたくしの焦り用に少し驚いたのか、間を開けて咲菜が言う。

「時間は午後4時、場所は丸の内。それ以上は不明……よ。」

「丸の内……。」

「行くわよね?」

「ええ!」


ということで、わたくしたちは丸の内に着き、昼食を済ませて調査に入る。

「調査……と言っても何もできることはないからね。」

わたくしが言うと

「そうねえ。」

と咲菜。


と、こんな調子で午後4時を迎えた。

警察も完全体制でわたくしたちも町を見回っている、その時。

「キャァァァァァァァァァ!」

このビルの多い町中に甲高い声が響き渡る。

わたくしは腕時計へ目を下ろし言う。

「午後4時ピッタリ、やられた!」

わたくしと咲菜は警官たちと共に声の方へと向かう。そこには路地裏で血を流して倒れる女性がいる。

その光景を見て、硬直する咲菜にわたくしは

「すっかり忘れてた!発信機は!?」

すぐさま尋ねると、咲菜は慌てて受信機を取り出してそこへ目を移す。

「近くのカフェ、そこの角を曲がったカフェに依頼者が!」

そう言いながら咲菜は走り出す。わたくしも。

カフェに着き、依頼者を見るとフードを着てホットダージリンティーと書いてある領収書を横に置き、それを優雅に飲んでいる。

咲菜は背を向けて座っているその依頼者に向かっていこうとするが、

「待って。」

とわたしが止める。

「なぜ!?」

咲菜が振り向いた。

そこでわたくしは言う。

「だって、あの子がもし路地裏で人を殺してからここに来たのだとしたら、あのダージリンティーからは湯気が立っているはずだよ。ホットだからね。でも立ってない。要は時間が経ってる。つまりあの子が殺るのは不可能。」

わたくしの言葉を聞き、我に返った咲菜は

「確かにね。でも一応私が後ろから触ってくるわ。」

そう言って依頼者を10秒ほど気付かれないように触れ、そしてこちらを向き、咲菜は首を振った。


~翌日~

昨日の犯行では結局犯人を捕まえるまでに至らなかった。

昨日に引き続き、ツイッターで犯行予告が出た。

そのこともあり、今日は咲菜に起こされずとも起きている。ちなみに今がお昼だから起きているというわけではない。自主的に起きた。

とまあ、といあえずその犯行予告の内容はこう。

「今日の午後7時。渋谷にて一人、殺させてもらう。」

それを受けてわたくしたちはすでに渋谷に現着している。

そして、犯人逮捕に向けてカフェにてお昼に軽食を食べつつ最後の作戦会議をしている。

「今回も犯人はおそらく路地裏での犯行でしょうね。」

咲菜が言う。

わたくしは紅茶を少し飲み、

「そうでしょうね。」

と言う。

すると咲菜がひらめいたように言う。

「なら、今回は地図と照らし合わせて犯行の起きやすそうな路地を見つけて先回りで!」

わたくしはその案に頷きながらのパンをかじる。


~午後6時57分~

わたくしたちは、昼の会議で犯人が犯行に利用すると思われる路地を2つまでに絞った。幸い、その二つは近くにあり、二人で見まわることができる。

にしても、もう暗くなってきてしまった。雨も降りそうだ。

そんなことを考えていると、

「あのフードの男、少し怪しいように見えるのは私だけ?」

そう言って咲菜が黒いフード姿の男を指さす。

わたくしはその男に視線を向け、考える。

視線は見えにくいが、頭の動きからして明らかにあたりを見回っている。

その上、ポケットから出てるのはナイフの柄?

とにかく怪しい。追いかけ……。いや、これであの男でなかったらまた一人犠牲が……。

そう考えていると、男が路地へと向かいだした。

「そうだね。あの男を追おう。」

わたくしはそう言って、咲菜と走り出す。

男が向かっているのはビルの裏の路地。

この路地は、ビルを真上から見てわたくしがいる辺の方を下の辺とするとこのビルの右の辺と上の辺が路地に面していて、左、下の辺は道路に面している。

「じゃあ、わたくしが反時計回りで行くので、咲菜は時計回りで。つまり挟み撃ちにしましょう!」

わたくしが言うと、咲菜は頷いて左に行き、わたくしは右に行く。

わたくしは右の辺に面している路地に入り、走っているうちにふと思うことがあり、止まる。

わたくし、いつだか証拠がないのもヒントなどと考えたことがあったよね。それはその事件の真相についても同じ考え方ができるのではと。そう思う。

つまりは、あれだけの殺人をして証拠も残らず捕まらない……。警察側?

と思ったところで、わたくしは首を振り、走り出す。

まあ、とにかく捕まえてみればわかる話。

でもやっぱり、わたくしと咲菜に解けない事件なんてない!どんな事件が来ようとも!

わたくしはついに犯人を捕まえられるという気持ちに満ちて、路地の曲道を曲がった。

咲菜も犯人もいない?

「あれ……。」

わたくしは小さくつぶやく。


その瞬間……。

「うっ……!」

わたくしの腹部に激痛が走った。

わたくしはすぐさま視線を落とす。

すると、わたくしの腹部からは月光を反射して奇しくも美しく見えてしまう、赤にまみれたナイフの刃先が見えた。

え?

何が起こったの!?どういう事!?

一瞬の出来事に、わたくしの脳すらついて来ない。

わたくしは何もできないうちに立ってすらいられなくなった。

そのまま前にうつぶせに倒れる。

わたくしの倒れた地面は赤に染まっていく。


そのまま意識が遠のく中、ひとつだけ、確かなことがあった。















ラベンダーの香りがした。


果たして彼女たちはこの事件を解き、幸せだったのでしょうか?

事件というものは、ある日突然訪れます。

それが何であれ、頭に絶対の自信がありどんな事件でも解決できたとしても、解かないほうがいい事件もあるのかもしれませんね。




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この作品は評価が良ければ、続編を書こうかと思っています。

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