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マリーとハンリー  作者: 早乙女なな
第二章 母の居場所
8/8

8 再会

マリーとハンリ―たちは、ずぶ濡れのまま街を歩いていた。

「こんなに濡れるなんて聞いてないけど」

マリーは思わず不安を叫んだ。

「仕方ないだろ?魔法で濡れない水なんて今までに一度も発明されてないんだから」

ハンリ―はそう言うと、みんなと角を曲がり、ふうとため息をついた。


少ししてハンリ―が

「いいかい?」

と話しかけた。

「お袋とメアリーと親父は向こう側を探してくれ。俺とマリーはあっちだ」

「わかったわ」


サレンはそう言うと、ウィリアムとメアリーを連れて、ハンリ―の言う向こう側に向かって行った。

「よし、俺たちも行こう」

ハンリ―はそう言うと、あっちの方に向かった。

「あ、待って!」

マリーは慌ててハンリ―の後を追った。


マリーとハンリ―は目に入った家の全てのインターホンを押し(それしか方法が見つからないんだよとハンリ―は言った)、相手が違えばその度に言い訳を考えて、その家を去って行くのだ。

しばらくして、マリーとハンリ―は近くのカフェで休むことにした。


飲み物も来てから少しして、マリーが

「何で?」

とハンリ―の方を見た。

「は?」

ハンリ―は訳がわからないという顔で言った。


「何で私とだけにしたの?仲のいいメアリーとも来れたのに」

マリーはそれだけ言うと、頼んだアイスココアを飲んだ。

「え・・・・・・」

ハンリ―は一瞬ためらった後、ささやくような声で言った。

「実は、お前とだけで話したかったんだ」


「え?」

マリーはどうしてと言って首をかしげた。

「色々と話したくて」

ハンリ―は恥ずかしそうに言って、自分の分のドーナツを頬張った。

「へえ」


マリーはココアを全部飲み干すと、ハンリ―に見られないように、自分の顔が熱くないか触って確かめた。

カフェを後にして歩いていると、マリーが

「ママはきっと、不思議な場所に目をつけるはずよ。ママは魔法が使えたし、そういうのが大好きだったから」

と言った。


「俺も探してはいるんだ。でも、普通の家ばっかりなんだよ」

ハンリ―はため息をついた。はあ、疲れる。

するとマリーが

「いいよね、ハンリ―の両親は」

と言った。


「仕事が素敵だもの。ドラゴン狩りとか、人魚狩りとか。パパは私と遊ぶことしか考えてなくて、少ししつこかったの。ママはもしこうなったどうする、もしああなったらどうするって妄想をしてばかりで、嫌だった」

ハンリ―は

「いや」

と首を横に振った。


「お前のせいじゃない。両親が悪いんだ。お前の家は貧乏じゃないんだろ?なのに生活は最悪で、俺の家は貧乏だけど生活はまあまあいいなんて、同じ人間なのに不公平だよ」

マリーは何とか、騒いでいるハンリ―をおとなしくさせようとした。

「わかったわ、ありがとう。でもね、私は早くママを見つけたいの。そんなことで怒ってる場合じゃないの」


しばらくすると、ハンリ―はやっとのことで落ち着きを取り戻した。

「よかった、やっと静かになった」

マリーはハンリ―に聞こえない小さな声で言った。


「なあ、どうするんだ?もう何件周ったかわからないよ」

マリーの言葉が聞こえていないハンリ―は、普通に会話を続けた。

「必死に探すしかないわ。見つけたら、ウィリアムおじさんたちに電話で知らせましょ」

マリーはそう言うと、改めて周りの家々を探した。


突然、マリーが

「ハンリ―!」

と叫んだ。

「何、見つかったのか?」

ハンリ―が言うと、マリーが

「ここから魔法を感じるの」

と、目の前にある一軒家を指して言った。


「私、小さい頃から魔法を感じ取るパワーがあるのよ」

ハンリ―も緊張の面持ちの中、マリーは思い切ってインターホンを押した。

少しして、玄関にはミア・ライブリーその人が現れた。

「マ、ママ・・・・・・?」

マリーは戸惑って、ミアの顔をまじまじと見つめた。


・・・・・・やっぱりママだ。


「ママ!」

マリーはまず嬉しさもあまりミアに抱き着く。しかしすぐに我に返った。

「ママ・・・・・・」

マリーの内なる怒りに気づいたミアは

「あ、お茶でも、ね」

と言って中に入った。


マリーは慌ててミアの後を追う。

「どうして私を追い出したの?どうして私に無理やり出ていかせたのよ」

「マリー、話を聞いてちょうだい」

ミアはそう言うと、さっとお茶を出して椅子に座った。


「マリー、私とパパはあなたが嫌いだった訳じゃないのよ。ただ、家に迷惑をかけたくなかっただけ」

「私がいたせいで、家族に迷惑をかけてたの?私が迷惑の元だったの?」

自分の失言に気づいたミアはとっさに

「違うわ」

と答えた。


「あなた、小さい頃からよく魔法を出してたし、あなたも学校とか家で大変だろうなって」

「でもよく平然と自分の子どもを外に放りだしたものね」

マリーが反撃した。

「大変だろうなんて思っていたら、学校もやめさせたり、引っ越しも出来たはずよ。でもあなたたちは私を追い出した・・・・・・そんなに私が邪魔だった?」


すると、隣で静かに話を聞いていたハンリ―が

「ちょっと電話してくる」

と小声で伝えて、家を出た。



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