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マリーとハンリー  作者: 早乙女なな
第一章 捨てられた女の子
4/8

4 人魚狩り

マリーは、嫌な気配を感じて目を覚ました。

「え、え、ええええ?!」

なんと床には水たまりが出来ていて、ベッドの上も水でぐしょぐしょだった。

マリーはまた頭をぶつけないように気をつけて、慌ててベッドから離れた。ベッドの上を見たが、ハンリーがいない。

「きっと、下に避難してるんだわ」

マリーはそうつぶやくと、急いで下に向かおうとした。

すると、マリーの手から突然水が噴き出した。

「キャー!」

マリーは」何とか水を止めようと試みた。


ウィリアムとハンリーがやったように手をかざし念じてみたが、無理だった。

その間にも、水位はマリーの頭に迫ってくる。

マリーは半分パニックの状態で、この状況をどうにかしようと手を振ったり、手のひらを閉じたり開いたりしていた。

そしてついに水が頭までつかり、息が出来なくなった。

マリーはもがき、泳いででも階段に向かおうとした。しかし、息を止めているのも限界がある。そしてとうとう、もう無理だと思った次の瞬間・・・・・・。


「はあっ!」

マリーは目を覚ました。

「はあ、はあ、はあ」

マリーはベッドも床も見てみたが、どこも濡れてなどいなかった。全ては夢だったのだ。

「よかった、夢だった・・・・・・」

マリーはそう言うと、すぐにリビングに向かった。

リビングには既に、サレンとウィリアム、ハンリーが席についていた。

「おはようございます」

マリーがあいさつすると、サレンが答えた。

「おはようマリー。メアリーはまだ寝てるの。全く困っちゃうわ」

「マリー、ここに座れよ」


ハンリーが隣の席を指して言った。マリーは言われた通りにハンリーの隣に座った。

「何食べたい?」

と、ハンリー。

「色々あるぜ。まず豪快なのがドラゴンのチキン。軽く食べられるのがマーメイドの刺身」

「刺身も十分に豪快だと思うわ」

マリーはテーブルを見て言った。

「ハンリーの家、お金持ちなの?」

「親父が人魚狩りの名人で、お袋はドラゴン狩りの達人なんだよ」

ハンリーは誇らしげに笑ってみせる。

「そういえば、今日の午後に人魚狩りの予定があるんだ。一緒にどうだ?」


ウィリアムがマリーに向かって言った。

「もちろん行きたいです!私、前から人魚を見てみたかったんです」

「君の期待を裏切ることになるかも」

と、ハンリー。

「人魚は荒っぽくて、子どもを産む時期になると人間を無理やり海に引きずり込むんだ」

「知ってるわよ、そんなこと」

マリーは失礼ね、と言ってハンリーを睨みつけた。

「私、どうしても行きたいんです。一度この目で、ヒレだけでも見てみたいんです」

ウィリアムはお腹を抱えて笑った。

「君がそこまで言うなら、喜んで連れていくよ」

そう言って、テーブルの上の食事に目を落とした。


「さて、ドラゴンのチキンにするかい?マーメイドの刺身にするかい?」

「じゃあ、ドラゴンのチキンで」

マリーが言うと、サレンが大皿にチキンを乗せた。

「全部食べられるかしら?」

ここの三人家族が仲良く笑い合っている姿を見て、マリーはうらやましがった。

(自分にも、こんな家族がいたらな。)

マリーが一通り食事を食べ終わると、ウィリアムが口を開いた。

「さてマリー。昨日言っていた魔法の制御の練習をしよう。何を練習したい?」

マリーは一言

「火がいいかな」

と言った。

「火に慣れておけば安全だろうし、焼かれる心配もないし」

「では、さっそく始めよう」

ウィリアムがうなずいた。


練習にはハンリーにも来てもらっていた。マリーはというとなかなか上手くいかず、庭はもう灰だらけになっていた。

「やっぱり上手くいかないわ」

「そう簡単にはできないよ。ハンリーだってしばらくは出来なかったんだ」

ウィリアムがマリーに声をかける。

「俺は半年かかった」

ハンリーは笑いながらマリーを励ましている。

「私は小さい頃から訓練されたわけじゃないのよ。環境が違いすぎるわ」

マリーは半分諦めていたが、最後の一発と心に決めて、手のひらから火を出した。そして念じた。

すると、マリーの手のひらにある火が、マリーが手をかざしたと同時に消えた。

「あの、別に気を使わないでください。出来ないものは仕方ないので・・・・・・」


マリーはウィリアムに向かって言ったが、ウィリアムはきょとんとしている。

「違うよ。私は何もしていない」

「ハンリー?」

マリーは次にハンリーに疑いの目を向けた。しかしハンリーも

「俺も違うよ」

と言って、ニコッと笑った。

「じゃあ二人とも離れてください」

マリーに言われて、二人はすぐに離れた。

マリーはさっきと同じように火を出す。手をかざして・・・・・・消えた。

「嘘だ、そんな・・・・・・・」

「おめでとうマリー。コントロールが出来るようになったな」

ウィリアムはそう言うと、マリーの頭を優しくなでた。

「私、本当に出来たのね!」

マリーは叫ぶと、ウィリアムに深く頭を下げた。

「ありがとうございました!」








ウィリアムとハンリー、マリーが人魚狩りに出かけたのは、それから数時間経ってからだった。

「風はどうだ?」

ウィリアムがマリーに向かって言った。

「はい、とても気持ち良いです」

こういうの最高、とマリー。

「旅行に来たんじゃないんだぞ。人魚を捕まえに来たんだ。気持ち良いのは今のうちだけだよ」

ハンリーが厳しく言った。

「そんなこと、わかってます」

マリーはそっぽを向いた。

ハンリーはウィリアムのところに行くと

「全く。あいつは本当に人魚の恐ろしさを知らないんだな」

と言った。

「マリーは人魚のことは知っているだろう。人魚のせいで船が沈んだというニュースがラジオで何回も流れていたからな」


ウィリアムはハンリ―をなだめると、マリーの所へ向かった。

「気をつけろ。いつ人魚が現れてもおかしくない」

「水面に人魚のヒレの影が見えるからですよね」

マリーが真剣な顔で言った。

「私のおじいちゃんも、人魚のせいで亡くなったんです」

「え?」

マリーの突然の言葉に、ハンリーは走ってマリーの隣に来た。

「嘘だろ?」

「嘘じゃないわ」

と、マリー。

「私がまだ三歳の時、おじいちゃんは人魚狩りの漁師だった。ある日、人魚の中のグループのどでかいボスに襲われて、海に引きずり込まれたんです。その後、おじいちゃんの骨の一部だけが帰ってきて・・・・・・」


マリーはそれ以上何も言わなかった。マリーの頬を、大粒の涙が伝い落ちる。

「マリー」

ハンリ―はマリーの背中をさすると、不思議だと言うように首をかしげた。

「じゃあ、何で人魚が見たいなんて」

すると、マリーはハンリ―の方を見て

「復讐するためよ」

と言い放った。



マリーは、ラジオでの放送内容を鮮明に覚えていた。

最初は人魚というキーワードしか耳に入ってこなかったが、六十代、ライブリーというキーワードを耳にして、祖父の事件を知ったのだ。

マリーはすぐに両親に確認した。そして、その後に祖父の様子を見に行くと、人魚が海面で高笑いする光景が見えたのだった。

その時から、マリーは人魚への復讐を固く心に誓ったのだった。



「マリー?大丈夫か?」

ハンリ―の一言で、マリーは我に返った。

「え?あ、大丈夫よ」

「どこにいるのかしら。今すぐに現れれば、身体ごと火にあぶって、土中に埋めてやるのに!」

「マリー、落ち着いて」

ハンリ―が優しく言った。


「まだ現れてはいないし、親父がきっと槍で刺して運んでくれるさ」

「早く身を食べてやりたいわ」

さすがにこの言葉にはマリー自身驚いた。

(え?さっから私、何言ってるの?グロテスクなことばかり。)

ハンリーはといえば、落ち着いた表情で

「うん。俺もじいちゃんを人魚のせいでなくしたら、同じ気持ちになると思うよ」

と笑って見せた。

「そうね。必ず復讐は・・・・・・」


マリーが言い終わらないうちに、ウィリアムが

「おい!人魚が真下にいるぞ!」

と叫んだ。

「来いよ。秘密の部屋に案内してやるよ」

ハンリ―はそう言うと、マリーを連れて船内の地下に向かった。


中は海中が見れるように、所々がガラス張りになっていた。

「うわあ。ここから人魚を見るわけね」

マリーが感嘆の声を上げると、ハンリ―は

「他の魚も見られるぜ。イカとタコを合わせた“イタコ”ってやつとか」

と言ってきた。

「そんな魚もいるのね・・・・・・」

マリーはガラス張りに張り付き、イタコを必死に探した。

海の中は濁りがなく真っ青だ。しかし、不思議な魔法の生物らしきものは一匹も見当たらなかった。人魚の尾ひれらしき影もない。


すると遠くから、上は白、下は赤の、まさにイカとタコをくっつけたような魚がこちらに近づいてきた。

「イタコだわ!」

「親父に知らせる!」

ハンリ―はそう叫ぶなり、駆け足で上に上がっていった。

「漁師さんも大変ね・・・・・・」

マリーがため息をついた次の瞬間、イタコは網の中に入り、上、つまり海面まで上がっていった。


マリーも地上に戻ると、なんと船の床にイタコが倒れていた。

「もう上げられたの?」

マリーが聞くと、ウィリアムが

「まあ、意外に軽いからね。すくいやすいんだ」

と笑った。

「これ、食べられるの?」

「ああ。すぐにでも食べられるよ。でも一応取っておく。万が一に備えてね」

ウィリアムは先のことをよく考えていた。人魚捕獲に取り掛かった時、それは凄いことになるのはマリーにはわかっていた。


しかし、しばらくしても人魚は現れなかった。

「もういなくなっちゃったのかな」

すると、マリーの声に応えるように海面に人魚のひれの影が浮かび上がった。

「いたわ!あそこ!」

マリーは人魚を追いかけ、ウィリアムを呼んだ。

「そおれ来たぞ。まず一匹目だ!」

ウィリアムは大きな網を取り出し、人魚を頭からすくった。

「何で頭からなの?ひれからではなくて」

マリーは首をかしげた。ハンリ―がすぐに説明に入る。


「人魚はひれを使うと、ジャンプ力が凄いんだ。頭から入れれば、人魚は訳がわからなくなる。そして暴れてるうちに取れてしまうんだ」

「へえ。凄い作戦ね」

マリーが感激していると、ウィリアムが

「取れたぞ!」

と叫んだ。

「取れたか、親父!」

ハンリ―は網のそばに寄った。

「わお!今日は特別にでかいのが来たぜ!今日の晩飯は豪華だな」


ハンリ―は人魚の顔をまじまじと見つめ

「よう、嬢ちゃん。英語は話せるか?何ならデンマーク語でも」

と挑発した。

人魚はシャーと声を上げ、当然のごとく威嚇した。

「全く、ハンリ―が余計なこと言うから怒っちゃったじゃないの」

マリーはやれやれと首を振る。

「ウィリアムさん、もっと取るんですか?それともこの一匹だけ?」

「いや、あと二匹は必要だ。でないとサレンが起こるからね」

ウィリアムは笑うと、またセンサー室に籠った。


しばらくすると、ウィリアムの予想をはるかに超える数、五匹が釣れた。

「今日は凄いな、親父」

帰り際、ハンリ―が言った。

「本当に凄いわ。そうだ、刺身もいいけど、フライもどうかと思うの」

「うん、いいね。刺身とフライ。本当に豪華だな!」

マリーの提案に、ハンリ―が飛びあがった。


まだまだ続けます。小学生の時に書いた小説をまさかこうしてなろうに書けるなんて思ってもみませんでした。しかも三話しか投稿していなかったのにも関わらず百人もの人が閲覧してくれていたのです。本当にありがとうございます。これから大量に投稿していきたいので、よろしくお願いします!

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