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マリーとハンリー  作者: 早乙女なな
第一章 捨てられた女の子
2/8

2 魔法族

マリーは街をとぼとぼ歩いていた。

歩くスピードに合わせ、ぼそぼそつぶやく。

「ママ、何で。ママ、何で……」

たまに人が通りかかると

「どうしたの?ママは?パパは?」

と聞いてくるが、マリーは無言のままその人たちを通りすぎて行くだけだった。

マリーのズボンのポケットには、ジャリンジャリンと音がなるほどお金が入っていた。

これなら、1人で激安ホテルに泊まれるくらいはあるだろう。

マリーは近くにあったホテルに予約をし、チェックインを済ませようとした。


しかし、そこのスタッフが

「親は?どうしたの?」

と、やはり聞いてきたのだ。

当然だわ。と、マリーは思った。

だって、子ども1人でホテルに泊まるなんて、

普通はおかしいじゃない。

しかしマリーは、両親に捨てられたことを他人に言うつもりはなかった。

そうすると、児童養護施設に入れられる可能性があるからだ。マリーは、何としてもそれは避けたかった。

それにどうせ、魔法をぶちまけてしまうのだ。


普通の人なら、魔法なんかは存在しないと思っている。きっと私は変な子だと思われて、

手に負えなくなると、施設を出ることになるんだわ。

施設に入っても、入らなくても、同じことだった。

マリーに、いい案がパッと浮かんだ。

「えっと、親は後で来るんです」

マリーは言った。

マリーの考えは、つまりこうだった。

最初は親は後から来ると伝えておき、その後遅くなってから、ちょっとした事故で来られなくなってしまったと伝えればいい。そして日が変わってから、さっとここを出ればいいわけだ。


マリーは構わず続けた。

「夕方になったら着くと言っています」

「あらそう、ならいいわ。さあ、こちらの部屋にどうぞ」

スタッフはそう言うと、マリーを2階の部屋に案内した。

ホテルの内装は薄汚れていて、とても綺麗とは言えない状態だった。客も、その時間帯はマリー以外の人はいないようだった。

マリーはしばらくして、リュックに入っていた本を読んでいた。

本でも読んでいれば、少しは気持ちが楽になるかもしれないと思ったが、親から捨てられるという思いもよらない悲しみは、消えることはなかった。

親を悩ませた理由はすぐに見つかった……魔法だ。

魔法を爆発させたせいで、親に迷惑をかけた。これはマリー自身も認めていた。


でもいくらなんでも、追い出すことないじゃない。マリーは溢れそうになった怒りを何とか抑えた。

その時、ガチャっとドアの開く音がした。

マリーは作戦通りにしようと、慌てて電話を取り出し、あたかも両親とメールでやり取りしていて困ったように

「うーん」

と言って首をかしげた。

「どうしたの?」

入ってきたスタッフの人が尋ねると、マリーは

「ママが今日はここに来れないって言うんです。だから、今日はホテルで休んでろと……」

と言って、はぁ、とため息をついた。

「そう。じゃあ休んでなさい」

スタッフはそう言うと、さっさと部屋を出て行ってしまった。

よっしゃ!とマリーはガッツポーズをして、朝までゆっくり眠ることにした。


翌日。

マリーは朝早くに起きると

"騙してごめんなさい。私のためなんです"

と書いた置き手紙とホテル代を残し、静かにホテルを出た。

マリーは近くの店でお菓子を買うと、リュックの中に入っていた折りたたみ式の椅子を取り出し、軽食を済ませた。そして、また少し歩き始めた。

しばらくして、マリーは疲れてしまった。早朝から歩き始め、軽食しか食べていないのだから当然だろう。

街はだんだんと賑やかになっていった。人々が起きだし、通りにも人が増えていった。

マリーは、人があまり通らない端に移動した。

「道に寝るしかないか」

マリーはそうつぶやくと、人1人寝転がれるだけの大きさのタオルを引き、道に横になった。


マリーは夢を見た。

家のテーブルで、家族に囲まれている自分。

「どうだ?マーメイドのしっぽフライの味は」

「とても美味しいわ。ありがとう」

マリーは心を込めて、家族に言った。


気づくと、マリーの周りには人が集まっていた。当然だ。子どもが1人で道端で寝ているのだから。

マリーが起き上がると、1人の女性が

「大丈夫?お腹空いてない?」

と聞いてきた。

マリーは無言のまま荷物を抱えると、すぐに人波から遠ざかった。

マリーは夢のことを思い出し、本当にああなったらいいなと思い、頬に伝う涙を拭き取った。

しばらくすると、マリーは1件の家の前で足を止めた。

これといった特徴もない家だが、マリーはその家から魔法を感じ取っていたのだ。

マリーは勇気を振り絞り、チャイムを鳴らした。


すると、家の主であろう男性が出てきた。

「はい」

その人は優しそうで、しかも若かった。

「あの、ちょっと中に入れてもらえませんか?えっと、あなたは……魔法は好きですか?」

えっと、信じてもらえないと思うんですが、私は魔法が使えて。とマリーはつけ加えた。

この時点で、マリーはしまった、と思った。

相手が困ったような顔をしていたからだ。

すると男性は言った。

「ああ。だって、僕も魔法族だからね」

マリーは、はぁと一息ついて

「よかった。えっと私、マリーといいます」

と言うと、手から火を出してみた。呪文を唱えなくても、念じれば自然に出てくるのだ。

途端、炎が燃え上がり、マリーはコントロールが出来なくなった。


すると男性が手をかざし、たちまち炎は消えていった。

「僕はウィリアムだ。君には、魔法の力を上手くコントロール出来ないみたいだね」

本当のことをズバリ当てられ、マリーは少し戸惑ったが

「はい、そうです」

と答えた。

「マリー。少しリビングで休んでいきたまえ。家族を呼んでくる」

ウィリアムはそう言うと、向こうの部屋に行ってしまった。

マリーはとりあえず、家の中に入ることにした。

「おじゃまします」

家の中はとても広く、魔法の道具と思われるものが沢山置いてあった。


しばらくすると、ウィリアムが今度は、女性1人、男の子1人、女の子1人を連れて戻ってきた。

ウィリアムは最初に女性を指し

「こちらが妻のサレンだ」

と言い、次に男の子を指した。

「この子は息子のハンリーだ」

そして最後に、小さい女の子を指した。

「この子は娘のメアリーだ。ハンリーの妹だよ」

「どうもこんにちは。マリー……だったわよね?」

サレンがマリーに話しかけた。

「あ、はい。そうです」

マリーはそう言うと、目の前の家族をじっと眺めた。

(この人たちなら、秘密を言ってもいいかもしれない。)

「あ、あの……」

マリーは家族の目を交互に見た。

「私、実は親に家を追い出されたんです」

「ええ?!」

サレンが叫んだ。

「そんな。どうしてそんなことを……」

そこでマリーは全てを話した。

小さい頃から魔法を爆発させてしまうこと。学校、家でよく大人たちを困らせていたこと。

読んでいただきありがとうございます。

夏休みですね!

私の夏休みは検定が終わってからになりそうです!

皆さんも、夏休みくらいは魔法の世界に入り浸ってみては?

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