1 魔法爆発
ミア・ライブリーは居間で、拳を顎にくっつける形で座っていた。
ミアは自分自身に言い聞かせていた。これは自分の問題よ、と。
ちょうどその時、ミアの夫フォーカス・ライブリーが居間に入ってきた。
「おい、どうした?」
「あの子よ」
ミアは困った表情で言った。
「何?また学校で何かあったのか」
フォーカスが椅子にゆっくり座ると、ミアはそっと囁いた。
「そうよ」
マリー・ライブリーは、恥を捨てて堂々とみんなの前で、先生に叫んでいた。
「私やってません!というか、やったけど、でも私……」
「やったことは認めるんだ」
周りにいた1人の男子が言った。
「黙りなさい」
先生がピシャリと言った。
「それで?ミス・ライブリー」
「やったはやったけど、でも知らないうちにやってしまったんです」
マリーは訴えてみたが、どうせ無理なのはわかっていた。
マリーは魔法族に生まれた。しかし生まれて間もない頃は、魔法が暴走することの前兆すら見せなかったので、母親のミアは安心していた。
しかし、しばらくしてマリーが5歳になると、マリーの手から魔法が急に爆発するようになり、魔法学校の先生を困らせていた。
先生はマリーに向かって、鋭い目で言った。
「しかし知らないうちにやっていた、などということは、ただの言い訳にすぎません。いいですか、ちゃんと本当のことを言いなさい」
「だから、体から勝手に出てくるんです!」
このあと、先生が何をしたのか。
先生は、ライブリー家の家に押しかけていた。
「ライブリーさん。あなたのお子さんが、うちの学校でとんでもないことをしているんですよ!」
話の相手は、ミアだ。
「あの、うちの子がまた何か……」
「壁は壊すわ天井は破壊するわ、子どもに怪我をさせるわで大変なんです!今度こんなことになったら、ただじゃおきませんからね!」
先生はこう吐き捨てると、ライブリー家の家からさっさと歩いて去ってしまった。
「はい、わかりました」
ミアはほとんど聞こえない声で言うと、もう学校から帰ってきていたマリーに
「マリー、部屋で遊んでらっしゃい」
と言ってマリーを部屋に行かせ、フォーカスに言った。
「あなた、もう限界だわ。さっき先生が乗り込んできたのよ。やっぱり、マリーを家から出すしか……」
「馬鹿、何を言ってるんだ!子どもを家から放り出す親がどこにいる!」
フォーカスは別の部屋にいるマリーに聞こえないように言ったが、ミアは首を横に振った。
「駄目よもう。我慢することはないわ。マリーが7歳になったら、リュックを持たせましょう。何日かは持つと思うわ」
「おい!」
フォーカスは何度も訴えた。別の道はある。決断するにはまだ早すぎる。しかしミアは、首を横に振るばかりだった。
「もういいの。終わったわ、何もかも」
そもそもミアは、子どもの育児には前向きではなかった。泣く子は嫌いだし、マリーに関しては自分の知らない場所で他人に迷惑をかけているなど、ストレスの何物でもなかった。
だからミアにとって、マリーが魔法を爆発するようになってからの1年はあまりにも長すぎたのだ。
一方フォーカスは、子どもが好きだった。なのでミアの苦悩が全くと言っていいほど理解できなかったのだ。それも、ミアのストレスの1つでもあった。
翌年、マリーにとって最悪の1日が訪れる。
「ママ、何で?ここが私の家よ。他に行く場所なんかないわ!」
マリーは叫んでいたが、ミアはまるで無関心かのようにリュックを背負わせた。
「ここにパンが入ってるから。あと、こっちには水ね」
ミアは淡々と説明を続けた。そしてミアは、マリーを玄関まで連れて行った。
「ママ、嫌だよ!」
マリーが涙声で訴えても、ミアはその声に応えなかった。
「さぁ、行ってらっしゃい」
「ママ!ここにいさせてよ!」
マリーは何とか留まらせてもらおうと必死だった。何で?どうして?
そしてミアが玄関のドアを開け、マリーを押し出す。
「ママ!」
「さようなら」
ミアはドアを閉め、鍵をかけた。
「ママお願い、中に入れて……」
ミアは部屋の中で安堵のため息をついていた。
この作品は、小学6年生の頃に原稿に書き始め、ずっと温めていた作品です。
いつかこの作品を世に出せたらいいなと思っていました。
だいぶ作品は出来上がっているので、しばしお待ちください!