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フィレリオ火山



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 フィレリオ山まで、あと少し。

 街で馬に乗り換えた私たちは、先を急いでいた。


 今日は馬に二人乗り。

 

「バランスを崩すと危ない。もっと寄りかかっていて?」


 レン様の乗馬は素晴らしい腕だ。一方私も、いつかの断罪回避のために練習していたから、まあ乗ることができる。


 そう、乗馬はできるのだ。


「私にもできるのに」


「知ってる」


「じゃあ、何故ダメって言ったんですか」


「一緒に乗りたかったから。……シエラはそんなに一人で乗りたかった?」


「――――っ!」


 そんなこと言って、笑うの……ずるいです。

 それでも、言い返そうとした瞬間、レン様が急に馬を止めて私を抱きしめた。


 その瞬間、地面が大きく揺れて景色が大きく変わっていく。そして地響きとともに空は暗くなる。


 そして何よりも、さっきまで緑に包まれ美しかったフィレリオ山が、燃え盛るように赤く色を変えていく。


 ――――火の国、フィレリオ王国のプロローグ。


「シエラ! 一旦戻ろう」


 レン様の言うことは正しい。

 私が行っても、もう何もできないかもしれない。


「……でも、まだ時間はあったはずなのに」


「シエラ!?」


 でも、この状態になってから、ほんの3日でフィレリオ王国の首都は壊滅状態になった。それは、火の国編のプロローグで語られている。


「――――レン様」


「……」


「私、行かないと」


 こうなってしまったら、完全にフィレリオ山が火山になり、魔物の住処になる前に頂上にたどり着かなければ。時々、響き渡る地響きが、私の焦りを掻き立てる。


「じゃ、ついてこい」


 ヤンヤンが、手を差しのべる。その手を掴むのが正解と思うのは、ただの直感だ。

 でも、今はその直感に従うのが正しい気がした。


 足元がグラリと揺れて、「シエラ!」と叫んだレン様の声と、掴まれた腕。

 次の瞬間、赤い石で埋め尽くされた山の中ほどにいた。


「あー。王太子までくっついて来てしまったか」


「……どういうつもりだ。返答によっては」


 レン様が、剣に手をかける。


「お前は歓迎されない。もともと、水の精霊と火の精霊は仲が良くない。聖女だけなら排除されなかったのに」


 その瞬間、パンダは白髪に黒い瞳をした男性へと姿を変える。


「――――守ってやれるかわからない。自分の身は自分で守れよレン殿下」


「……ヤン・フィレリオ王子」


「王宮に招かれたときに一回会っただけなのに、よく覚えているな。さすがその体に生まれながら王太子に選ばれるだけある」


「お前……」


「なんだ、文句あるか」


「なんでパンダなんかになっていた」


 ――――そこ! 私も気になっていました。


「一番に突っ込むところ、それか」


 ヤンヤン改め、ヤン王子が盛大な溜息をついた。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。


そして、いつも誤字報告くださる皆さま、ありがとうございます。


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