20.受け入れられてしまいました
ネタバレにならないよう、未来の部分はぼかしながら話します。それぞれのラノベや乙女ゲームの内容を説明し、ゲーム補正やシナリオ強制の可能性も付け加えました。今は私を好きだと思っていても、ヒロインが現れたら心変わりするだろうこと。そこまで説明して一息つきます。
お母様が用意してくださったお茶を、はしたなくも一気飲みしました。話すとこんなに喉が渇くのですね。緊張も手伝ったのでしょう。未来の展開をぼかすのは、原作への冒涜にならないようにです。さすがに話の流れが変わるのは、ヒロインにも御三方にもお気の毒ですから。
「話はわかった」
「では、それぞれに愛するヒロインを探しに行ってくださいますね?」
「「嫌だ」」
「断る」
……即答なさるの? それもこれだけの壮大なお話を聞いた後で、即断だなんて。一気に疲れが押し寄せます。上手に話した私の苦労と時間を返してくださいな。
「ひとまず、事情は理解したので魔王城に連れ帰る」
「え? うちの城じゃダメか」
「そこは精霊界じゃない? 安全だし」
仲の良かったはずの3人に、暗雲が立ち込める。これはあれですね。有名な『仲間割れ』報酬の取り合いなどで起きるトラブルです。
それぞれに不気味な魔法やら精霊術の準備をしているところ、大変申し訳ございませんが。
「外に出てやってください。我が家を壊したら、容赦しませんわ――主にお母様が」
にっこり笑うお母様の手に、乗馬用の鞭が撓っています。あれは痛いし危険です。何やら本能的な恐怖を覚えたらしく、3人は屋外へ出て行きました。ほっとしたのも束の間、お兄様が私に抱きついてお父様に後ろから殴られます。
「血迷ったか!」
「好きなんだから仕方ないだろ」
「切り落とすぞ!」
何を? って、ナニをですか。震えて数歩下がったお兄様、大正解です。お父様、家の中で剣を抜かないでください。というより、それ暖炉の上の飾り物ではなく本物の刃が付いていたんですのね。緊急用の隠し武器? そんなもの置いてる貴族の屋敷は、きっと我が家くらいですわ。
「それで、誰を選ぶのかしら」
「……決めましたわ」
今のではっきり覚悟が決まりました。誰を選んでも殺される気がします。または攫われるでしょう。ヒロインとの再バトルもご免蒙りたいですし。
「一妻多夫にいたしましょう。満足できない方はご遠慮いただけば、最終的に夫が1人に絞れるかもしれません」
「俺も混ぜろ」
「僕も入れて欲しい」
まあ! 王族ともあろうものが、公爵家に潜伏するなど恥を知りなさい。
「アーサー様は却下。イアン王太子殿下も、跡継ぎが必要ですから無理です」
お兄様とアル兄様も自動的に脱落。つまりあの御三方なのですが……外ですごい音と閃光が散ってますけれど。生きていますでしょうか。
窓を開けると埃が舞い込みましたが、ドラゴンを精霊王が縛り上げ、その彼を後ろから魔王が羽交い締めにする事態でした。まあ、なんて激しい喧嘩でしょうか。
「皆様、決まりましてよ!」
声を張り上げた途端に、全員が慌てて戻ってきた。竜帝陛下は人の姿に戻るのに苦戦しましたが、全員揃うまで待ちましょうね。そわそわしてる精霊王様とか、母性がくすぐられますね。
「誰にするんだ?」
代表するように魔王陛下がお尋ねになりましたので、先程お母様に伝えた通り、御三方と一妻多夫で暮らすと申し上げました。ここで2人ほど脱落してくれると助かりますが。
「「「承知した」」」
え? 承知しちゃうんですの??




