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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

短編あれやこれや

【短編】シニガタリ

掲載日:2021/01/12

 ――1――



 僕の通う高校で、連続した飛び降り自殺が起きていた。


 一人、また一人と、封鎖されているはずの屋上の扉を開け消えていった。


 集団心理でも働いているのだろう。そう僕は思った。


 なぜなら。



 ――――僕も死にたいと思ったから。




 ――2――


 先日、僕の彼女だった(なぎさ)あかりが亡くなった。


 同じく、飛び降り自殺だった。


 なぜ死んだんだろう。どうして相談してくれなかったんだろう。


 何にも出来なかった事に、ただただ絶望した。


 そんな自分が嫌で、嫌で……。


「……? 開いてる……?」


 屋上の古びた取っ手を握ると、鍵がかかっていなかった。


 こんな事件が続いて、鍵どころか立ち入りすら難しいというのに、既にもう先客がいるようだ。


 もう死んだのかな。それともこれからなのかな。


 死体を見ながら飛び降りるのは嫌だなぁ……。もしこれからだったら、一緒に死のうと誘ってみようか。


 一人じゃないならお互い少しは気が楽だろう。


 そんな事を考えながら、恐る恐る扉を開けてみた。


「冬月……さん?」


「綾瀬、くん……?」


 そこには、僕のよく知っている顔があった。


 冬月紡(ふゆつきつむぐ)。あかりの一番の親友だった女の子。


 どうして彼女がここに居るのか。そんな事は考えなくとも分かっていた。


「冬月さんも……?」


「……うん。私もあの子の……あかりの力になってあげられなかったから」


 彼女もまた、あかりの死を受け入れられない一人だった。


 僕達はあかりを中心によく喋ったり遊んだりしていた。


 最初は友達の友達程度の関係だったが、あかりのおかげで仲良くなれた。そんな気がしていた。


 でも、こうして二人、あかりのいない場で出会うと、妙な居心地の悪さを覚えてしまった。


「でも、これで安心だね。あなたも居てくれればあかりも寂しくないよ」


「……うん」


 これから死のうというのに、彼女は相変わらずあかりの心配をしていた。


 だから、今の彼女は魂が抜けたように別人に見えた。


 共通の友人のための自殺だというのに、僕も冬月さんも何も話さず、淡々と死ぬための準備を進める。


 落下防止のために設置された屋上の柵を無理やり乗り越え、何もない空中に背を向け、靴を揃える。


 これでもう、後は飛び降りるだけだ。


「あかりも喜んでくれる……よね」


「そう……だね」


 あかりのために死ぬ。そう思うと、最後の踏ん切りがつく。


 お互いの顔を見合わせ、腕を掴み合うように段取りを進める。


「3、2、1で行こっか」


「分かった」


 何もない屋上を見つめながら、二人は最後の言葉を交わす。


「じゃあ」


「うん」



「3」




「2」




「1」




 ――――ゼロ。




 気持ちの悪い浮遊感が、僕の身体を包み込んだ。


 ――3――

 …………。



 ……。



「ここは……」


 飛び降りたはずの屋上から、景色ががらりと変わっていた。


 そうか、これが死ぬ前に見るっていう走馬灯か。


 見上げた空は、どこか懐かしい青空だった。


 今よりも少し前の、あの日の空と一緒だ。



「ダメえええええーーーーー!!」



 大きな声が聞こえて、思わず振り向く。



「早まらないで!!」



「ぐへっ!」



 誰かに背を引っ張られ、僕は固い地面へ頭を打ち付けた。



「死んじゃダメだよ!! 生きていればきっと、きっといい事あるから!!」



 何を言っているんだ、この子は。


 顔を固いコンクリートで擦られながら、目の前の今にも泣きだしそうな女の子へ返事をした。


「……空見上げてただけなんだけど」


「へっ?」


 そうだ、僕は人の少ない橋の上で、ただ空を見上げてただけだったんだ。


 それなのに、いきなり訳の分からない子に引っ張られ、僕は頭を痛めていた。


「しっ、失礼しましたーーーーー!!」


 短距離なら賞でも取れそうな勢いで、女の子は景色へと紛れていった。


「…………」


 犬にでも噛まれた。そう思ってその日の事は忘れるようにした。


 そうしたかったのに……。


「あーーーーー!!」


 次の日の学校での出来事だった。


 聞き覚えのあるうるさい声が耳に入る。


「君ってこの前の……! 同じ学校だったんだー!! じゃなくって、この前は本当にごめん!!」


「いや……大丈夫だけど……」


 彼女との出会いは特殊だった。


「あかりどうしたの? ……その人、知り合い?」


 彼女の友人と思われる少女が会話に割って入った。


 二人の親し気な様子が、少し鬱陶しく感じた。


「いやぁ……昨日、ね。今にも橋から飛び降りそうだったから止めに入ったんだけどさ……」


「だから、空を見てただけだって」


「まーたあかりは首突っ込んだの? 変な人もいるんだから、正義感の早とちりは辞めなさいって何度も言っているのに」


「……変な人で悪かったよ」


「別に……そういう意味で言ったんんじゃ……」


「はいはいそこまでーっ! 私は渚あかりで、こっちの可愛い子は冬月紡ちゃんっていうの。君は?」


「綾瀬……透……って、もういいよね。授業始まるし僕は行くから」


「まぁまぁだったら始まるまでお話しようよ透っち!」


「とっ、透っち……!?」


 再び出会ったその日から、あかりに巻き込まれる形で僕達はよく話すようになった。


 孤独が好きだった僕は、彼女を通して冬月さんや他の同級生と交流を深めていった。


 彼女と触れ合ううちに、いつしか僕の考えは変わっていた。


 明るくて、ポジティブで、みんなを引っ張るような存在。


 そんな彼女の言動に、いつしか僕は惹かれていった……。


 今でもよく彼女の口癖を思い出す。


「生きていればきっと、良い事あるよっ」


 希望に満ち溢れた、彼女を象徴する言葉だった。



 …………。



 ……。



「はっ!」



 ガキンッッッ!!



 寸前のところで、僕の手は柵に届いた。



「綾瀬くん!!」



 額から汗が流れ落ちる。汗は、遠い遠い地面へと消え去っていった。



「違う……こんなの間違っている……」



 遠い記憶の彼女に、その身を引っ張られてしまった。


 二人の自殺は、失敗に終わった。


 ――4――


 顔を自分の腕に埋めながら、僕は呟く。


「……ごめん、怖気づいた」


 遠い空を見上げながら、冬月さんも言葉を返した。


「いや……私も動けなかったから……」


 彼女も飛び出す事が出来ず、屋上の隅で立ち止まっていた。


 放課後の夕焼けが寂しそうな二人へと落ちる。


 あかりを、彼女の事を思っての行動だったのに、そのはずだったのに、足が踏みとどまってしまった。


 ふと飛び降りた直後の事を思い出す。あの時見た走馬灯の事を。


 そこでの彼女言葉が、どうしても引っかかっていたのだ。


「…………思ったんだけど、さ。何であかりは飛び降りたのかなって」


 ぐるぐると残り続ける感情を、水が零れるように口に出す。


「考えて、考えて、考えて……。それでも分からなかった」


 あかりが死んだ時の事を思い出して、後悔の念に押しつぶされそうになる。


「分からなくって……辛くて……悔しかった」


 それでも、この違和感が気持ち悪かった。何でそんな事考えてしまうんだろうって思ったけど、それでも違和感を拭い去る事は出来なかった。


「悔しかった……けど」


 僕は立ち上がった。冬月さんにもこの違和感を伝えないといけない。そう思ったから。


「今考えると、思うんだよ」


 あかりの事を考えて覚えた違和感は、間違っていないと信じて。


「やっぱりあかりは、自ら死を選ぶような人じゃないって」


 彼女の口癖が、胸を熱くする。


「悩んでも辛くても……それでもあかりは!!」


「黙って」


 凍てつくような冷たい声で、冬月さんは僕の言葉を止めた。


「なんで。ねぇなんでなの?」


 おぞましくも感じるような、怒っているのに冷静だと錯覚するような、とても冷たい声で。


「なんであの子の事、分かってあげようとしないの!?」


 冬月さんは声を荒げる。僕とは対照的に、彼女の死を受け入れようとして。


「死ぬぐらい悩んでいたかもしれない。辛かったかもしれない。それでも私やあなたに言えなかった」


 僕も冬月さんもあかりの事を思っているのに、そのはずなのに。


「彼女に限ってそんな事はない、そんなイメージを押しつけていたから、あかりは言えなかったんじゃないの!?」


 冬月さんは酷く、怒っていた。


「…………もういいわ」


 突き放すような声で呟く。


「やっぱり私、一人で行くから」



 彼女は死に、憑かれていた。



「まっ、待ってよ!」


 思わず止めに入る。


「こんなの間違ってる! 冬月さんが死ぬ意味なんて何にもないよ!!」


 あかりを信じていたから、違うあかりを信じる冬月さんが許せなかった。


「あかりだって、こんな事望んでいないはずだ!!」


 あかりとの付き合いは冬月さんの方が断然長い。だけど、あかりはそんな事を望むのだろうか。冬月さんの見ているあかりの姿が、僕には微塵も見えなかった。


「だったら」


 凍てついた言葉を吐きながら、冬月さんが近づいて来る。


 履き直した靴が、屋上の地面を擦って気味の悪い音を響かせていた。


 目前で彼女は止まると、おもむろに襟首を掴まれ引っ張られた。



「あなたがあかりのために、死んでよ」



 その言葉と同時に、僕の視界は遠い遠い建物の外へ移っていた。


 無理やり、柵の外まで身体を引っ張られたのだ。


「どう……して……」


 柵に身体を押し付けられ、息が苦しい。


「お願い……彼女のもとへ行ってあげて」


 冬月さんはそそのかすように、そっと耳元で呟く。


「あの子のために……死んでよ」


「はっ、離せ!!」


 無理やり腕を振り払い、冬月さんから離れる。


「……なんでなの?」


 脅すように、見下すように、冬月さんは言葉を漏らす。僕の事が気に入らないというのが見て取れた。


「あかりのために死にに来たのに、どうして生きようとするの……?」


 呼吸の乱れる僕の顔を見ながら、彼女は言葉を浴びせ続ける。


 あかりのために死ぬ。それが彼女のためになると信じて。


 だから僕は、あかりのためと言って死のうとする冬月さんが、許せなかった。


「……あかりは言ったんだよ。生きていればきっといい事あるって」


 彼女の口癖を思い出す。僕を救い続けた、彼女の言葉を。


「あの時僕は、空を見ていただけなんて言ったけど、本当に死のうとしていた。あの言葉のおかげで、思いとどまれた。だから僕は今まで生きて来れた。でもあかりが死んで、後悔と絶望で、何も見えなくなっていた」


 そうだ。今の僕達を見たら、彼女は絶対に怒るに違いない。彼女の言葉は、生きる意味を与えてくれていたのだから。


「……けど、あの口癖を思い出して、それではっきり分かったんだよ」


 これは、彼女の選択じゃない。だから。



「あかりは自殺なんかするわけない」



 これが、違和感の答えだ。あかりを思うなら、こんな選択を僕達がしてはいけないんだ。


「冬月さんも、あかりの親友なら分かるはずだよ。だから、僕達が死ぬ意味なんてないんだよ」


 だから、違和感があった。冬月さんの言動に。どうしてそこまで死にたがるのか。


「なんで冬月さんは、そこまで死ぬ事にこだわるの?」


「…………」


「僕達が取る選択は、こんな事じゃないはずだよ!!」


「…………ねぇ綾瀬くん」


 僕の言葉を聞いた冬月さんの様子が、変わった。


「最初に自殺した相原さんってさ」


 冬月さんの目が、変わった。



「なんで死んだのか、知ってる?」



「相原……さん……?」


「そう、あの相原さん」


 どうしてここで最初の自殺者の話をする? 冬月さんは何を考えているんだ?


「私ね、小学生の時あの子にいじめられていたの。それを助けてくれたのが、あかりだったんだよ」


 どこか虚ろな目で、冬月さんとあかりの出会いを語りだす。


「そうしたらその子、どうしたと思う?」


 寂しそうに。


「私からあかりにいじめの対象を移したのよ」


 嬉しそうに。


「でもその後いつの間にかいじめは無くなってて、今では普通に話す仲になってた」


 最初の自殺者を思いながら。


「自分のやった事なんて忘れて、憎くてたまらなかったわ」


 自分の感情を添えて。


「次に自殺した森君はね、昔あかりにしつこく言い寄って来てたの。彼が傷つかないよう遠回しに断ってたのに、何度も何度も……」


 死んでいった人の事を思いながら。


「次の加藤君とその次の藤井君は、ふざけてあかりにぶつかったのに謝りもしなかった」


 死んでいった人の行為を思い出しながら。


「次もその次もみんなそうだわ」


 彼らの罪を唱えながら。


「あの子に酷い事をして、本当に許せない……」


「何を……言って……」


「だからね、私」


 ただ一人、あかりの事を思いながら。




「みーーーーーんな、殺しちゃった」




 冬月さんは、笑っていた。


 ――5――



 あまりの異常さに、言葉を失ってしまう。


「何を驚いているの? あなただってそうよ」


 冬月さんは笑いながら、目の奥を真っ黒にして話しかける。


「あかりに助けられたとか知らないけど、ずっとあの子の優しさに甘えて困らせて……」


 どこまでも冷酷な感情を、冬月さんはぶつけてきた。


「だから決めたの。あなたも殺すって」


「なっ……!?」


「でも、そんな事したらあの子が悲しむわ。あの子優しいから、ずっとあなたの事を引きずって生きてしまう……」


 どこまでも狂っているのに、冬月さんは眉をひそめ、困った様子で話を続ける。


「そんなのは嫌、あの子の悲しむ姿なんて見たくない。でも、あなたには消えて欲しかった」


 今日の服は何を着ようとか、お昼のデザートはどっちがいいかとか、その程度だと言いたげに彼女は人の命を扱う。


「それで、考えてみたの。考えて考えて、やっと見つけたの。あの子の悲しむ顔を見ずに、あなたを消す方法をね」


 もう、やめてくれ。


 僕はもうそれ以上聞きたくない。


 次に出てくる言葉が、分かってしまった事が本当に嫌だった。


 だが冬月さんはそんな事を気にしてくれない。


 とびっきりの笑顔で、素敵な事を思いついたと言わんばかりに、次の一言を告げた。




「簡単な事だった。あかりが先に死ねば良かったんだ」




 冬月さんの言う、両方を叶える方法。それは地獄よりも醜いものだった。



「そうすれば、あかりは悲しまずあなたも消せる。あの子の悲しむ顔を見なくていいって……!」



「本気で……言っているのか……?」



 我慢の限界だ。これ以上、もう何も耐えられない。



「そんな事のために、あかりを殺したのかッッッ!!」



 彼女に掴みかかる。距離感も力加減も分からないままに、冬月さんの襟元を掴み上げる。


「そんな事……? そんな事なわけないでしょう!?」


 乱暴に腕を振り回され、掴んでいた襟元から手が離れた。


 意見が合わないなんて話では済まない、冬月さんの言うあかりがどうしても僕には理解出来なかった。


「みんなひどい事をしたのにその事を忘れて平気な顔をして。あの子が優しいからみんな甘えて、みんな許されてるって勝手に勘違いして……、何も知らないで……」


 冬月さんから力が抜けたのが見て取れた。怒りよりも悲しみが増したような、そんな切なげな顔で、彼女はあかりの事を思い続けていた。


「あの子は……あかりは私の代わりにいじめられて、泣いてたの。その顔を見た時、辛くて、怖くて、見てられなかった」


 それは冬月さんとあかりの話。僕が知るよりずっと前の、二人の出会いの話。


「次の日、何事も無かったかのように笑顔で登校して来て。いつものように声をかけられた時、自分がとても嫌になった」


 彼女があかりを思い続ける、きっかけとなった話だった。


「だから決めたの。あの子を悲しませないようにするって」


 それが冬月さんの生きる理由だった。それだけが、彼女を突き動かしていた。


「だから私はあの子を殺したの。あの子に、あかりに幸せになってもらいたかったから……」


 冬月さんは言葉を詰まらせた。それと同時に、溢れるように涙を流し始めた。彼女は気づいてしまったのだ。自分の歪な思いに。




「……あれ、おかしいな。私あかりを殺しちゃってる」




 とても強くて強靭で、ひたすらに思い続けたその感情は、いつの間にか歪んでいた。悲しませたくないと、幸せにしたいと願い続けたばかりに、彼女は取り返しのつかない事をしでかしていた。


「あかりを幸せにするためにあかりを殺したの。でもそれじゃあ、あかりは幸せにならない? あれ、アレ、おかしいな……」


 どう考えたって、幸せにならない。悲しみを奪うと同時に、彼女は幸せになる権利まで奪ってしまった。


「あかりが幸せになってない、あかりが幸せになれない。どうしたらいいのかなあかり……ねぇ、あかり」


「お、おい!!」


 彼女はおもむろに歩き出した。その先は、あかりの消えた場所。何もない、柵の向こう側へ。



「助けて、あかり…っ!!」



 柵を乗り越えようとした、そんな彼女を、僕は考える間もなく止めていた。


「……離してよ。私はあかりのもとへ行きたいの」


「……このまま行かせてたまるか」


「ねぇ、離してよ。離して、離して、離して、離して、離せええええええッッッ!!」


 何も分からず彼女は声を荒げた。ガサガサとしたノイズのような声で、必死に助けを求めて。


「私は、あの子のもとに行って謝りたいだけなの……だから!!」


「このまま、なんの償いもしないまま彼女のもとへなんか行かせない。絶対に、あかりには会わせない」


「……どうしてこんな私を止めるの。私はあかりを殺したのよ。殺したいほど憎いはずでしょう……?」


「憎いよ。ああ、憎いさ。憎くて憎くてたまらない。けど、それじゃあダメなんだよ」


 死は救済でも、贖罪でもない。


「君はこのまま生きて、生きて生き続けるんだ」


 生きるという呪縛。殺したという十字架。


「死なずに生き続ける。それが、あかりに対して、……いや。みんなに対しての償いだ」


 とある高校で起きた連続飛び降り事件。それは、ある少女の思いが起こした惨劇だった。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 事件から数週間が過ぎた。


 一連の事件はニュースなどで大きく取り上げられ、しばらくの間世の中を騒がせた。


 冬月さんはあの後、共に付き添って警察署へ自首をしに行った。全ての出来事を、彼女は受け入れたのだ。


「やっぱりここの鍵、壊れているんじゃないか……?」


 僕はというと、またあの屋上に立ち入っていた。


 柵にもたれかかり、携帯に映った3人の写真をしばらく眺める。


 僕を救ってくれた彼女も、彼女を共に慕っていた友人も、もういない。


「生きていれば、きっといい事がある……か」


 そう呟くと、携帯から3人の映った写真を削除した。


 生きていれば、きっといい事がある。


 彼女の言葉を、信じて――――。

お読み下さりありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 自殺する生徒が続出という不可解な出来事に、どんな因果関係が潜んでいるのか興味を惹かれました。あかりが自ら死ぬはずがないと透が気付いてからの展開と、思いもよらない真相に驚かされますね。 いじ…
[良い点] 大切な物を他人に汚されたくは無いが為に、その大切な物を自分が汚す……良いドロドロ展開でした……。 最後のオチも、綾瀬君の踏ん切りが付いた様な感じで、とてもスッキリする終わり方でした。 内容…
[一言] 集団心理的な話かと思っていたので、後の展開にはまんまと嵌められてしまいました。 人間の狂気を上手く表現されていますね、凄い。後半の手に汗握る怒涛の展開も一気に読み進められました。文章が短くて…
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