節穴を塞いで見えたもの
いつもお読みいただきありがとうございます。
この物語は最後までプロットは出来てるので
大幅な話の変更はしないつもりです。
藍里が家に戻っていたあと
部屋は途端に静かになる。
藍里が居る間は千歳の事を考えずに
済んだ。改めて助けられていた事に感謝する。
でも、少し気になったのが夕食の時に見せた。
憂いを含んだ表情だ。
前にも一度、同じ表情をしていたことがある。
あの時はかなり藍里に無理をさせた。
結局、大事にならなくて良かったけど………
藍里は僕たちのことになると
自分自身を省みない事がある。
藍里は大切な親友で幼馴染だ。
彼女が僕を心配するように
僕が彼女を心配しない理由はない。
今の僕では力になれないと言っていた。
それなら、僕以外の力を借りれば良い。
そう思い立ち、早速友人に連絡を取る。
事情を簡単に説明し
学園でそれとなく気にかけてくれるようにお願いする。
それから、千歳と公園でいたあの男……
別件で気になることがあったので
併せて調査を依頼した。
そうこうしているうちに
いつの間にか千歳の事を忘れて
藍里の心配をしている自分自身に気付くと
自嘲気味な笑いが自然に溢れた。
千歳のことは正直、分からない。
あの日から僕は千歳に対して怒りも悲しみも
感じなくなった。色々思う事もあるが
感情が伴ってこない。
少なくとも、今は仮に復縁したとしても
前と同じくらい千歳の事を大事に出来るようには
思えなかった――――
色々考えている間に寝落ちしたようで
何時もの目覚ましの音で目を覚ます。
あまり、頭はスッキリしないけど
今日も藍里は朝に来ると言っていたので
身支度を手早く済ませ
朝食の準備に取り掛かる。
昨日のうちにセットしていたご飯が
ちょうど炊けた頃、インターホンが鳴らされ
しばらくすると藍里が顔を見せた。
「おはよう、暁斗」
「おはよう、藍里」
昨日と変わらないはずの女神様の微笑みは
僕の心象も反映してか少し悲しく見えた。
「暁斗は私の仕事を奪うのが趣味なのかしら」
キッチンに居る僕と
既にテーブルに並べられていた朝食を見て
藍里は不満げに頬をふくらませたが
直ぐに打って変わって笑顔に変わって言った。
「ありがとう、暁斗」
「お礼を言うのは僕の方だよ
料理だって、昨日藍里が持ってきてくれたのを
温め直したくらいだよ」
僕はそうお礼を言って、炊きたてのご飯を
藍里の席に並べると、自分の椅子に座った。
藍里も席につき、二人で
『いただきます』をし朝食タイムを開始する。
昨日と同じように途中まで無言で食事が進む。
途中、やっぱり昨日のことが気になって
藍里に声を掛けた。
「ねえ、藍里」
「何かしら」
「僕と千歳の事で
色々と迷惑を掛けてるのは分かってる」
「別に迷惑とは思ってないわ」
「うん。藍里はきっとそうなんだろうね」
「嬉しいけど、買い被りすぎよ」
「そんなことない!!
………藍里は優しすぎなんだよ」
冷たいイメージと美人過ぎて
壁を作られがちな幼馴染は
交友を深めてみれば、その実
底抜けに優しい人だと分かる。
そう、優しすぎるから
僕は甘え過ぎるわけにはいかない。
だから、僕は言葉を続ける。
「だから、だからね藍里
僕達の事で、いや、僕のことで……もし――
藍里が傷付くような事があれば―――
そんな事になってしまったら
僕はきっと自分を赦さない!!」
語彙の乏しい、でも心からの気持ちを紡いだ
僕の言葉を受け
藍里の目が大きく見開かれた。
「…………えっと、ごめん上手く言葉に出来なくて
何が言いたいかと言うと……つまり……」
そのまま、じっと僕の目を見たままの藍里。
だんだん気不味くなってきて目を逸らそうとすると
藍里が急に笑い出した。
「フフ、アハハハッ……
本当に気が回りすぎる人も考えものね」
「鈍感に生きるよりは良いと思うけど」
「あら、その言葉はブーメランになりそうよ」
「えっ、どこが？」
「アハハハ、本当、朝から笑わせすぎよ」
藍里のツボが良くわからず首を傾げる。
でも、昨日の嫌な雰囲気は払拭されたように感じ
僕も自然と笑みになった。
モヤモヤさせた方は済みません
ゲス展開期待していた方はゴメンなさい
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