曇天に仰ぐ (Side藍里)
多くの方に読んでいただき
感謝しかありません。
ありがとうございます。
放課後、千歳の頼みで例の男との話を
遠目で見守るため、一緒について行く。
「ごめんね。藍ちゃん迷惑かけて」
「うん、もう良いわ」
あと、まだ聞いてなかったけど
その相手って結局誰なの?」
「言ってなかったっけー?
『比留間陽介』先輩だよー」
「………もしかして、あの時の男かしら」
千歳から出た名前に聞き覚えがあった。
この学園ではイケメンとして割と有名だったはず。
入学して最初の頃に声を掛けられた気がする。
興味なかったので余り覚えていないのだけれど。
「へー、藍ちゃんでも知っているだね
モデルのお仕事とかしててカッコいいんだー」
今からその男を振りに行くのに嬉しそうに話す
千歳に頭が痛くなる。
「あのね千歳。これから何をしないといけないか
理解しているわよね?」
「うん、ゴメン、ゴメン
それじゃあ、これからバシッと言ってくるよ!!」
千歳はそう言って意気込みを示す。
その前にする事があるのでスマホを借りる。
私のスマホと電話を繋いで
通話を切らないように念を押し千歳に返す。
千歳は不思議そうな顔をしていたけど
そのまま待ち合わせ場所に足を向けた。
その後、私は少し離れた場所で話を聞く事にする。
何となく、気分はスパイ映画のノリだった
話の中身が頭を痛くする内容でなかったのなら―――
「ありがとう、千歳。来てくれて嬉しいよ」
「いえ、私も先輩に話があったから」
「そっか、それなら先に千歳の話から聞こうかな」
「はい、えっと、日曜日デートしましたよね」
「うん、凄く楽しかったよ!」
「はい、私もです………じゃなくって
どうも、それを彼氏に見られてしまいまして」
「そっか、それは迷惑をかけちゃったかな」
「いえ、でも、それで………
別れようって言われちゃって」
「なんで、僕達は友達だって事は伝えたんだよね」
「はい、でも、信じてくれなくて」
「どうして、彼は好きな人の言葉を信じないのか!?」
「それは、私が嘘をついちゃったのが悪くって」
「そんな、好きな人の言葉を信じないなんて
ありえない!! 俺なら絶対に千歳を信じるし
こんなに、悲しませたりしないのに」
「えっ―――もしかして、それって」
「うん、実は今日呼び出したのはそのことで
彼氏が居るのは分かってるけど友達以上になりたい
好きになっちゃったんだ
千歳、出来れば俺と付き合って欲しい」
「………えっと、えっと
先輩ごめんなさい突然過ぎて―――」
「俺の方こそ済まない。
困らせるつもりはなかったのに」
「いえ………そんな事は」
「本当は告白して、彼氏が居るのは知ってたから
振られて吹っ切ろうと思ってたんだ」
「そんな―――気持ちは嬉しいんです。ただ―――」
「分かってる。彼の事も直ぐには
決められないだろうから
俺は待つよ、気持ちが俺に向いてくれるまで」
「ごめんなさい先輩―――
もう少し考えさせてください」
「分かった。いつまでも待ってるよ」"チュ!"
聞こえきた話と最後のリップ音――キモッ
出来の悪い三文芝居以下の内容に
――私は大きく天を仰いでしまった。
千歳も大概にチョロすぎるが
相手の男も質が悪いと感じた。
そもそも、彼氏が居ると分かってる女に平気で
キスするようなモラル崩壊男だ
この馬鹿二人に怒りが込み上げてくる。
いっそ馬鹿同士でお似合いなのではとまで思う―――
通話を切り、落ち着くために深呼吸をする。
千歳はテンパリ過ぎたせいか私の事も忘れて
走り去っていった。
問題は残った、あのゲス野郎だ。
確かに千歳にも問題はあるが
一応は大事な幼馴染だ
無駄に傷付く姿は見たくない。
それに千歳が傷付けばきっと
暁斗も同じくらい傷付いてしまうだろうから――
ここは私が動く時だ!!
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