表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/22

マイ・ディア・フレンド

次回のエピローグ的な話で完了です


いつも読んでいただいてる皆様には感謝です。


 藍里から連絡があり

千歳と話を付けてきたと言われた。


 お互いに話すことがあるからと

僕の家で合流することになった。


 先に僕が家に到着して藍里が来るのを待った。


 いつものようにインターホンが鳴り

しばらくして藍里が入ってくる。


 その表情は悲しみに沈んでいて

目が赤みがかっていた気がした。


 たまらずに僕は声を掛ける。


「藍里、大丈夫」


「……うん、私…千歳に…」


「こっちは、全て片付けてきたよ

 あのクズは終わりだよ……でも多分千歳は…」


「分かってる、あんな千歳は見たくなかった

 私のせいで………」


「違うよ、悪いのはあのゲス野郎だよ」


「付け込まれる原因を作ったのは私だ

 親友だったのに全然千歳の気持ちに

 気づいてあげられなかった」


「それを言うなら、恋人だったのに

 最初に守れなかった僕の方がはるかに悪いよ」


 お互いに割り切れない千歳への心情が罪悪感に繋がる。


「私達……失くしたのね」


 目の前の僕ではなく、

 どこか遠くを見つめる眼差しで藍里は言った。


「そうだね」


 僕は目を閉じる走馬燈のように

千歳との記憶が呼び起こされる。


「なんで、こうなったのかな」


 藍里の言葉に『ああしていれば』『こうしていたら』と

色々な仮定や後悔の思いが浮かぶ。

 そして、僕達の間に入って奔走して

傷だらけになってくれた藍里に心が痛む。


「ひとつ言えるのは、藍里は悪くないよ

 僕と千歳の関係に巻き込まれただけだよ」


「そんなことない、千歳に言われたよ

 暁斗の事、異性として好きなのに

 何で親友の振りをするんだって」


 藍里の言葉に息を呑む。


「僕も千歳がいたときは気付かない振りをしてた…」


 あの夕暮れの公園で千歳を見るまでは…


「そっか、なんだ、やっぱり千歳も私達のことを

 ちゃんと見てたんだ」


「それってどういうこと?」


 藍里は僕の質問に対し、

今日千歳に会って話したことを簡潔に教えてくれた。

 

「そっか、千歳がそんなことを…

 ごめん、辛い役を押し付けてしまって」


「いい、それが千歳をあそこまで追い込んだ私の……」


「罪だから?」


 藍里の言葉を先回りして言う。


「それを言うなら下手に希望を与えた僕にもあるよ」


 中途半端な優しさを見せた僕の責任。


「それじゃあ、私達二人の責任だ」


 少しでも藍里の罪悪感が和らぐならと頷く

 そもそも藍里が全部背負い込む必要だってない。


「そうだね、でも、結局選んだのは千歳の選択だよ

 だから、厳しいかもしれないけど

 ここから先は千歳が自分で乗り越えないといけない」


 藍里がいったように、この状況を生み出す下地は

僕達にもあったかもしれないけど、

僕と向き合わず、藍里を信じず

クズ男の甘言に乗って、

安易に失くした信頼を取り戻そうとし、

逃げた先での自滅。


 そこに僕達がまた手を差し伸べたところで

同じ事の繰り返しだ、自分で立ち直らない限り。


「私も同じようなこと、千歳に言ったよ」


「そっか、ありがとう」


 僕が伝えないといけない事を代わりに言ってくれて。


「なんでだろう、こんなに近くにいたのに

 本当の気持ちを気付けないなんて辛いわね」


「そうだね、すれ違ってばかりだったね」


 千歳だってそうだ、

 今まで見せてきた気持ちが全部嘘のはずがない

最後は間違った方向に向いてしまったけど……


 だから、せめて千歳が一人でちゃんと向き合って

前を向いて歩いて行けるように願った。

 




 クズ男が学園を去って、

両親の離婚に伴い千歳が転校して一年がたった。


 二学年になった僕達は相変わらず

親友以上恋人未満なじれったい関係が続いていた。


 今日は僕の家で優雅なランチタイム。

ほとんど藍里が準備してくれてるけど

甘やかされ一直線でどんどんダメ人間になってる気がする。


 藍里はもちろん今でも一番身近で大切な存在だ

でも、恋人云々の話をしようとするとお茶を濁したように

逃げようとする。


 藍里自身、父さんと千歳の事もあり、

僕に対してまだ負い目を感じてるようだった。


 同時にそう思わせてる僕自身の情けなさも実感する。


 ちょうど明日、久しぶりに母さんが帰国するので

今日こそは僕達の関係をハッキリさせ

母さんに報告しようと密かに意気込んでいた。


 そんな思いの中、何気ない会話で

康太が友達だった女子と最近交際を始めた話になる。


 康太とその子は、例のクズ男の調査のときに

知り合ったみたいで姉がゲス野郎の被害者だったみたいだ。


 あの男は裏で犯罪ギリギリのこともしてたようで

康太が調べていた別口依頼の件で、

後から色々と証拠があがり

千歳の件を抜きにしても学園にはいられなくなった。

 その後、康太から聞いた話では

手を出してはイケナイ相手の

娘に手を出したらしく、もう偶然でも僕達と二度と

合うことは無いだろうとの事だった。


 そんな関わり合いから最初は

『探偵はハードボイルドが信条、彼女は要らない、

 よくて友人どまりだ!』とか言っていた康太が

 今ではすっかり彼女の尻に敷かれて

 フニャフニャの半熟卵になっている。


 その事を藍里も思い出したのか、

微笑ましげに何となく言葉にする。


「男と女の友情は成立しないってことかしら」


 僕も藍里の言葉を受けて何となしに答える。


「そんな事はないんじゃないかな

 現に僕は、藍里を一番の親友だと思ってる」


「えっ」


 藍里が一瞬、悲しそうな顔をする。

意図を察して僕は続けて言葉を繋ぐ


「なんで、悲しそうな顔をしてるの?」


「それは、その」


「ごめん、意地悪だったね、

 ただ僕の場合はその友愛以上に愛情が加わっただけだよ」


 僕は藍里を逃さないとばかりに視線で縫い止める。


「それって……」


 僕を見つめる藍里、嬉しそうだけど

どこかまだ悲しさも同居しているように感じた。

藍里自身も気持の整理がつかないのかもしれない

だけど、僕にとってはチャンスだ、ずっと

曖昧にしていた気持ちをハッキリ伝える為に言葉にする。


「僕は藍里、君が好きだ。

 親友として以上に

 一人の女性として、いまよりもっと大切にしたい

 一緒に恋人として寄り添って行きたい」


 僕の言葉にウルウルと瞳に涙を溜めて

 一歩踏み出せないでいる藍里


「暁斗、嬉しいよ、私も好き…大好き…でも…

 だけど…私は……わたし……」


 藍里の負い目からくる否定の言葉をキスで閉ざす。

一瞬こわばった体を優しく抱きしめてそっと唇を離す。

藍里の瞳に溜まった雫が頬を伝って流れる。


「ずるいよ」


「うん、藍里と一緒に居るためなら何でもするよ」


「知ってる」


「なら、返事をもらえるかな?」


 お互いに目を逸らさずに見つめ合う。


 藍里が目に涙を浮かべて笑った。


「私なんかで良ければ、宜しくお願いします」


「私なんかじゃない、藍里じゃなきゃ駄目だ」


 藍里がギュッと抱きしめてくる。


「暁斗、アキト、あきとぉ

 大好き、もう遠慮しないからね、我慢しないからね」


「うん、喋り方も無理してない今のままが良いよ」


「うっ、暁斗の意地悪……でも好き」


 そう言って今度は藍里の方からキスをしてくれた。

啄むような軽いキス。でも心を凄く満たしてくれる。


 ふと、リビングの棚に飾られた父さんの写真と目が合う

その微笑みは僕達を祝福してくれているように思えた。


 大切で大好きだった幼馴染の彼女に裏切られたけど

親友として寄り添って僕の心を癒やしてくれて、

いま、恋人として共に歩んでくれる幼馴染が居てくれれば

どんな事があっても、幸せになれそうです…



「あきとぉ、愛してるよ……」 









 




 ………いや、もう幸せです!!


ここ迄読んでいただいた皆様

ありがとうございます。


少しでも暁斗と藍里を

祝福していただけましたら


下の☆で評価とブックマーク


宜しくお願いします。


新作始めました

宜しければこちらもお願いします


異世界恋愛物です

https://ncode.syosetu.com/n7510gr/1/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました よければこちらもお願いします                 異世界恋愛物
― 新着の感想 ―
[一言] 2人に至らん点有ったかも知れないが、堕ちていったのは千歳の自業自得だから、それも手が差し伸べれてたのに。 まあ千歳も母親の不倫に巻き込まれた側面もあるが、あの人格だと遠からず、他の誰かと浮気…
[良い点] >………いや、もう幸せです!! 一年間いらん自罰で悩む藍里を見て来たらそーなるかな。 [気になる点] あの7日はやはり藍里の顔を立てた以上の意味は無かったのだろうな。 嫌疑前提。最初から判…
[一言] 千歳、母親についていったんですね。まあ父親としても受け入れがたかったのでしょうが?二人が本当に反省してくれるのか。あの母親では不安がのこりそうですが。立派に更生してくれることを、切に望みます…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ