三文芝居(Side千歳)
いつも読んでいただき
ありがとうございます。
私はアッ君に別れを告げられた。
アッ君と話が出来ない、手も握れない
優しく私を見守ってくれてた目は
もう私を見ていないのが分かった。
藍里ちゃんに教えられて
改めて、私がしでかしたことの深刻さを理解した。
藍里ちゃんに言われたように
アッ君の方が大事だから、
カッコよくて楽しいくて、
色々な事を教えてくれた人だったけど
先輩にハッキリと友達としても別れを告げた。
藍里ちゃんにアッ君と友達でも良いから
戻りたいと相談したら、協力してくれると言ってくれ、
私の覚悟を来週一週間で見せて欲しいとお願いされた。
翌日、藍里ちゃんにアッ君と話をするから
部室を貸してほしいと頼まれてOKした。
その日からアッ君と藍里ちゃんの距離が縮んだ気がした。
なんだか胸がモヤモヤした。
藍里ちゃんから来週だけど
アッ君が会ってくれると連絡を受けた。
来週一週間が私の勝負だ。
(一日目)
アッ君にちゃんと謝罪は出来た。
でも、アッ君は許してくれなくて、
名前も呼ばないで欲しいと言われた。
それが一番ショックだった。
泣きそうになるのを堪える。
今までのアッ君だったら直ぐに飛んできて慰めてくれたのに
もう、アッ君は私を慰めてもくれない。
改めて後悔しても遅かった。
家に帰って一人で食べるご飯は寂しかった。
アッ君と一緒に御飯食べたいな。
(二日目)
私は早起きして、なれないお弁当作りをした。
ほとんど出来は悪かったけどウインナーだけは
少しだけ見れる物になった。
藍里ちゃんに頼んでお昼を一緒にさせてもらった。
私は頑張って作ったタコさんウインナーを
アッ君に勧めて何とか食べてもらえた。
藍里ちゃんも味見をしてくれて
美味しいよと言ってくれたのが嬉しかった。
食事が終わって折角アッ君と話す機会なのに
何を話していいか分からず、私は逃げるように
自分の教室に戻った。
帰り道、一人で帰るアッ君を見掛けて
思わず声を掛けたくなったけど
約束を思いだして我慢する。
家に帰るとお母さんからメッセージが届いていた。
久しぶりに一緒に食事をしようと言ってきたので
私は『分かった』と返信した。
約束の時間に合わせて駅前のレストランに向う。
お店に到着するとお母さんは先に待ってて、
席には比留間先輩が一緒に座っていた。
始めて会ったときも同じ状況だったので
余り驚かなかったけど、
振った相手が居るのは気まずいなと思った。
三人で食事を済ませた後、
二人は楽しそうにやり取りをして
「陽介君、夜も遅いから
千歳のこと送っていってあげてね」
「千秋先生、分かりました、任せてください」
「ふふ、送り狼になったら駄目だからね」
「心配無用ですよ、千秋先生なら分かるでしょう」
「そうね、陽介君なら大丈夫ね」
お母さんは先輩に私をお願いして仕事に戻っていく、
先輩と二人きりになると気まずさが増す。
藍里ちゃんに言われた事を思いだし、警戒して話かける。
「先輩、どういうつもりなんですかー?」
「別に他意はないよ、先生に食事に誘われて乗っただけ
夜飯代、浮いちゃった、ラッキー」
「はぁ、それなら、もう、私は帰りますねー」
「いやいや、夜だし流石に送っていくよ
烏丸さんに何かあったら先生に申し訳ないし」
「でも……」
「ああ、大丈夫、少し離れて歩くから
それなら勘違いされないだろう。
それに、俺も同じく反省して
烏丸さんを応援する事に決めたから
友達じゃなくてただの知り合いでも
応援するくらいは良いだろ」
「分かりました、しょうがないですねー
それじゃあ行きましょうかー」
同じ反省している身としては拒絶される
辛さは分かるから、私は先輩の提案を受け入れた。
離れているので、無言のまま家の前まで着くと
先輩が突然喋りだした。
「あー、これ俺の独り言なんだけど
顔を合わせづらい相手にはまず、
話かけるより手紙が良いんじゃないかな
こんな風に」
そう言って、便箋を私に渡すと
「おやすみ、烏丸さん」
別れの挨拶をして帰って行った。
もらった手紙には私のことが、
どれだけ好きだったかという事と
そのせいで迷惑を掛けてしまった事に対する謝罪だった。
私は同じようにアッ君に手紙を書いてみようと思った。
(三日目)
藍里ちゃんに頼んでアッ君に手紙を渡してもらった。
直ぐに反応が知りたかったけど我慢して
今日、一日は大人しくしていた。
放課後、我慢出来ず、藍里ちゃんにアッ君の様子を
尋ねてみたら、色々考えている様子だったと教えてくれた。
少しでも私の事を考えてくれてるのなら嬉しいな。
家に帰るとまたお母さんからメッセージが着ていて
珍しく早めに家に戻るから夜はデリバリーにするという
内容だった。
お母さんが家に帰って来ると、一緒に先輩も居た。
先輩の両親も多忙の方で、
たまに家に来て食事を一緒にする時があった。
流石に今のタイミングで止めて欲しいとは思ったけど、
お母さんさんには先輩のこと、
言っていないので仕方ないと諦めた。
三人でデリバリーで頼んだピザを食べて、
オンデマンドで映画鑑賞。
私は席を外すタイミングを逃して
一緒に見ることになってしまった。
帰り際、先輩が今までのお詫びと言って
可愛いピアスをプレゼントしてくれた。
私はピアスの穴を開けていない事と
プレゼントをもらった事を藍里ちゃんに知られたら
怒られそうなので断ったけど。
彼と仲直りしたときに見せてあげれば良いよと
言って無理矢理、私に渡すと、烏丸さんも何か
プレゼントしてみたらどうかなとアドバイスされた。
お母さんは車で、
先輩を家に送っていくと言って出ていった。
私はアドバイスの通りプレゼントはいい手かなと思い、
以前、手芸部に入った頃作りかけていた
縫いぐるみのキーホルダを引っ張り出して
三人分の縫いぐるみキーホルダを作り始めた。
(四日目)
ほぼ、徹夜でも縫いぐるみは完成しなかったので
お昼休みも使って部室で残りの作業をして、
放課後も部室に顔を出した。
途中、アッ君とすれ違った時に話し掛けたかったけど
我慢して会釈だけにした。
部室には、たまたま仲の良い先輩がいて
珍しがられたけど事情を簡単に話すと手伝ってくれた。
ブサ可愛い猫と犬と兎の縫いぐるみキーホルダが出来た。
犬はアッ君に、猫は藍里ちゃんに渡すつもりだ。
帰り道、同じく部活帰りの藍里ちゃんを見つけ
出来たばかりの縫いぐるみキーホルダを渡した。
藍里ちゃんは凄く喜んでくれて、
『暁斗も喜ぶはず、必ず渡すから』と言ってくれた。
お母さんからメッセージが着ていたので
また駅前のレストランに向う、お母さんの隣には
やっぱり先輩も一緒にいた。
いつものようにお母さんは食事を終えると仕事に戻り
先輩と二人になっちゃった。
「ごめん、やっぱり心配だったから
千秋先生にお願いして君を呼んでもらった」
「いえ、先輩の言うとおり手紙もプレゼントも
効果はあったようなのでー、そこは感謝してますよー」
「そんなことじゃ、罪滅ぼしにはならないよ
だから、俺は本当の悪役になるよ」
「それって、どういうことですかー?」
「明日、君達みんなでこの辺に
食事に来ることって出来る?」
「藍里ちゃんにお願いしたら出来ると思いますけどー」
「そしたら、そこで俺は君に絡むから
そこで、明確に拒絶してもらえば
君の彼も信用してくれるんじゃないかな?」
「どうしてなんですか?
先輩には何のメリットも無いですよねー」
「あるよ、好きな人が幸せになってくれるなら
俺は本望さ、あと映画のチケットもあげる。
これをタイミングよく切り出して
皆で一緒に行くと良いよ
そしたら仲直り出来るはずさ」
「……ありがとうございます。先輩
あんなに酷いこと言って振ったのに」
「気にしないでイイよ。あっ、でも、一つだけ
お願いを聞いてもらっても良いかな?」
「私に出来る事なら良いですよー」
「二人っきりのときだけは千歳って
名前で読んでも良いかな」
「……分かりました。それ位だったら、良いですよー」
「そっか、やった! 嬉しいよ、ありがとう千歳」
そう言うと喜んで私の手を握った。
帰りは前と同じように離れて私を見送ってくれた。
(五日目)
藍里ちゃんに頼んで、少し離れて付いていくから
朝一緒に登校出来ないかと相談した。
しばらくして藍里ちゃんにOK貰ったので
いつもの待ち合わせ場所で待った。
アッ君と藍里ちゃんが約束通り来てくれて
残念だけどアッ君は縫いぐるみ付けてなかったけど
藍里ちゃんは鞄に猫ちゃんを付けてくれていた。
放課後、藍里ちゃんに、
皆で食事に行けないかと相談した。
藍里ちゃんはアッ君に聞いてみると言いつつ
説得してくれてファミレスに行くことになった。
私はブロックを解除して行くお店を先輩に送った。
後は約束通り、先輩は私に絡んできて、
私は先輩を大声で追っ払った。
悪役になってくれた先輩に酷いことを言ってしまい
心が痛んだ。それと同時にアッ君はきっと分かってくれたとの
思いが混ざり合って自然と涙が零れる。
それを見た藍里ちゃんがそっと私を抱きしめてくれた。
久しぶりに三人で仲良く出来た気がした。
藍里ちゃんが事前に話しておいた映画の話を振ってくれて
明日、三人で見に行くことになった。
全部、先輩の計画通り上手く行った。
心の中で私は先輩にも感謝していた。
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